第49話 大侵攻の予知



 ひいいぃぃぃぃ、デカッ……

 こ、こんなプラズマボール見たことない~! !!




 [ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093076367424982



 50M内に近づいたらオシマイだぁ!


 ……うぅ~、なら! 〈ワイヤーホイールッ!〉


 ギュイィィィ―――――――ンン


 雷神へと爆投さたれた超回転ヌンチャクからクロウワイヤーが遠心力でグングン伸びながら光る円盤がエマを襲う。


 ギャイィィィィン……


 ロッド本体を剣で受けるエマ。それから伸びた死の鉤爪とワイヤーは慣性で遥か後方の大地へアース。

 それが導線となり莫大な電気は大地へと流され、電化移動出来なくなるエマ。


『ハッ……』


 更に前面の超放電がはだけるや、既に超々ジェットで突っ込んでいたルナ。


『ドグヴァッッッ』 「ガフッ」

 正拳突きでエマの胴を貫くルナ。血を吐くエマ。


 だが、エマはその腕を残留体内電気でガッチリとホールド、大剣をそのままルナの喉元へ。

 3万倍速ルナは残った片手で首へと手刀、


 それぞれ同時に寸止めして互いに飛び退くと、


 ドッグァァァ―――――――ン


 遅れて発生した衝撃波同士が空間で激突、巨大爆裂して打ち消し合い、その余波で生じた爆風が凪ぐのを待って身を固くするその場の全員。



「――――まずはここまでだ」



 取り敢えず休戦。 ルナは電気火傷、エマは腹の穴をその治癒魔法で自己治癒セルフヒールする。


「お陰で課題が見えたな……アタシは新ワザ、雷神中に高速移動が疎かになる。だからお前の速度でもやられた。まだ全方位放電には全力が要るからな……

 撃たれたのが頭なら即死だ」


 後輩にやられても取り繕わず冷静な分析のエマ。きっとまだ本当は余力があるのだろう、とルナも自重する。


「……後は電気を誘導されてしまうと無効となるのも課題だ。とっさに弱点付いてくるなんて大したもんだ。その上得意な接近戦に持ち込んでアタシの動きに対向出来てた」


「亜光速移動のエマさんにはマッハ百以上のボクでも太刀打ち出来ないのが身に沁みてたんで、武道の関係で超得意な接近戦にする為に相棒との予知連携を鍛えて来ました」


「いい心がけだ。がしかしジャナスは少しでも予知でヘマすると移動出現時にはもう刃かレーザーが急所に入ってる。

 サイのパワーが大きく上回られたら予知し切れず尚更だ。だからこれからはアタシの雷神のように間合いにすら入れないような工夫が要るだろう」


「はい……じゃあ魔法の機雷を周囲に沢山まとって戦ったらどうでしょう?」


「そしてたらサイ瞬間移動で近くに出現出来ないだろうがな。出現場所でオーバーラップすれば合体固着か爆死だそうだ。

 でも自分も接近戦が出来なくなるぞ! ヌンチャクとか振り回したら自爆とか……それにその機雷を遠隔から爆破されたらこっちがヤバイだろ」


 アッサリと弱点を突かれ頭に手。『あそっか、テヘヘ……』と笑って誤魔化すルナ。


「アタシは雷神中でも雷光瞬間移動ライトニングシフトが可能になれば弱点対策かつ攻撃にもなるハズだ。

 同じ意味でお前はそのあきれる程速いヌンチャク回しをやり続けて戦えればゼロ距離剣撃でイキナリ首を取られる事も無い筈。長時間回し続けられるようにしとけよ」


 ……そっか。確かにこの回転の間合は秒間数万回のヌンチャクの嵐。そこへ飛び込めば即死。或いは物質の重なりで結合かオーバーラップ爆発……。

 流石にエマさんは元理系男子、結構戦術家だ。この人が師匠みたいになってくれたのはボクにとって凄く幸運な事だったかもしれない。


「はいっ、長時間回せるようにしときますっ!!」


「よし。んで、レーザーには超倍率活動時に摩擦熱耐性も極度にアップするお前なら一瞬浴びるくらいは全然大丈夫だろ。それでどうだ?」


「オオオゥ?!……エマさん!……やっぱ頭もいいんですね ?!」


「ん~、じゃ、今までどう思ってたんだぁ?………」


 …………


 顔を見合わせ一瞬の間。


「「ア一ハハハハハハハハ……」」

 そして大笑いする二人。

 そんな二人を微笑ましく見守るルカ。



 しかしエマは直ぐその笑みを消して重大な情報を明かし始めた。


「……実は今回助けられた後、そのサイキック副隊長ソフィーから聞いた話なんだが――――近い内に地下総力を挙げた大軍勢の侵攻が始まるらしい……」


!!  ――――絶句し凍りつくルナ達。思わず本当の事か問いただす。


「確かにこれまでそんな事は一度も無かった。アタシもつい聞き返したさ。ギガダンジョンは守りも固く忍びも潜り込めなくて情報が全く掴めなかった。

 結界で千里眼も通さない。そこでファスター率いるサイキック隊は大規模な『予知隊』を作って力を入れたと」


 大剣を背の鞘に仕舞いながら遥か地平線に目をやり、語り続けるエマ。


「そもそも予知出来るって事は運命は決まっているのかと聞いた。当たって欲しくないしな。したらソフィーは言った。宿命ではなく確率だと。

 時間軸に様々な事象が近付くとその複合的な要因から多くの結果が一つの方向性に収束してゆく。

 その最も可能性が高い所を超越意識が読み取ったもの、だから絶対ではないと。遠くの未来ほど的中率は下がると」


「そんなの絶対に当たって欲しくありません! 」

 と、懇願するようにルカが身を乗り出す。


「だな。だが言ってた。今回のは選りすぐりのサイキッカー全隊を挙げその予知力を結集して精度を高めたもの、しかも近い未来の事象。ほぼ確実だろう、と確信に満ちていた」


「ならそれに対抗出来るんですかっ? こちらにも備えは有りますかっ?」


「どこまでの準備が有るかは分からん。が、その時の戦力としてアタシは誘われて共闘を約束した。もちろん今回の恩もあるが、元々アタシはリ・バース転生者。

 実は幼い頃、地下のヤツらに親を殺された怨恨があってな。アタシも危なかったが、その時にレイさんに助けられた。

 いつか仇討ちを……それで乗り込んだつもりがこのザマだ。一人じゃどうにもならんと分かった。だから彼等に加わる事にした……

 まあそれと、ジャナス以前に第三層にすら行けない理由を目の当たりにしちまってな。 あれじゃぁBROSがショックを受けて口をつぐんだ訳だ。 あれを何とかせんと、もう絶望しかない……」


「…………な……何が居たんですかっ?!」


「ジャナスを攻めの頂点とするなら絶対的守護怪物。第三層への穴を塞ぐ程の巨塊……

 強大な魔力をもつ妖精族戦士でさえ手を引き、かのBROSの〈超核分裂(ヌークリアディビジョン)〉ですら無効だったという超巨大怪物さ」


 ただ硬直するルナに向き直り、いつもの野心に満ち溢れた表情とはまるで違う、厳しくも思い遣りに満ちた真顔で語り始めるエマ。それが深刻さを助長する。


「きっとお前達もこの戦乱に巻き込まれずにはいられない。こっちから行かなくてもやって来る……

 だから今は備えてもっと強くなっておけ。

 そしてその時、市民を守る戦いをするのか、敵を叩く最前線側のアタシ達と共に行くのか……

 異世界に来て間もないお前らには酷だが今から考えておかないとならない。 悔いの無いように覚悟しておけよ」


固唾かたずを呑み顔を見合わせるルナとルカ。その場から全ての音が消えたように感じていた。


 そのショックの大きさを悟って気を遣ってくれたのか、不意にいつもの調子で、


「だけどルナッ、今日は得るもの得られたしそれに……クスッ、楽しかったな! 互いにステータスも上がった様だし、またやろうな!」


 我に返るルナ達。このアッケラカンとした豪胆ぶりが今は何とも心強いと思わされた。


 茶目っ気返しでビシィッ、と敬礼ポーズをとり、ニカッと笑むルナ。



[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093076595325705






「ハイッ、ぜひっ! 今日はありがとうございましたぁっ!」


 可愛い妹分達に今までに無い優しげで美しい笑顔を見せたエマ。




 [ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093076367429219




 そのまま無言で電化して、いつになく静かに消えて行った――――――







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驚愕の未来予知を告げられた彼女ら。ファスター達が予知していた大災厄の正体:全面戦争。

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