第42話 高速飛行をモノにする ~自分なりの工夫



 空を嬉々として疾走するルナヘ地上から指示するエマ。


「おーい、ルナァー、最初はそれでいいがそれはきっかけだー。今のお前は空気の疎密を操れたって事だー。

 次に、蹴りを弱めて疎と密を連続で作って足元に見えない上昇床、エレベーターを作ってみろー」


 少しずつ蹴るのを減らし空気圧を操る。

 ギュオオ――――ッ!と上昇して行く。


「それを徹底的にやれ、どの方向にも動けるように全身で魔法を出せ。いずれ空気の疎密や蹴りで飛んでる意識が無くなるまで……

 今は物理現象を利用してるが無意識に出来るようになった時、最早もはや現象を使わずただ想念で飛べてる自分がいる。それが大事なんだ!」


「はいっ!」



「そっちの子……ルカとかっていったな。サイキックステータスがスゴイじゃん。テレパスや千里眼とかの知覚系だけか?」


「いえ、念動力サイコキネシスも使えます」


「だろうな。そのステータスなら。じゃあ、あの廃屋、動かせるか?」


 ググググググッ

 何とレンガ造りの二階建て一軒屋を丸ごと念力で大きくズラすルカ。


「やるじゃん、相当だな。なら飛ばずに魔法を浮遊だけに使って得意の念力で思いっきり自分の背中を押してみな! アタシが魔力で押さえつけて邪魔するから負けるな!」


 浮遊魔法して念力の溜めを作る。

 押し負けぬ様に全力のサイでドギュンッ

 『ギャッ』

 自分の超加速Gに仰け反るルカ。


「ほ~ら速い! ま、押さえるってのは嘘。フフ……

 これも最初はこの方法で飛びまくって、そのうち魔法だのサイだのっていう意識が無くなった時、本当に飛べてる自分に気付くんだ」


「はい!」


 最後はこの子、魔法ウィザードリィステータス50万……アタシの魔眼が久々に反応してらぁ……


 ん? なる程そのポシェットか……この莫大な魔力が暴走しない様に誰かが亜空間ごとリンクして封じた……

 で、本人の無意識にアクセスして空想イメージの自動アイテム化と必要時だけ詠唱無しに引出せる仕組みに……


 これを考えて実現した奴は天才だなぁ……



「ン~、そうだな、おまえ向きの教え方は……」


 のえるはとべないの。シャボンだまにはのれるの、と不安そうな下がり眉で訴える。


「うん、それでいい。じゃ、あのお姉ちゃんたちと鬼ごっこやろっか」


 キリキリッとした姉御を前に緊張していたノエルもこの一言で『ニシッ』と笑み、勢いよく右手を突き上げて

『やる――っ!』

 っと小躍り。


「フフ、じゃ、そのポシェットの中にお姉ちゃんたちの嫌がるものないか? キモい虫とか」


「あるよ~。ウンチ~! ホースからいっぱいでるの~! ねえねとってもいやがるの~」


「ンフッ、いいねぇ。じゃ、追いついたらタップリとぶっかけちゃえ!」


「うん! エヘヘヘヘ、ねえね、かけちゃうゾ~」


 ホースを掲げ、かける気マンマンのイタズラ眼。

 まさかやらないよね、と言おうとした二人に息つく間も与えずヒュンッ、シャボン玉にのって勢いよく発進。


「ひゃっ……やめっ、シャボン玉ってこんな速かった?!」


「ニハハハハハ~~~~」

      ―――ビシュン……


「キャ―――ッ」


「イシシシシシシシ」

      ―――ギュオオオォォォ……



[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093076234316496





「ヒエェ―――ッ、うそでしょ~、やめて―っ!」


 爆速のバブル球から逃げ惑い、必死の形相で空を疾走するルナと飛翔するルカ。


「思った以上に上達してくなあ! やっぱスパルタより遊び心が大事だな。 我ながら上出来じゃん。

 くふふ……必死で逃げてらぁ……暫く遊ばせとくか」


 近くの岩に足組みして座り、高みの見物のエマ。

 何やら取り出した異世界の菓子、大好物のショコレッツを口に放り込んで、一瞬乙女のように『オイシ~イ』 とご満悦。


 魔法で取り出した熱々のティエをすすり、んはぁ~と一息。一人だけ寛いで過ごす。

 空は3人のジェット風切り音と阿鼻叫喚あびきょうかんで騒がしい。


 ふあぁっと猫のように伸びと欠伸あくびをして、


「……さあて、大分速くなってきたなぁ、ん~じゃ……

 お~い、ノエル~っ! その魔法ポシェットに速い鳥さんとかいないか~っ?」


「いるよ~! とりさんにのる~! みにのえる~、はやいとりさんおねが~い」


 魔法の鳥に乗り換えるノエル。

 それがただの鳥なら良かったが、光焔こうえんほとばしる伝説の巨鳥、ファイヤーバードだった。


『キェ――――ッ』

 と鋭い怪鳥音と共に猛然と加速。




[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093076234328295




「あ、めっちゃ速くね?……ハハハッ……

 音速超えそうじゃん……」


キ――――ン……バゴオオオォォ―――ン


「あ、ソニックブーム……ンフッ、越えちゃったよ、こりゃ末恐ろしい魔法使いだな……」


 必死さ故に無意識で上達してゆく三人。


 やがて全員マッハを軽く超えて、その速さで乱高下、大旋回、空を駆けずり回って怯え叫びまくる姉二人に狂喜乱舞のノエル。


「ヒハハハハハ! ねえね~、まてまてぇ――ぃっ!」


 悶絶絶叫、死に物狂いの半泣きで逃げ惑う姉二人。

 そしてついに……


「あああ~! ボクたちの大事なコスチュームが~! 洗わないと~!」

「クッサ―イ! ノエルひっど~い! もお~っ!!」

「ニシシシシシシシ……ねぇねたち、ウンチだらけ~」


「ハーッハッハッハッ、腹いてぇ―っ! な、涙が……

 ククク、 どうだぁ、この才能の開花ぁ! 

 教え方上手すぎ~! お前ら感謝しろよ!

 ク―クックックッ!」


「「全っ然感謝出来ませんっっ!」」


「はぁ? 全くこのバカモノォ! 魔法でバリアくらい張れぇ。 それにそんなクリーニングくらい魔術で何とかしろぉ!」


「は~い。でもお陰でたった1日でみんなこんなに速くなるなんて……」


「だろ~。ま、十分なステータスは有ったが突出し過ぎた特意が逆に邪魔してたんだよ。ケド基礎だけはちゃんと出来てた。その首飾りのお陰かもな。

 これでとりあえず実用レベルだな。……でもな、まだ先は長いぞ。ガンバレよ」


「はい。でもその先……どんな工夫をしたんですか、エマさんは?」


「アタシは前世で電気系の技師だったから電気の性質を色々知っててな。電気そのものになりきろうと魔法にとり入れたのさ。……そういう自分なりの工夫がこの先の道ってこと」


「ナルホドー。今日は本当に勉強になりました。

 ……もう一生忘れません、この感謝と屈辱を!」


「ア~ハッハッハッ。ん~、なら良かった。じゃあまたな! 」



――――ピシャアアン!









< continue to next time >


――――――――――――――――――――

もう仲間と言っても過言ではない心強い先輩転生者・エマ。 今後の異世界での四人の活躍にもし応援頂けるなら ☆・♡・フォローのタップにて宜しくお願いします。

――――――――――――――――――――


イメージBGM (youtube)

▼ The Adventarer′s Hymm

https://youtu.be/zQkcUOQ2M5M

(エマによりみるみる飛べる様になり、皆で大鬼ごっこ。その大乱舞にピッタリ)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る