第14話

 先程通された教会の裏出の小さな厨房で、二人はテオノーラの淡々とした告白を聞いた。すっかり夜になり、心もとないランタンの明かりだけが部屋を照らしている。

「以上が、ヴェーレ領で起きていたことです。……すみません、本当は一目見た時から気づいていました。シャウラ殿下のお姿は、昔に遠目ですが見たことがあったんです」

「……そうか」

「罰は、どうか私に。……子供たちは、私が巻き込んでしまいました」

「ふむ、ではなぜ俺たちは閉じ込められ、刃物を向けられるような羽目になったのだったかな」

 再びテオノーラが深く頭を下げる背後、ちら、とシャウラは扉を見やる。子供たちが遠巻きにテオノーラを見守っていることはわかっていた。

 シャウラの視線に耐えかねたか、たまらず、子供のうちの一人が前に飛び出した。

「ぼ、僕たちが勝手にやったんだ!!」

「あ、こら……!」

テオの静止を振り切って、子供たちは口々にシャウラの前におどりでて喋り出す。

「ちゃ、チャロの言うとおり、だよ。勝手にやったの、テオは悪くなくて……!」

「それに、僕たちの血はちょっとにしかならなくて」

「もっと血が集まれば、テオが楽になると思って……そうしたら、シアンが奥の部屋に閉じ込めればいいんじゃないかって……」

「なるほどな。閉じ込めて弱らせたあとに血を貰うつもりだったと。……こうして旅人の血液を狙ったのは初めてか?」

「う、うん」

「この辺りはみんな顔見知りで旅人なんて来ないし……時々くる礼拝の人には、占者様は、体調を壊して故郷に戻ったってことにしてるんだ」

「では、こうした前科は一度きり……あとは我々に向いた未遂ぶんか。それだけなのだな」

 テオノーラも子供たちも、これにはしっかりと頷いた。シャウラはふむ、と腕を組む。

「伯爵領の改ざん前の帳簿が欲しいな。それから神殿が血液の取引を持ちかけたという証拠の文書はないだろうか……、テオノーラ、何か知らないか」

「……元の帳簿は私の部屋に。……借金の証書は、あるとすれば父の書斎かと」

 テオノーラの言葉に続けるように、アレスが進言する。

「善は急げです、まだ王都にいるヴェーレ伯爵が帰ってくる前に突入しましょう。エドとカストルには通信で道中報告します」

「そうだな、頼む」

 二人のやりとりに、テオノーラはおずおずと手を挙げる。

「あ、あの……私への、罰は」

「ああ。悪いがそんなことをしている暇はない」

 シャウラはばっさりと切り捨てた。目を丸くするテオノーラに、シャウラはふんぞり返って続ける。

「余は多忙であるぞ。そも、此度の問題は伯爵領の借金と、星の神殿の腐敗……理由はわからぬが、神殿が血液を集めている?らしいのが原因なのであろう。まずはそれを正さねばならぬ。……おい、聞いているのかテオ!」

 シャウラは顔を赤くして叫んだ。シャウラの、突然の『王族らしい』演技がツボに入ったらしいテオノーラが、たまらず吹き出して笑い出したからだ。

「ふふ、ああ、……なるほど、殿下はそのような方だったのですね」

「おい、そのような、とはなんだ。不名誉なことを考えてはいないだろうな」

「では、私も行きます」

 テオノーラはしゃんと背筋を伸ばし、まっすぐにシャウラを見据えた。

「寛大で聡明な殿下にあれど、屋敷の中のことまでは存じ上げませんでしょう?ご案内はお任せ下さい」

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