第41話 飛躍的な飛翔 エマの特訓



「よおルナ、久しぶり! ワリィな、魔人なら既にノシちゃった」


 タブレットからの依頼案件で駆け付けて来た所にエマと約3週間ぶりの再会。


 相変わらずの容姿端麗さ。その割に飾り気がない所がルナと気の合うエマ。街から僅かに外れた大規模の自然公園で挨拶を交わすルナ達。


 しかしエマは何やら周囲を気にしている。その足元には雷撃の餌食となったであろう黒コゲの魔人が三体倒れていて、まだコゲ臭い。


「ボク等も助けを求められて来てみましたが先越されちゃいましたね~」


偶々たまたま救援要請されてな。ま、瞬殺だけどさ。にしてもかなり方々で活躍してんじゃん。結構ウワサダゾ。しかも人拐いだけじゃなくてパーティーも相当助けてるんだってな」


「ええまあ。でも一度平和になった百年前からすると、ここ数年でかなりの強敵が現れる様になったらしくて、この前もパーティーを解散して引退しようかって言ってる人達も……」


「たしかに徐々にそうなってる。でも地下のスゴイのは比べものにならないってな」


 え、そうなんですか、気を引き締めないと……と、井の中の蛙である事を認識する。


「そうそう、何でもタブレットで集客してるってか、いい方法考えたなぁ。徳も上がって強くなってるし、物理フィジカルだけじゃなく魔力ウィザードリも少しは上がって来てるな、結構結構!」


「はい、おかげでロッドヌンチャクの魔力ワイヤーもかなり遠くまで伸ばせる様になってきました。 総合力上げるのに今必死なんです」


「ウン、感心感心。ところでコイツら一味が拐ってった子達がまだ見つかってなくてな、その辺で逃げようと潜んでんだろ……あっ! いやがったな、逃がすか!」


 魔怪鳥7体が出現。


 それぞれが一人の子を足で掴んで一気に飛び去る。誰より初動の早いルナは千倍フィジカルでスーパーハイジャンプするが届かない。高速で空高くに逃げゆく魔鳥たち。


「逃すか!」

〈投げヌンチャク・ホイルカッター!〉


 摩擦で光る超回転ヌンチャクが弾丸を遥かに超える速度で1体の首を飛ばし、下で待つルカが落ちてきた子を念動力サイコキネシスで減速し受け止める。


 もう一体は更に天方向へと逃げる。


 魔法でホバーするルナは上空へは追い付けないと判断。そこで前世での得意技を発揮。そのまま浮遊しつつ大きく半身をひねって腰を据え溜めを作ると、キツく締めて脇に挟んだヌンチャクに力を込め、エネルギーが限界まで満ちたところで爆裂放出!


物理フィジカル最大マックス × 魔力加速! 』


〈ハイパーレールガンッ!!〉 キシュンッッッ―――



[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093076234309688




 マッハ1万を超える強烈なエネルギー砲の如き一撃。 遅れてやってくる衝撃波を伴い逃げる巨鳥を巨穴で貫き撃墜する。


 空中で女の子を受け止め、ゆっくり飛んで戻ってくる。


 それに対しエマは雷光瞬間移動ライトニングシフトでの剣撃〈イナズマ斬り〉で5体の足切りを一閃で済ますと落下させる間も無く女子達を救助。


 ピシャアアンと光るその5往復すら一瞬で、誰が見ても一往復に感じる程である。


 そして足から緑色の血を落として逃げる巨鳥に地上から空へと剣と振り上げ、


 雷撃らいげき!!


 巨大斬撃の一閃、即その5体全てを撃墜させる。



「さすが一瞬ですね。やっぱりアイツとやるならその速さが要る。それに比べて……」


いつまでも停滞する課題に鬱々とした表情のルナを見て片眉を上げたエマ。


「地下世界に行く最低条件としてアタシの師匠が言ってたのは、音速の数倍で飛翔出来る事と中型爆弾百発くらい連続防御が必須だってさ」


「音速の数倍……走るなら出来ますが……」


「プッ、そっちが異常にスゴイが、超高速で自在に飛べないのは今後の救助や戦いであまりにも不利だ。例えば今日の様な敵には超音速の鳥や怪物もいる。だから速く飛ぶ方法を教えてやるよ、要するにそれは得意を生かしきるってことだ」


 今最も喉から手が出る程欲しいエマの速さ。あの白い戦士と戦える最大の可能性。 もしやこの人なら勝てるのでは、と思いを巡らしつつ助言を貰える事に前のめりのルナ。


「例えばルナはヌンチャク得意だろ、人より上手く行くともっと鍛えて更にって。そうやって人並み以上になっていく。

 つまりその訓練のたまものだろ。で、オマエらそれぞれ飛び抜けたステータスがあるよな、それをもっと生かすんだ。敢えて聞くが得意は何だ?」


「今はっきりそう言えるのはフィジカルと最高レベルの治癒魔法かなあ……」


「こないだ衛兵魔人の暴れたあと街の修復をしたって聞いた。治癒魔法を物体にもやれる程なんだろ、だったら例えばそのとんでもない蹴りやパンチで空気に真空作ってみな」


「え……流石にそれはムリですよ」


「多分お前の考えてるのは絶対真空の事。ではなく物凄く早く空気を押すと疎と密になる。音波やこの前巻き起こしてたソニックブームもそう。

 で、その急に出来た密度の違う空気を全速で魔法修復してみな。瞬時に戻ろうとした空気は大きな圧力を生む。蹴った空気を同時に極限まで早く修復して戻せば蹴れる程の足場になる。それをやってみ」


「蹴って、瞬時に直す! 超極限スピードで、直す場所も見ず、さらに足から治癒魔法を出すなんて!……う……でも……空気を蹴れる! 押し返してくれる! おおお!」


 その繰り返しで大きくなって行くストローク。スピードスケートのように大きな動きで空を蹴ってるうちにどんどん速くなり猛スピードで大空を闊歩かっぽし出すルナ。


 バシュ――ンッ、バシュ――ンッ、バシュ――ンッ……


「こ、こうか……ふふ、なになに、これ楽しい~~~~!」


「はっや……」


 その高速空中跳躍を地上から眺めるルカとノエルも瞳を爛々と輝かせて応援していた。







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エマとの出逢いで更なる急成長の予感。 今後の異世界での三人の活躍にもし応援頂けるなら ☆・♡・フォローのタップにて宜しくお願いします。

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