第68話 今出来ることをやり抜く






 眼前の視界の全てを埋め尽くし、尚はみ出す程の巨塊にたじろぐルナ。



[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093078013451461




 こんな……いくら耐熱が出来たって……

 あんなに巨大なの絶対ムリだ……



 ―――自分の数百億体分を前にそう感じぬ者等いない。




[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093078013456283



 幼少期から虐待を受けていたルナの目は死にかかり、スーパーラヴァへと吸い込まれてゆく。





 察したファスターは想いを伝意した。


《……ルナ……心配しないで。大丈夫》




 ハッ!……




 ルナの記憶の彼方に焼き付いているその言葉に反射的に浮かぶ懐かしい光景と感触。


 温かい掌が優しく頭に載せられた気がした。


 そして続けるファスター。



《世界が、世の中が不条理だなんて言ってる場合じゃない。

 ――――キミしかいないっ!



 他の仲間の魔力と比べる事なんてないんだ。


    人より劣っててもいい。


 出来る事なんて人それぞれだ。


    神から授かったものしか無い。



 それでも……



 

    こと……

      ……それが人生なんじゃないのか?》




『ルナ…………

    ボクは今出来ることをやり抜いたよ……』




[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093078013460371




 自らを盾にルナを守りぬき、虐待まみれのルナの人生を命を賭して変えたありし日の兄の言葉。

 包帯だらけの兄を掴んで泣きじゃくったルナ。



『……この恩を返す迄……もう何からも逃げたりしないっ!!』



 そう心に誓った忘れもしない光景が脳裡に浮かぶ。

 最も大切な思い出のひとつ。






 お兄……ちゃん……………………





 心に火が灯り始める。




 ……ボクは弱い自分を女であるせいにしてた。そしてお兄ちゃんみたいに優しくて強い男の人になれたら人生納得できると思った。


 でもそうじゃない。本当になるべきは、あの人の様に……

『最後迄やり抜ける人』だったんだ!

 それこそが求めてた自分には無い漢の強さ。




 だったらお兄ちゃん、


 どうか! 今だけでもその強さを!


 力を……


 ――――貸してください!!






[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093078013464981





「やりますっっっ! !!」



 と吼えて、大怪物を前にして仁王立ちで構えて睨みつける。


 意を決して想いが溢れると、敵勢あいての望む逆、心身が『おとこのジェンダー』と成ってパワ―のギアが桁違いに飛躍する。


 全霊を身にまとうと眠れる精神力サイすらも開眼、完全に目の色が変わり、全身オーラ発光と共にまさに総毛立つ。



 そして荒ぶる鬼神と化してリミッターが吹っ飛ぶ。





「うおおおおおおおおおおおおおお――――っ、

 うなれっ!  死の鉤爪リーサル・クロウ!」


  〈裂閃ティア―――――――ッ 〉




[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093078013470468



 天才魔道具師により創られしロッドの柄部から放たれる光のムチ。


 光速のエマさえも切り裂いたそれに加え、端部から繰り出す『死の鉤爪』の超振動を与えての神速のムチの前には巨大な敵も物ともせず触れた瞬間に木っ端みじんへと化す。


 焼けつく炎の溶岩の触手・プロミネンスの熱では倒せないと巨大な大怪物が悟ると、より多くの触手を溶岩ワ―ムへと実体化して喰らい殺そうと巨体から湧出。


 迎え撃つルナは次々とバラバラに散らしてゆく。




 ―――時間との戦いが始まる。





 ……でかさを見るな! ジャミングが効くって事はつまり拝領系。魔の根源じゃないならコイツは小者の寄せ集めに過ぎない。


 そう、百人組手と思えばいい!

 全部蹴散らすっ!


 その一振りの超振動だけで数百体分もの火の魔物を飛び散らせ、間断なくそれを繰り返す。


 まさに取り憑かれたかの様な一心不乱さで猛り狂うその剛腕は、速すぎて視認する事さえ出来ず、その姿はあたかも嘗ての勇者のそれとカブる。




――― 一振りで千の魔獣を打ち倒した、

         かの伝説の勇姿。―――




 地の底から響いてくる様なひずんだ不協和音の叫喚が周囲に響き渡り、反撃の触手・プロミネンスが無数に現れ一斉に襲い掛かる。


 だがルナの超倍速と魔力加速の鞭の猛威の前には自ら削り取られにいく様なものだ。

 しかしやらなければ殺られる。互いに生き残りを賭けて襲い合う。


 逃げ回られるよりも好都合、とばかり揺るぎなく構えて巨躯の魔威を粉砕し続けるルナ。

 空気摩擦で燃え光る万倍速の両腕付近は眩い光芒を放つ程に加速する。



 胸を打たれた仲間達は早速協力開始。


 飛び散る破片をルカのサイで空高く浮かべる、

 ノエルの巨大化ファイヤーバードの背に乗せ運ぶ。

 BROSの打ち上げ弾、

 炎の上昇気流、

 土の弾丸で弾き飛ばし、

 水魔法ウォータージェットで吹き飛ばし、

 最後は風の大竜巻で上空へ連携して運ぶ。




 ―――ファスターの目論見もくろみ通りに進む作業。



 ルナの弾き飛ばす解体群は、更に上へと運ぶ仲間達の方へと続々飛んでくる。下が見えない程に莫大な量の塊や破片に大あらわの仲間達。


 再落下しない高さまで運ぶため、四天星は中・高高度へと離れてリレー。


 しばらくばらけた溶岩塊を猛然とリレー。

 ふと気付いたレイのテレパスが脳内へ響く。



《マズイ! 下へ散った無数の飛沫、集まればバカにならん! 誰か何とか出来るか?》



《のえるがやる!》


 とルカの懐からホースだけが伸びて、無数の魔法のバブルを射出し、取り込んで再浮上。


 どんな僅かな飛沫さえも逃さない。それを見てBROSレイが激励。



「皆頑張れ、上空まで飛ばしてくれればこんなヤツ、一気に宇宙まで吹き飛ばしてやる!」




  * * *





《これ以上バラさせん!》


 なんと本来なら殺処分されるはずのジャナス族の短命な準戦士まで瞬間移動で出現。


 今闘ってる暇は無い、と焦るルナ。

 思わずテレパスで絶叫する。



《ルカァ――――――――――――――ッ》


《大丈夫。ここに居るよ。キミを絶対に守る!》

 と瞬間移動で立ちはだかったルカ。



 ……コイツ、サイだけなら私より上か、念力じゃ倒せない。サイコだから精神攻撃も無効……

 でも心眼では今ファスターさんが戦ってるヤツの様には分割・再結合は出来ないタイプ……

 念力と瞬間移動、レーザーが得意か。ならそれを警戒してしっかり予知だ!



 内臓破壊と精神攻撃と瞬間剣撃の三重攻撃をも次々とかわす、受け流す、弾き返す。


《予知力も移動速度も十分に高い今の私なら、お前の出現場所へ嫌がらせだって自在!……そして今こその力を使う時! ルナを守るための私! 》




《ファントムアームズ!!!》

▼挿し絵

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093078013475614





 サイキック合気を自在に駆使、執拗な攻撃から守り続けるルカ。更に瞬間移動の特攻で阻止しまくる。



《さっきから何だ、この防御力 ?! サイのアームでバリアと攻撃……そしてこのワザ、予知と妙な体術で剣撃が全て軌道を狂わされる……》


 ジャナス族の得意とする予知と瞬間移動攻撃が全く通用しない。そして剣での攻撃を諦めて、



《……コシャクな、ならレーザーも喰らえ!》


 


 双眸そうぼうのレーザーにサイ・バリアを弾かれるルカ。予知で辛うじてかわすも火傷を負う。


《ルカ、ボクのヌンチャクを使え! そいつは伝説の超金属だ!》


《了解っ!》


 予知出来ればレーザーを受けるぐらい、このサイと合気の見極めと我が合気剣術ならば余裕。

 防御力だけで言えば私は最高ランクだ!



 懐内のポシェットからノエルによりタイミング良く渡され、直ぐ様レーザーを弾くルカ。


《ぬ~~っ、これだけレーザーを照射し続けても熔けないだと ?! 上モノの魔剣をも数十秒で焼きつくすこの超レーザーが ?!》


《フッ、ボクらの持つロッド、誰が作った物だと思ってんだよ。伝説の錬金術で伝説の天才魔道具師が造った物なんだぞ! そんなヘナチョコレーザーなんかで溶けるもんか!》




 延々と阻止し続けるルカだが、突如二体目のジャナス準戦士が瞬間移動で出現。しかし、


《舐めないでよっ、移動が速いだけ! 予知や瞬間移動ならこっちも出来る!

 むしろ技自体の速さは実動最速のルナに比べたら甘い! 毎日どれだけルナと特訓したか、お陰で超高速技の応酬なら経験と練度じゃ誰にも負けないっ!

 二体同時だろうと守り抜く! 》


 特訓の成果で2対1での圧倒的多回数攻撃にも驚異的守護を発揮し続ける。


 お蔭で怪物を削ぎ散らしてゆくルナ。


 上空では、下方から弾き飛ばされて来る膨大な解体群を連携で運ぶ。ルカ、ノエルが抜けて更に大忙がしのBROSと四天星達。それでも取りのがした物を治癒と戦いをしながらのエマが援護で弾き飛ばす。

雷衝撃波サンダーブロック!〉


 ルナ達がどうなっているのか見る暇もなく、また、際限なく下から吹き上がって来る塊りで視認すら出来ないが、破片群が届いて来る間は順調と判断するしかない。


 ―――― そうした状況が続く。


 更にジャナス準戦士の二体がかりでの勢いが増すと、ルカの数千倍速とサイによる合気の守護も限界的状況となり次第に傷が増え、体中が血で染まってゆく。


「ルカッ、ボクも万倍速で動き回って狙いを外させる! そしてムチで牽制しながらバラすから頑張って!」


「た、助かる……でもまだ負けないよ!」


 どうにか立て直すルカ。だがそれによりルナのバラシの効率が半減してしまい、残り時間が半分となってもまだ2/3も残っている。




 スッ……



 しかし三体目の準戦士までルナの阻止に出現。

 即奇襲される。 正にルナが射抜かれる直前、


 『させるかァ!』


 ルカの刺し違え覚悟の合気剣術で特攻、


 ドシャァッッ!


 その者をロッドで貫き撃破。しかしルカも敵仲間にくびの半分を切られて動けなくなる。


 そこへのトドメの一撃に横目で気付くルナ。

 だが既に遅く




 《しまったっ、ルカがぁ―!》



[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093078013480511




< continue to next time >


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遂にルカが神に取り上げられてしまうのか。


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