第26話 運命の邂逅 ~魂のバディ 結成 



「セイカちゃんって誰?」


 ルカの自分への想いを考えると、どう話すべきか。

 だが、不器用な自分が上手く取り繕うのは無理。

 そう観念したルナは隠さず全てを話した。


 あの事故の時にルカと共に救った人が自分に恩返ししに来た事。互いに兄弟に誰より救われ、大切にし、尽くしてきた。ある意味、世界で最も共感し合える存在だという事。


 そしてルナの悩みだったジェンダー的すれ違いが起こり得ぬ『両性』という存在を選んでやって来た事。

であるが故に謎の戦士に拐われてしまった事。


 更にその際、救おうとして逆に命を賭して救われてしまった事など。


 それらの証拠として、二つ目の左耳を見せた。




「……ルナさんにそんなにピッタリな人がいたなんて……私は……何のために……」


「ゴメンね……ゴメンね……キミとも一期一会だったのに……追って来てくれて……ホントは嬉しかったけど……ボクにはどうしたらいいか分からないよ……」



 暫く考え込む二人。


 やがて何かを悟ったかのように開き直ってまぶたを持ち上げるルカ。


「はあ――っ……でもこの世界、キミもそうだと思うけど、私の助けも必要とする世界だって聞いた。

 お互いの最大のアイデンティティーである武術を生かして『誰かの為に役に立てる』世界なら別の意味のパートナ―も有るかも知れない」


 ルナは床に目線を落とし、あの少年パーティー達の決意の意味とルカのそれを重ねる。


《この世界に生まれてきた意味……誰かの為に生き、戦い、その命を全うする……》


「人拐いから救ったり、そのセイカちゃんて子を救う為の相棒として私を選んでくれるのならルナさんの役に立てるかもしれない。どう? それまでは私と手を結ぶと言うのは」



「―――それでいいの?」



「……正直に言うとね、そうしてる内に私の方がいいって思って貰えたら、ってそんなよこしまな考えも無いとは言えない。


 ―――でも聞いて!!


  別に恋愛とかだけじゃなくて、本当はそれ以上に思ってた事があるの。

 私、人を護るこの術をその価値のある人に使いたい……ずっとそれを探してさ迷ってた。そしてキミにそれを見出したの」


「……ボク……に……」


「そうだよ。あの日、ルナさんに私の生き方を、存在の全てを肯定されて……魂を救われた……。その上、無条件に命さえも捧げられて、約束も果たされて……

 もう探してたのはこの人だ! って」


 ただひたすらに真っ直ぐルナを見つめるルカ。



「だからどうしてもこの恩を返したい、人助け同盟の約束もやり直してずっとずっと続けたい、そう思って転生先をここへお願いした。


 だから私が二番目だって構わない!!!


 キミの為のバディーとして役に立てて、『こんな自分の存在する意味』がここにあるなら……



[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093075597632064





 ――― 共に歩ませて欲しいっっっ!!!!




「……」



 上瞼うわまぶたが持ち上がり瞳が潤んで輝きを増すルナ。 下瞼には溢れる寸前の思い。




[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093075597639389






「ル、ルカ……ボクもあの日、初めて友達が出来て凄く嬉しかった……大事にしたいと思った。だから命も張れた。

 そのルカがそう思ってくれるならボクも一緒がいい……

 それにこんな異世界に放り込まれて……情けないけど昨日も一人の弱さにヘコんでた。

 そんなボクが今一番共に居たいと思える人と一緒だったら、こんなに心強い事はないよ!」


 そう言って握手を求めるルナ。途轍も無い安心感と勇気。 大きく息を吸い胸は膨らむ。


 その手は真っ直ぐルカへと伸びる。


「じゃ、これからヨロシクね! ルカ!」


 満面の笑みでその手を両手で包むルカ。





 二人はようやく運命の邂逅かいこうを果たしきった。






 ―――ありがとね、ルカ。今のキミを見てるとまるであの日のボクの様だ……

 心底魂を救われて、こんな風にどうしても恩返ししたいって……


 でも胸が苦しいよ。だって、あの人にはさせて貰えなかった。


 むしろあの人はあの世界に生まれた意味をボクに見出して、それも『ルナが教えてくれた』とまで言って。

 ……確かに生きて、戦い抜いてくれた。ボクの為に。


 やっとこの前の少年パーティのお陰でそこまでは解った。でもボクは何も返せずいつも貰ってばかりだった。なのに……


、だなんて言って……


 一体お兄ちゃんはボクから何を受け取っていたんだろ……




 遠い目のルナへ不意に目下の相談を始めたルカ。

 召喚されて探す迄も無く何故かすぐに会えてしまい、即つけ回したせいで何も知らず、住み処や食事さえもどうしようかと思ってたという。



「うん。それなら先ずはボクの生活範囲を紹介するよ。 ボクは転生時すぐに運良く活躍出来て、村から厚待遇でこの住み処を提供されたんだ。部屋も余ってるから大丈夫だよ」


「え……一緒に暮らせるの?」


まあね……と肩をすくめつつうなずくルナ。目を細め両口元で優しくV字を描いていた。



「私、泣きそうだよ……異世界サイコ――――ッ!」




    * * *




 そして翌日。

 ルナの案内で再認識したのは、一部で前世より科学文明が遅れてる所や人を拐ってゆく地下の勢力。


 その浸食で魔に取り込まれる人々と蔓延する瘴気。そして最近の被害急増。




「あ、さん付けしなくていいよ。ルナで」

「うん。じゃそうするね」


 早速ルカは考えていた。これから動き出せば自ずと分かってくるであろう異世界のこの未知の力―――これで今何が自分達にできるか……それだけでももっと知っておきたいとルナヘ訴える。


 ……そう言えば物理力は色々試したけど魔法もそれなりに使えるってレイメイさんから聞いた。まだあまり試してないけど……

「ならそれも兼ねて乱取りでもしてみよっか!」


「えっ! ルナと久々のバトル、超楽しそう! 私はサイ、ルナは物理フィジカルに倍率を振ったね」


「お互い大きな異能をいきなり使えば一瞬で殺しかねない。だから一倍のフィジカルだけで乱取しながらサイや魔法を少しずつ混ぜて、出来る事や備えるべき事を確かめよう!」


 異世界の特殊能力の完全習得と備え。正に自分達が武道で培った時の様にトライ・アンド・エラーで使いこなせるように―――最高のライバルと一からの鍛え直しに胸が高鳴り始め瞳がギラギラして来る二人。


「いいね! じゃ、良さそうな技に名前付けたりなんかして……」


「フフッ。そうだね。修行って私、いつも嫌々遣らされてたけど初めて自分から、しかもワクワクしてる!

 こんな気持ち、きっとルナとだからだよ。早速やってみよっ!」



 こうして二人の凄絶な修行が始まる。










< continue to next time >


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遂に友を得たルナ。異世界での自分探しにもし応援頂けるなら ☆・♡・フォローのタップにて宜しくお願いします。

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イメージBGM (youtube)

▼ IS THS WHAT LOVE MEANS

https://youtu.be/TScXEvvjw-w

(この曲の後半は、どこ迄も胸が熱くなる様に膨らみ続ける想いの浮揚感、この魂のバディ結成へのルカの誓願、そしてルカという相棒への心強さに震える程の喜びのルナを現すものとしてこれ以上ないものです)


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