匙休め03 わが〈カレー巡り〉に一片の悔いなし:第02書店:書泉ブックタワー(D01)

 「書泉」は、戦後直後の〈一九四八〉年に創業し、〈一九五〇〉年に設立した、書籍を中心とした小売業を営んでいる会社である。


 二十世紀末、マニアックな本を探したい時には、神保町の書泉に行けば、何か面白そうな本に出会えるかもしれない、というのが、大学生時代の書き手の感覚であった。


 二〇二三年現在、営業している「書泉」の店舗は、神保町の「書泉グランデ」と秋葉原の「書泉ブックタワー」の二つである。

 神保町の「グランデ」の方こそが本店に相当し、こちらは、地下一階、地上七階のビルなので、いわば、古書街神保町のメルクマールの一つになっている。

 

 実は、神保町には、かつて、もう一軒の「書泉」があって、約十年前の二〇一五年に閉店してしまったのだが、その、今は無き店舗こそが「書泉ブックマート」であった。

 この神保町の二つの店舗の住み分けは、メインカルチャーが「グランデ」、一方、ポップカルチャー・サブカルチャーが「ブックマート」という印象であり、「ブックマート」の方では、マンガ・アニメやアイドル関係の品が扱われていたので、どちらかというと、「ブックマート」の方にこそ、書き手はよく通っていた記憶がある。


 ちなみに、二〇一一年に、「書泉」はアニメイトに買収され、その結果、二〇二三年現在、アニメイトの子会社になってしまっている。それゆえに、今現在、購入の際にアニメイトカードが使えたり、そのポイントの利用も可能になっている次第なのだ。


 さて、秋葉原の昭和通り側に位置している「ブックタワー」の方は、一九九四年に開店し、その秋葉原という土地柄、コンピューター関係やアニメ・ゲーム関連の書籍に強みがあるように思われる。秋葉原の「ブックタワー」も九階建てという背の高い建物であるため、ここもまた、秋葉原の昭和通り側のメルクマールの一つになっている。


 そして、この日の午後に書き手が足を運んだのは、現在、千代田区に残る二つの「書泉」のうち、秋葉原の「書泉ブックタワー」の方である。

 その「ブックタワー」一階の「話題書・旅行書・地図・児童書・サブカル・占い」のフロワでは、レジのすぐ前に、レトルトカレーを扱っている一画がある。

 「書泉」のサイトによると、カード配布は、「店内のレトルトカレー商品(種類は問いません)をお買い上のお客様、1会計につき1枚をランダムで配布いたします(先着・なくなり次第終了)」というのが条件であった。つまり、何らかのレトルトカレーを購入すれば、「スタンプラリー23」の押印が許されるだけではなく、「書泉」限定の『北斗の拳』のレアカードがもらえる次第なのだ。


 そして、「書泉」で準備されているレアカードとは、雲の「ジュウザ」と、覇王「ラオウ」の二種である。


 これは、例えば、「グランデ」が「ジュウザ」、ブックタワーが「ラオウ」といったような店舗固有ではなく、二種類とはいえどもランダムなのである。

 そして、理論上、ランダム二種類をコンプするための期待値は〈三回〉なのだ。


 書き手は、水曜日に神保町の「グランデ」にて「ジュウザ」を引いていたので、金曜日の夜に「ブックタワー」に赴いたのだが、ここで再び「ジュウザ」が出てしまった。

 なんでもよいのでレトルトカレーを一つ購入し、一会計に一枚のカード配布というレギュレーションなのだが、金曜の夜の来店は閉店間際だったので、書き手は、土曜日の午後に再チャレンジし、別のレトルトカレーを購入する事にしたのである。


 実は、このレトルトカレー、各店舗ごとに数種類が用意されているのだが、さらにいうと、「グランデ」と「ブックタワー」で置かれているラインナップが異なるのだ。

 例えば、「ブックタワー」の方には、元巨人の松井秀喜選手のシリーズや、「銚子電気鉄道」が出しているカレーが数種置かれている。


 金曜日に「松井家秘伝のカレー」を購入し、「ジュウザ」をダブらせた書き手は、土曜日には、〈銚電〉シリーズの中から「銚電チキンカレー」を選んだ。

 このチキンカレーのパッケージに、「資金枯れ~」という文言が書かれていて、これに面白みを覚えたのが「チキンカレー」選択の理由である。


 そして、この「資金枯れ~」、もとい、「チキンカレー」をレジに置いて、『北斗の拳』カードを所望したところ、店員から、裏返しでカードを手渡された。


 店を出た後に、カードの表の図柄を確認した直後、書き手は、天に向かって右拳を突き上げた。


 「わが〈カレー巡り〉に一片の悔いなし」


 引き当てたのは「ラオウ」のカードだったのである。


〈訪問データ〉

 書泉ブックタワー:昭和通りエリア

 D01(書店)

 八月四日・金・十九時五十分;五日・土・十五時

 松井家秘伝のカレー:五〇七円(クレカ);銚電チキンカレー:五四〇円(クレカ)

『北斗の拳』カード:No.03「ジュウザ」;No.02「ラオウ」


〈参考資料〉 

〈WEB〉

 「書泉ブックタワー」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2023』、七十五ページ。

 「グランデ(神保町)」「ブックタワー(秋葉原)」「『神田カレーグランプリ2023』×『北斗の拳』」、『株式会社書泉』、二〇二三年八月十三日閲覧。

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