第5話 コンビニ
手探りでなんとか家の外まで出てきた。
電柱3本向こうまで行ければコンビニはすぐそこだ。
うまい具合に人には会わずにコンビニまで辿り着いた。
視界が少し明るくなる。
その方向へ誘われるように向かう。
コンビニの入口の独特の音が聞こえ、さらに私を助けてくれる希望の彼女の声も聞こえる。
私の足取りは自然と速くなる。
それが悪かった。
店内入口のマットに足を取られてバランスを崩した。
前のめりになり咄嗟に手を前に出し、転倒に備えたのだがレジカウンターの延長に置かれたコーヒーメーカーを押し倒してしまったのだろう。
『ガシャーン、ガラ、ガラガラ』
物凄い音ともに壊れるような音が聞こえてきた。
転倒は免れたが、まだバランスは崩したまま。
精一杯踏ん張ったのだが、今度は後ろへ転びそうになる。
そのまま、商品棚にぶつかり棚が崩れて商品が床に落ちる音ともに男性の怒号が飛んできた。
私は忘れていたこのコンビニの店長はかなり怖そうな人だった事を。
急に恐ろしくなった私は四つん這いで店を出て行こうとしたが、店長がそんな私を逃すはずもなかった。
私に対して大量の防犯ボールを投げつけてくる。
この店の防犯ボールはカラーボールではなく、トリモチ入りの水風船。
一度、レジをしてもらっている時カラーボールでないのを不思議に思い聞いた事があった。
トリモチ入りの水風船は店長の経費削減の案らしい。
トリモチ入りの水風船を大量にぶつける事で逃げる犯人の足止めになるという話を少し前に聞いたことを思い出した。
私は大量のトリモチ入りの水風船を食らって、身動きが取れなくなる。
あの女子店員と店長がトリモチで身動きの取れない私を見下ろしていう。
「なんなんでしょうコイツ?」
彼女の冷ややかな言葉が背中に突き刺さる。
「取り敢えず、警察に突き出すぞ」
店長がそんな言葉を私に吐き捨てるように言って程なくすると遠くからサイレンの音が近づいてきた。
警察がやって来ると野次馬も増えたのか、周りが騒々しくなる。
私はトリモチに絡まり地面に這いつくばり、もがくことしかできなかったが、警察が到着した頃にはもがくこともやめてしまっていた。
まさか不倫がキッカケで警察の厄介になるなんて、涙が滲んできた。
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