第63話 その時こそ迷わず引き受けて下さい!



 作戦会議室で待っていたファスターに挨拶するルナ達。すると、その表情は少し嬉しそうに見えた。


「この度の活躍は実に素晴らしいものだった。 そこでその力を見込んで私から任命する!」


 任務……遂に親衛隊として……


「政府にさえ内密の最重要作戦、そう、今回の戦乱を奇策、その計画にキミ達も親衛隊として参加してもらう!!」


 これか! セイカちゃんの言っていた……


《―――何か重要な依頼を得たならば、その時こそ迷わず引き受けて下さい》




[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093077460716509





 祝典ム―ドから一変し、一気に引き締まる。


『はい! 精一杯やらせて頂きますっ』


 と居直る二人。その内容を聞かされてその重圧に驚愕するも、決意を固めるルナ達。


 ―――これ程の任務を任されるならこれ以上の事はない!



 きっと命懸けになる……

 身の引き締まる思いと興奮の冷めやらぬ中、ルナは作戦室を後にする間際に『ハッ!』と、硬直する。

 偶然視界に入った『思わぬもの』を目にして二度見と共に複雑な顔となった。


 そっ、そんな!!……

 ピアスのデザインがボクのとまるで違う!


 でもデザイナーのレイさんがコレを似てると?……それとも単なる記憶違い?……



 死ぬほど気になっていたデザイン。ルナの胸の甲冑ブレストプレートに埋め込まれた彫金細工に施された三日月の右上に小さな一番星。それに指先を当てる。


 しかし髪の隙間から見えたそれは確かに月と星だったものの、三日月の中央に星が描かれるといった小さくも大きく異なるものだった。




[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093077460724210




 これをプロのデザイナーが『そっくりなもの』と表現する事はあり得ないといぶかしがるルナだった。

 だが少なくとも兄のそれではない事が分かり、何とも言えない落胆と一つの決意を新たにした。



 ……それなら見ず知らずのボクを命がけで助けてくれてたって事になる。

 なら神がわざわざこんなに似た人と引合わせたのは、イタズラ?

 それか恩返しの実感をし易くしてくれたとか……?


 何にしても何気にこの人を尊敬してたけど……

 だったらもっとこの魂を込めて今回の任務に応えていかないと……




 * * *




 この大陸の北の大地、人の住む地域よりもずっと先に草木も生えぬ広大な平野が続く。




[ ▼挿絵 ] 

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093077460729783




 そして更にその最果てに口開く巨大ホール、ギガダンジョン。この最北の地には魔物以外に虫さえ生息しない。

 更に北には年中荒れる大海がこの世の果てを想起させる。



 ルナ達はファスター親衛隊として軍へ参加。軍用車で作戦の説明を受けつつ移動した。




[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093077460736859





 説明が終わり車窓から荒涼とした岩石だらけの地が延々と続く景色を眺めるルナとルカ、そしてノエル。


 いよいよ無住むじゅうの大平野へと来た事を実感するルナ。


「……そろそろだね。ボク、前世ではどんな形であれ戦争に参加するなんて夢にも思わなかった」


 特別任務の発動までは待機を兼ねた最前線後方での救助と治癒による援護を指示され、戦地へと向かう。


「こんな事やらずに済めば良いけど悲しむ人を少しでも無くしたい……更に超重要任務にも呼ばれた。

 もうただひたすら頑張るしかない」


 決意を固めるルナに応じて向かいの席のルカも自分なりの役割を再認識する。


「だね。何もしなければ罪もない人がやられちゃうし、仕方無いんだろうね……だけど先ずは後方支援。戦傷者助けて治癒する任務だから頑張ろうね」

 

「でもノエちゃんは危ないから戦闘の時はポシェットから絶対出て来ちゃダメ、中からの魔法参加もダメ。わかった?!」


 車内をスズメのフォルムを模してチョロついて遊ぶ幽体ノエルに言い聞かせるルナ。


「のえる、たたかいキライだもん、チュンチュン」




[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093077460742783




 平和と遊びを愛するこの妖精の気ままで幼い声に癒される二人。


「そ、そうだったね! 心配ないか。じゃ、ルナの予備のヌンチャク欲しい時だけ中から渡してね! 」


「チュン!(うんっ!) ニシシシ……」


「クスッ……にしても私達、徳の倍率いつの間にか四百倍超えだよ」


 ホントいつの間にかだよね、と感慨深げのルナ。


「実力も更に上がってるし……コレは相当活躍出来るんじゃない?……でもそんなに良い事したカナ?」


「[取り返し隊]とかさ、ボクら人助け中心で徳倍率がマシマシ。人に良くした分が評価になるのって気分良いよね」


「うん。更に日々の実戦や本気の乱取りで基本ステータスも上げて遂にルナは物理フィジカル60万」


「だね。それにルカも今や超速で動けてる。こうなったら現地でケガ人連れてくる競争をしようよ!」



  * * *



 最前線の陣営控えに到着し、やや遠巻きでも分かるその乱戦ぶりに息をのむ三人。


 既に『魔法映像中継板リフレクスパネル』でその光景を見てはいたが、地空を揺らし轟かす炸裂音と大火焔、夥しい乱気流の絶えまない応酬が繰り広げられている。


 当初は楔形くさびがたで驀進し激突した両陣営の前線は急速に拡幅・散開し、両脇へと展延した距離は10km超にもなっていた。


 圧倒的な数の不利を近代兵器等の火力、膨大な数のジャミング機、転生者等の大魔法で対抗していた。




 その中でルナ達は早速ケガ人を連れてくる競争を開始。以前ならルカの10倍の速さで動けるルナが圧倒的に有利だったが、この競争は互角だった。


 その理由、ルカはサイキックが30万を越えたあたりで訓練して来た瞬間移動テレポートが遂に可能になったからだ。

 但しまだ連続多用はおぼつかないが、それでも力を溜める時間さえ有れば『連れテレポート』も可能だ。


 ルナは万倍パワーで軽々同時に何人も担いで戻って来る。開始から僅かな時間に二人共が数百人ずつ救助して連れ帰って来た事で、ひしめく野戦病院のテントから溢れ出る程の戦傷病者。


「救助、追いついちゃったよ。暫く連れてくる人あまりいないね」


「じゃ治癒の方に回ろうか、ヒドイ怪我人も多かったし」


「それならねー、のえるがこのホースでやってるからねー、もうすぐみ~んななおっちゃうよー。しゃばばばば~~~~」




[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093077460747931




 例のホースから豊富な量の光る魔威をそこかしこの戦傷者に振りかけて治癒して廻る。

 シャワーモードにして天へ向かって勢いよくスプラッシュ。

 治ってゆく人の笑顔が嬉しくて「ニハハハハ……」と走り回って降らしまくるノエル。

 周囲も釣られて皆笑顔。


「う~ん、やることないし。じゃあルカ、ノエちゃんを見てて。ちょっとだけ加勢してくる」


 ドシュンッ……


 カッ飛ぶルナへ慌ててテレパスで叫ぶルカ。

《あ、コラ! ルナァッ! ちょっと、私達あくまでも裏方なんだからね――っ!》



《え~、じゃあ遠くからやるから~》

 既に姿は遥か先へ。



「もう、ルナったら……」



[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093077460757057







< continue to next time >


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遂に最前線に加勢するルナ。果たして戦局は?

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