名なしの島②
「あったぞ、おい!」ふり向いた春雄のしたり顔がうざい。「大発見だな、おい!」
おいおい、うるさい。彩はため息が出る。「なんだか……ホールケーキみたいですね」
島の形状は遠くからだと、本当にそんなふうに見えた。緑と茶色と黄色じみた白で色づけされたホールケーキに。あちこちを少しずつ切り取られ、ちょっとだけつぶれたホールケーキだと思いつつ、「あの
白にうっすらと
「いや、あそこじゃないんだよね。ネットによるとさ、なんか、あの砂浜を右に回ったあたりに、別の海岸がお
春雄がコクピットの
「無人島なのに……桟橋?」
「昔は島の近くで
しばらくすると、その島がもう目の前だ。
ごつごつと険しく切り立った
「やっべぇ、感動するわ。観光地にできそうだよな。なんでそうしてないんだろ?」
眉を寄せながら春雄が
「……ほんとに」と
春雄のヨットよりも長い桟橋は、いかにも古そうだ。砂浜から海に突き出た橋の大半が木製で、
ネットの情報が仮に真実だとしよう。昔はこの近くで漁船が操業していた。桟橋まである。それなのに、地図にすら載っていないのはなぜ? 疑問に首をかしげつつ彩が
「海は綺麗だし、意外と悪くねえだろ、無人島もさ。来てよかったじゃん。な?」
十六時十四分。
腕時計から目を離した彩は、反対の手をかざして空を
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