第27話 戦闘パートナーには良かったが……



 激闘に次ぐ激闘。――― 修行&修行


 例によって夢中に向き合うと瞬く間に時が過ぎる。


 その数日だけで質の高い実戦を無数にこなしたのと同等の戦力アップを果たした二人。


「これでボクは万倍の物理フィジカルと魔法の連携攻撃がかなり出来る様になった! ルカのお陰!」


「私は千倍の物理フィジカルとサイの併用で超合気術もやれる。きっとルナの役に立ってみせるね」


「お互い凄い進歩だ、異能の技も色々覚えたしね! これから大進撃だ! にしてもルカがいればいつでも鍛練できて、これって最高の環境! 」


 やはり武道が根っからのアイデンティティ。二人は充実した訓練が出来て上機嫌だ。


「だけどホント修行キライだったの? 最低限の寝食以外ずっとニコニコしてやってる!」


「そう言うルナだってニヤニヤしてメチャ楽しそう。もしかして私とだから?」


 何かを誤魔化すように目線を外し、まあねと言って調子を合わせるルナ。


「ん何? 今デレを隠した? じゃ、このあと二人でシャワー浴びて……」


「ルカッ! そうじゃなくて! 同レベルの武道家と殺気とか感じながらヒリヒリした鬩ぎ合い出来るなんて、やっぱスパーリングパートナーって必要だよね! って事」


「チェッ……な~んだ……修行ばっかり。なら帰ってから寝技も試してみよっか」


「ダ~メ。ルカのエッチ! もう……。

 ところで物理フィジカルは既にこの世界で最強! 初期ステータスの関係でまだ一桁ボクに分があるけどこのまま鍛練し続けてればルカもその内にね。

 で、今の所は超常能力は魔法はボク、サイは圧倒的にルカだね。

 考えは見抜かれるわ、念力で石弾丸を凄い数を飛ばして来るわ、骨折りや内臓潰しとかの直接攻撃はエグ過ぎ!」


「でも物理フィジカル10万だと石弾丸は避けちゃうし耐性の上昇で念力攻撃も通じない。

 本番ならその間に脳ミソ吹っ飛ばされてる。実際さっきもお腹に穴開けられたしね。

 やっぱ万倍速には私の千倍じゃ無理。サイの読心と予知を併用しないと攻撃もバリアも間に合わない」


「ゴメンね。イキナリの念力内臓潰しに『殺される』って思っちゃってつい力が……サイのゼロ距離の攻撃ってどの位の強さで来るか分からないから……今度サイを教えて!」


「うん」


―――穴の開いたはずの腹部をも完治させてしまう治癒魔法に感嘆するルカ。


「ボクのは死人以外全て治せるかもって聞いたよ」


「へ~、私、ここに来れる事と引き換えにそんなスゴいのを放棄しちゃったんだ……」


「そうなの?……なら魔法のカプセル、これを。治癒魔法を詰めてあるからもしもの時に」


 これがあれば戦闘時に安心だね、と手に取って内部の魔光をかざして眺め回すルカ。




[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093075827699029



「うん。でもなるべくボクの傍にいて。即死さえしなければいつでも治すよ。でも頭、首、心臓は飛ばされたらヤバイ。

 あと、繋げるのはいいけど大部分消し飛ばされたら別のドナ―のを繋げる事になっちゃうよ。吹き飛んだ腕を生やす……とかはムリだろうし」


 別人のパ―ツをつけられてイビツな姿を想像して苦笑い、心得とくよ、なんて相槌あいづち


「それに一緒だとサイで敵の行動を読んでテレパス指示してくれたらAI付きスカウターを手にしてるも同然。セイカちゃんはそれを実践してくれた。

 だから武術家のルカならもっと期待出来る。地下でも戦えるかも。とにかく早く強くなりたいから一緒なのって最高」


 戦いの数をこなせず焦りまくっていた状況から解放され、正に出陣へとウズウズするルナだった。 


「だから、より息を合わす為にもなるべく一緒に。寝るときもずっとだよ! ルナ!」


「う……いや、とりあえず今日から別部屋で。(この可愛さムリ)」


「え~っ! 一緒がいい~! お願い~!」

「絶対にダメ! (抵抗出来なくなる自信ある!)」


「何で~! もう同性だからいいでしょ~! そんな事言うならサイで透視しちゃうよ!」

「それはダメ―――ッ!! 血をみるよ!」


「あ、は、鼻血が……」


「……み、見たの?」 ワナワナ……

「いえ……何も……」 ブルブル……


 早速治癒魔法カプセルを手に握り締めるルカ。

 とは言え真顔になり本音を探る。



「でもさ、実の所私の事どう思ってんの? まだちゃんと口から聞いてない。確かに今の私は単なるバディー。自ら望んだから仕方ないけどルナの中の一番はおろかきっと二番でさえない。

 でも私の気持ちは事故直前から何一つ変わってない……キミに好かれたくて神官にほぼ同じに合わせて貰ってキミが受け入れられる女子になれた。

 前世では私が男子でためらってたけど今は違う。だからせめて気持ちだけでも聞いておきたいの!」


「それはえっと……あ! 今回ボクは基本は女子だけど『想いが溢れた瞬間』、『相手の望むジェンダー』になるようにして貰った。だから性別は可変型。スゴイでしょ、フフン!」



[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093075681825617



「え、何それ! じゃ『同じに』って言った私もそうなるし! で、ルナは私のこと、好き?」


「う~ん……どうかな……(とか言ってこれはマズいよね、だってやっぱ可愛すぎ! こんなの好きになるなって方が……くーっ、いや、ヤバイ、違う、友情!)」


「ん、なんかヤセ我慢してない? 少くとも今、私はルナへの想いが溢れてる! だから同じ可変型なら正に今キミの望む女子でいられるんだよ。

 ……ってアレ? 何か……ヘン」


 身に覚えのある感覚。念のため服の中を覗き……うっ、やっぱ……とうなるルカ。


「コレ、相手の望みと逆になるんじゃない? だってさっきまで確かに女子だったのに……」


「え……って事は?……まさかボクも? ってイヤイヤイヤ~、そんなはず……」


―――って、この前ひったくをりやっつけた後、正に相手の望みと逆だったような……


「じゃあ神官はなんて言ってた? コレ大事なコトだからちゃんと思い出して!」


「ちゃんと言ってたよ! 思いが溢れた瞬間、相手の希望するジェンダーになるって」


「そう、で、ジェンダーって? 本人が認めた社会的な性別のことだと?」


「あ……れ……《ソナタなりのジェンダーは逆の性別という事か……》」


 ルナの背中を怒涛の如く駆け上がる強烈な悪寒とブルブル。


「今ルナ、メッチャ、ゾワったよね、何か思い当たるフシでも?」


「い、いや、ちょっとトイレに行きたくなっただけ」


「超ブルブルって……どんだけ尿意。幼児か! ってか何そのスゴイ鳥肌……」


「こここ、これは生まれ付き、あ、イヤ、前世は鳥だったかも」


「いや、前世知ってるし。それにスべスべだったよ~。この前添い寝した時なんか思わずガマン出来ずに唇を這わせちゃったぐらいスベスベ肌だった」


「って何してくれてんのっヘンタイ! やっぱルカは元々男子だから今想いが溢れて男の本性剥き出しになって戻っちゃったんでしょ!」


「なワケない。私の本性って女だもん。じゃとにかく試しに今私を好きになってみてよ」

「そんなカンタンに感情をコントロールできるかっ!」


 ってああ~やっぱ絶対ス、ス、……、いやいや、これはきっと可愛さに欲情してるだけ! そう、欲情!

 これはきっとエロだ! エロ目線なんだ! ルカはエロカワなだけ!


「でも言って欲しい! 今だって尽くすつもりだけど、その方がもっともお―っと頑張れる! ねえ、ルナは私が男子でもあの時確かに運命を感じてくれてたよねっ!」


「はて……でもキケンだから今晩からは別部屋だからね!」


「そ、そんなあ~!!」



[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093075681818975







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