第7話 新しい繋がり

「ぐぁぁぁぁぁ!」


 ある冒険者パーティーが平原で巨大な魔物と戦っていた。

 冒険者たちは全員満身創痍で全滅するのは目に見えている。


「くっそ、剣が折れちまったぁ!」

「私も魔力が、くっ、足もけがで歩けない...」

「もういやぁぁぁ!だれかぁぁぁぁ!」


 冒険者にとって魔物に殺されるというのはそれほど珍しいことではない。冒険者資格を取得するのが簡単で街を歩けば冒険者を見かけるため忘れられがちだが、この仕事は死と隣り合わせの危険な仕事だ。

 死を目前に感じた者が発狂してしまうことも珍しくない。

 一行が半狂乱になりかけていた時、魔物の首がゴロンと転がる。

 何が起きたか分からない一行の前に黒い服を着た長身の男が降り立った。


「どうやら間に合ったようだな」

「あ、あなたは!高身長容姿端麗天下無双天上天下唯我独尊Aランク冒険者のソル・アズミヤさん!」

「如何にも、私がソル・アズミヤだ」


 男がサングラスを取ると満身創痍だった冒険者たちから黄色い歓声が上がる。


「君たちが無事で何よりだ。今後も人々のために励んでくれ」

「ありがとうございます!」


 周りの冒険者たちが彼を囲んで名前を称え始めた。

 なんて心地いい声援なのだろうか。これだ。これが欲しかったものだ。

 彼は指を天に向け大声で笑う。自分こそが高身長容姿端麗天下無双天上天下唯我独尊Aランク冒険者のソル・アズミヤなのだ。

 突然後頭部にゴスっという鈍い衝撃が走った。


「わえ?」


 気が付くとそこは薄暗い天井が広がり周りを見渡すといつも泊っている宿だった。


「夢か」


 当たり前である。



◆◆◆



「はぁ~何してるんだろうな...僕」


 ため息をつきながらいつもの服ではなく上下の黒ジャージを着て歩いていた。

 ロランゼールに来て数週間、あれから特に誰かと話すこともなく一人で過ごすことになっていた。

 心機一転どこかのギルドに所属する勇気もなく、かといって初心者歓迎ギルドもすでにBランクになっている彼には逆に敷居が高い。メンバーを募集しているパーティーにも声をかけられない。

 彼はもうすでに心が折れてここ数日は部屋に引きこもっていたのだ。

 そもそもこの街に来たのもミナミを送り届けるだけで冒険者として活動することなど特に考えてはいなかったのだ。

 もうこの街を出て辺境に行って余生でも過ごしてしまおうかなどと考えていた。

 まさに低身長コミ障陰キャぼっち天上天下唯一孤独Bランク冒険者の何相応しい思考だった。


「魔道電話も落としたから新しいの契約したし...そしたらミスラの連絡先も消えたし...」


 メッセージアプリ迫真の友達0人。何がいけなかったのだろか。


「きっと新しいパーティーでうまくやってるんだろうなぁ、それでいつか誰かと結婚して子どもが出来て...うーん」


 なぜかミスラが母親になっている姿が微塵も想像できなかった。


「でも幸せならいいか...」


 自分と違って彼女には幸せになってほしい。それはソルが心から思うことだった。

 だがそれは突然襲ってきた衝撃に消し飛ばされる、どうやら側にあった店から男二人が叩き出されたようだ。


「てめぇふざけんなよ!」

「ただで済むと思うな!」

「はぁ...めんどくさいなぁ」


 店から出てきたのは背丈はソルとそう変わらない紫色の髪を肩まで伸ばした女性だった。鋭い目も相まって上から睨む彼女の迫力は相当なものだ。


「何回も言うけど武器の横流しはしない。お前らみたいなチンピラと関わるだけ時間の無駄だ」

「チンピラだと!俺たちはなぁ!」

「地域で活動してる違法ギルドだろ。チンピラの集まりだろうが」


 ギルドとは冒険者たちが集まってできる集団のことで全国で大小1万を超える。

 いろいろな活動方針があり商売に重きを置いている商売ギルド、治安維持を憲兵から任されている警備ギルド、基本的に何でも請け負う汎用ギルドといくつもの業務形態があるがその中でも冒険者協会を追放された元冒険者たちが集まって犯罪を生業とする違法ギルドが社会問題となっている。


「次来たらすり潰すからな、失せろ」


 そう女性が凄むと男たち二人はドタバタと逃げ去っていった。ため息をついて女性が店の中に戻ろうとすると何やらウゴウゴと這いつくばっている黒い物体があった。

 先程の男たちの下敷きになった挙句に踏みつけられて足型が着いた哀れなソル・アズミヤである。

女性が困惑しているとソルは這いずったままカサカサと移動し何故かゴミ箱の中に入っていった。


「何やってんの!?」

「すみませんこんなヘドロぼっちアメーバスライムがお店の前を通って汚してしまって…このまま可燃ごみに出してください。よろしくお願いします」

「なんの話!?っていうかそうしたら殺ったのあたしみたいじゃん!とりあえず出てってほら!出ろっ!」


 ソルは引きずり出されそのまま店の中へと連行されて行った。

 女性は店のショーケースからエナドリを取り出してソルの前に置き、自分も飲み始めた。


「あの、良いんですか?売り物なのに」

「巻き込んだみたいだからな。奢ってやる」


 エナドリを口に含むとシュワシュワと強い炭酸が喉を通り、暑い中歩いてきた後に冷たい炭酸は体に染み渡ってくる。

それはそれとして女性が怖いためさっさと帰りたいのが本音だった。


「お前冒険者か?」

「ヴぇ!?いやっ?ち、違いますよ?」

「じゃあなんで剣持ち歩いてんだよ」


ソルの腰にはいつもの剣が携えてあった。


「いやぁ、あの、ほ、ほとんど普通の人と変わらないみたいな」

「冒険者カード」

「はい?」

「冒険者カード見せろって」

「見ても面白いものじゃ…」

「出せ」


ソルは女性の威圧に耐えられずにカードを提出した。


「Bランクじゃないか、なにが普通の人だよ」

「ぐふっ…」


早く帰りたいために誤魔化そうとしたことが逆に裏目に出てしまった。最初から素直に話しておけばこんなに詰められることもなだろうに。


「私はミシェル。この店の店長してるんだ」

「ここは武具店ですか?」

「ああ、販売に修理に制作何でもやってるよ。Bランク以上限定だけどな」


 武具店にはたまにランク制限を設けている店がある。

 そういう店は珍しい武具の販売と制作を行っておりもちろん性能も折り紙付きなのだがそれ相応の実力が必要になってくるためランクを設けているのだ。


「巻き込んだ詫びにお前の剣見てやるよ」

「ヴぁぇ!?いえいえ全然大丈夫です!こんなのその辺で買った安物ですし~?」

「どうせまたしょうもない嘘ついてるんだろ、いいから見せろって」


 抵抗するソルから無理やり剣を奪い取り鞘から剣を取り出した。

 黒く分厚い片刃の刀身を見た時、ただでさえ鋭い目がさらに鋭くなり剣をよく眺め始めた。


「お前これ...黒鋼じゃないか!何が安物だお前は私をバカにしてんのかぁ!?」

「ちちちちちがいますほんとにちがいますからぁぁぁぁぁぁ」


 自分がバカにされたと感じたのかミシェルはソルの胸ぐらを掴んでガクンガクンと揺らした。


「黒鋼っていうのは超希少金属で本来ナイフ作るのでさえ難しいのにこんな剣どこで作ったんだよ!おい!おい!」

「いやあああああのえっと、実家ですかね...」

「お前の実家何なんだよ!」


 黒鋼とは一般には流通していない貴重な金属だ。

 一点の曇りすらない透き通る様な黒色をしている金属だが希少なうえに加工がかなり難しいとされている。


「しかもこの金属はすべての生き物に死を与えるって言われてるんだ。それくらい凄いものなんだぞこの剣は」

「あっ、そうなんですね...」

「しかも刀身にわざと空間を作ってる...大きさは人間の首と同じくらいか?」


 ミシェルはソルの剣を握ってぶつぶつとひたすら何かを呟いている。


「あ、あの~そろそろ返してもらえませんか...」

「うん?ああ、悪いな」


 ミシェルから剣を受け取るとソルはいそいそと帰り支度を始める。


「なあ、今度その剣整備させてくれよ。手入れはしてるけど本格的な整備は長いことしてないんだろ?」

「あはは…また今度」

「ああ、もちろんなんか買いに来てくれてもいいからな」


 ソルは引きつった笑顔を浮かべながらミシェルの店を出ていった。何だかどっと疲れた彼はとぼとぼと歩き始める。

 人と話すだけでも相当疲れるのにあれほど気の強い女性と話すのは余計に彼の体力を削ることになった。


「そういえばもう家を出て4年か…リノは元気かな」


 ソルには5歳下の妹が居た。本当は家を出るときに連れて行きたかったのだが自分の都合で家族と引き離すことが出来なかった。

 自分とは違い妹には本当の母親がいるのだから。


「考えてみれば僕は逃げてばかりだ…」


 色んなことから逃げ出してとうとう本当にひとりぼっちになってしまった。人と話すのは怖い、関わるのは怖い。ずっと一人で過ごしていれば相手を怒らせる必要もないし嘘をつく必要も無い。自分が傷つけられることも相手を傷つけることも無い。

 でも人と関わることを諦めることができなかった。

 だからこんな所で惨めに冒険者という肩書きにぶらさがっている。

 ソルはそんなことを頭の中でぐるぐると考える。

 さっきのミシェルという店長もそうだ。彼女は向き合おうとしてくれたのに自分はきちんと向き合わずにさっさと逃げてきてしまった。


「…これじゃダメだ」


 このままではいけない。変わらなければ自分は一生独りのままだ。


「整備、頼んでみよう」


 話しかけることが出来ない自分にやってきた出会い。例え見た目や性格が怖くてもそれだけで人を判断するのは良くない。相手が向き合ってくれたのだから、自分も向き合わなければ繋がりは生まれない。


「店長さんまだ居るかな?」


 整備を頼みに店に向かった時にソルが見たものは、ミシェルが数人の男に車に押し込まれどこかに連れ去られる姿だった。



◆◆◆


 街のはずれにある廃墟に車が一台止まっていた。

 薄暗い中ではジャラジャラと鎖の音と共に何かを殴る鈍い音と誰かが呻く声が聞こえる。

 中には10人ほどの男たちと天井から鎖で繋がれているミシェルが居た。ミシェルは既に何度も殴られたのか体がアザやケガだらけになっていて見るだけで痛々しい。


「お姉さんさぁ、いい加減意地張ってないで素直になろうよ?」

「だまれ...何回も言ってるだろ...お前らに横流しはしない...ぐっはっ!」


 ミシェルが男たちの問いに拒否をするたびに彼女の体に拳がめり込む。

 するとリーダー風の男がミシェルの髪を掴んで無理やり自分を見るように顔を向けさせた。


「邪険にすんなよ悪い話じゃねぇ。あんたは俺たちに武器を流す。俺たちはあんたに金を払う。普通に冒険者に武器下すよりも儲かるだろ。その様子じゃ愛想もないからそれほど売れてねぇんだろ?」

「おあいにく様、そこそこ常連が居るんでね。食うには困ってないんだよ。そもそもお前らみたいなチンピラが、うちの武器を使いこなせるはずない。冒険者が弓と銃使い分けてる理由説明できるのかボンクラが」


 彼女が挑発したと同時にリーダーの男の鉄拳が彼女の頬を殴打する。そのままもう一方の頬や腹部を殴る蹴るといった原始的な暴力で彼女を屈服させようとするが、彼女の表情は変わらない。


「はぁ、はぁ、そんなに反抗的だとそそられるなぁ?武器だけじゃなくて体も使って商売するか?ああ?」

「はっ、お前らみたいなやつらのモノで満足できるか。せめて増強剤でも飲んでから出直してこい」

「気が強すぎる女ってのも可愛げねぇな...」

「ボスっ、そういえばこいつ妹が居るらしいですよ」


 妹という言葉を聞いて先ほどまで余裕だったミシェルの顔が一瞬無表情になった。


「ほう?妹居んのかお前」

「...あんな奴妹じゃない。もう長い間会ってもいないし、どうせこの街にはいない」

「そんなの探してみねぇと分かんねぇだろ、お前がダメなら妹に聞いてみるか」


 周りの男たちがニヤニヤと気分の悪い顔をしながら笑い始める。

 ミシェルはさっきまで余裕だった心が急にざわつき始めるのを感じた。


「あいつに期待しても無駄だ。もう何年も前に喧嘩別れして声すら聞いてない」

「なんだ、ずいぶんと焦ってんな?妹ちゃんがそんなに大事か?」

「黙れ!あいつは関係ない!あいつはどうでもいいだろ!これはお前らと私の問題だ!」

「おお怖い怖い。妹ちゃんが心配なんでちゅね~」

「貴様はぁぁぁ!」


 気が付くとミシェルは鎖を外そうと暴れていた。

 しかし彼女がいくら足掻こうと硬い鎖が彼女の両手足から外れることはなく、それを見た男たちは彼女を無様だと笑い飛ばしミシェルをまた殴った。

 彼女はいつの間にか唇を血が出るほど噛みしめていた。

 自分に対しての痛みや辱めなんていくらでも耐えられると思っていた。

 妹のことも忘れたと思っていたのに。

 もし妹が自分と同じような目に合うと思ったら腸が煮えくり返りそうなのに、頭が沸騰しそうなのに、自分は何もできずにこうやって嬲られるだけ。

 情けない、自分は武具屋としても姉としても情けない。どうしようもない人間だ。


「ちくしょう...」


 どうして世の中はこんなに理不尽なんだろうか。普通に生きてきただけなのに、母と父は死んで妹とは喧嘩別れ。それでも細々と生きてきたのに、こんな奴らにこうやって理不尽な目に遭わされている。


「あーあ、ボス泣かせちゃいましたよ」

「おい泣くなよ。俺が泣かせたみたいだろ?」


 世の中に女神が存在するが彼女たちはこんな小さな事件では動いてくれないのだろう。

 女神といえど全人類を救うなんて無理なのだ。なら、女神の庇護から零れ落ちた自分たちのような人間はこうやって朽ちていくしかないのか。

 そうやってミシェルが頭の中でぐるぐると考えていると彼女の目からは涙が流れた。

 それが殴られた痛みによるものなのか、この世の理不尽によるものなのかは分からない。


(この世界に女神はいても、みんなを助けてくれるヒーローなんて、いない)


 ミシェルの目から光が失われそうになった時、ガラスが割れたと同時にギルドの男たち数人がばたりと倒れる。彼らの足にはナイフが突き刺さって痛みに悶えていた。


「なんだ襲撃か!」

「どこのギルドだ!?お前ら守りを固めろ!」

「ハーッハッハッハ!!!」


 どこからか高笑いが聞こえてくる。

ミシェルが上を見上げるとそこには全身黒い服を着て黒い仮面をつけた謎の人物が変なポーズでそこにいた。


「なんだテメェ!」

「無抵抗の女性を一方的に傷つける鬼畜の所業...とても許せるものではない!貴様らの腐った性根、この私が叩き直してくれよう!」

(なんだこいつ...)


 仮面の男を見上げるミシェルは奇怪な姿を見て唖然としているとその男は次々と違法ギルドの人間たちを無力化していく。一回一回挟まるクソださポーズはいったい何なのかはわからないが。


「なんなんだよこいつ!」

「この私を貴様ら外道が捕らえられると思うな...貴様らに明日はない」

「ほざけっ!」

「銃だ逃げろ!」


 ミシェルが仮面の男に叫んだ瞬間、まるで背中に目が付いているかのように銃弾に反応して飛び上がりそれを回避する。


(こいつ、格好と言動はふざけてるくせに...強い!)

「この程度なんてことはない、愚か者たちよ。お前たちの罪を数えろ」

(でもやっぱダサい...あれ、この声どこかで)


 仮面の男が暴れまわり気が付くとそこにはリーダーの男一人しかいなかった。


「貴様が諸悪の根源だな、さぁ貴様の人生を懺悔しろ」

「なんだよ、なんなんだよお前!全部ふざけやがって!」

「貴様ら外道に話す舌などもたん!」


 放たれた銃弾を慣れた動作で仮面の男は除けまるで弾丸のようにリーダーの男へと潜り込み、銃を構えた腕を黒い剣で切り落とした。


「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」

「貴様に腕があっても人を傷つけるだけだ。そんな腕、必要ないだろう」


 リーダーの男は右腕を斬り落とされてその場でのたうち回っていた。

 仮面の男はミシェルの鎖を切り裂くと彼女の抱えてその場を後にした。

 その後憲兵たちがなだれ込み違法ギルドの人間たちは全て検挙されていった。


「お嬢さん、けがはどうだ」

「大丈夫だよ。ていうかお前ほんとに何なんだ?」

「ふっ、名乗るほどのものではないさ...あっ、ちょっと、仮面は取るのはやめてください...」


 ミシェルが仮面を取り上げるとそこには夕方に会ったゴミ箱に入っていたBランク冒険者ソル・アズミヤだった。どこかで聞いた声だと思っていたが、まさか本当にこいつだったとは。

 ミシェルは改めて驚くことになった。


「でもなんでお前が...」

「いや、あの...剣、整備してくれるって言ってたので」


 ソルはおずおずと自分が持っている剣を彼女に差し出した。


「まさか、それだけの理由であんな危ないことを?」

「それにあの、せっかく出来た、繋がり...なので」

「繋がり...ただ少し話しただけなのに、変な奴だな」


 はははとミシェルは笑う。傷だらけの体も気にならないくらいに。


「あっ、あの治癒院に行かないと」

「いてて、こんなの消毒してちゃんと飯食ってれば治るよ」


 顔も体もあざと傷でひどいことになっているがそれでもソルの力を借りずに自分の力で歩こうとするのは彼女のプライドの高さゆえかもしれない。


「もう朝か...朝飯食ってちょっと寝たら開店準備しないとな」

「えっ、今日くらい休んだ方が」

「ちょっと小突かれたくらいで休めるか」

「でも泣いてましたし...」


ソルが心配そうにそう言った瞬間ミシェルは彼の頭をめりめりと音がするくらいの力で掴み上げる。


「ほかの人間に言いふらしたらお前をどこまでも追いかけて殺す」

「いいいいいいいいい言いません!絶対言いません!」

「本当だな?」

「はい、絶対です約束します女神さまにも誓います!」

「よし...じゃあ朝飯食って帰るぞ。奢ってやる」


 そう言ってソルはミシェルに肩を掴まれて半ば強引に連れていかれる。


「お前朝飯は目玉焼き派?スクランブルエッグ派?」

「あっ、どっちも好きですけど目玉焼きの方が好きかもです」

「おっ、いいじゃん。黄身を潰してベーコンとパンケーキと一緒に食うのがうまいんだよなぁ」


 二人は海辺からの朝日に照らされて街の中へと消えていった。

 この街で、彼はようやく一つのつながりを手に入れたのかもしれない。

 たった一人、されど彼にとってはとても大切な一人に変わりはない。

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