第19話 真相究明へ

 泣き疲れるまで泣いた一夜、それでも朝はやって来る。 丁度そこへ優しい声の幻聴が。


《ルナ、今出来ることをやり抜いたかい?――――》


 見回すが誰も居ない。…… 一番大切な事。


 お兄ちゃん、こんな馬鹿な妹でごめんね。また昔の私に戻ってた。

 あなたの誇りになりたかった筈なのに……


 顔を上げ、今出来る事に意識を向け直す。


 ……そうだよ、それでもあの子だけは助けなきゃ……治癒魔法で耳を温存してたけど、これは自分に付けておこう……必ず助ける……その決意の証として……


 修復魔法で二つ目の左耳として自分につける。

 そして愛しく撫でてから大事そうに髪で覆った。


 ……でもあの強いヤツ……今のボクではあれには全く歯が立たない。どうすれば……


 ハタと顔を上げ、神官が転生先でも鍛えることが出来ると言った事を思い立つ。


 前世でボクは鍛えまくって強くなった! ファスターさんも、『諦めない、共に強く成ろう』って言ってくれた。

 そう、『今出来る事をやり抜く』しかない……


 と、その時、机の上の金属製の魔法の平板が床にボトリ。

 確か落ちる様な置き方はしてなかった筈が。


「ヒッ……ポルターガイスト?! この世界は幽霊も常駐してるの?!」


 拾い上げた平板―――栄誉市民になった時貰い受けたタブレット。





[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093075290694791






 それに映るレイメイ兄弟とのフォト。フィロス戦勝利の記念『念写』だ。


 待ち受け画面に等してないのに、と首を傾げるが、そうだ、この人たちにこの世界の事を聞いて見よう、と思い立つ。


……しっかしこの『伝意金属板タブレット』とかってヤツはイマイチ使い勝手がね~

 意外と電気が発展してる割にスマホとか無いし。


 う~んと……これに相手を意識して指で書き込むとその相手と文字のやり取りが出来ると言うけどこれ、ホントにレイメイさん?


「え……と『レイさん、ちょっと会いたいですが、今どこですか』っと」


 スッ……書き込んだ文字が消え……フワッ……相手からの文字が浮かぶ。


『△△酒場で飲んでます。一緒にどうですか?(ソフトドリンクもあるよ)

 場所はここだよ〈地図〉』


「お、どうやら伝わったみたい! 行ってみよっか……」


    * * *


 石造りの街並みをまだ軽いとは言えない足取りで目的の酒場を探すルナ。


「元気印、元気女子、元気キャラ……大丈夫。……ん~、確かこの辺の筈……あ、ここかぁ」



 まだ日暮れ前。ドアを開けると奥のテーブルで『お~ホントに来た!』とその美顔を輝かせながら意外がるレイのリアクション。


 ルナは両手で自分の顔をパチンと叩き、人前でトラウマ顔を見せまいと気を込める。今はウソでも元気風な装いにしていなければ潰れそうだった。


 酒場は既にほぼ満席。だがことのほか子供でも入れて貰えた。隣のメイの邪魔そうな顔。


「ちょっと、レイ兄さんに何の用? ここは子供の来る所じゃないんだけど」


「こんにちはメイさん、心配無用です。ボク、色々あってこの世界の事知りたくて少し聞けたらと。あとこの前の魔法攻撃も素晴らしかったのでその辺も。お二人は転生者なんですよね」


 明るい声と嘘臭い笑顔を作り、早速聞き取りを開始する。


「そう、俺らも転生者。輪廻転生型リ・バースとして生まれてここで25年生きてる。前世の記憶も持ってるよ。俺らがここで生まれた頃は今よりまだ平和だったな」


「リ・バースなら詳しいんですよね、良かった。 なんでも百年の災厄とか……」


 ジュースを注文しながら円卓について早速質問を始める。


「そう、年頃の少女が秘かに『地下世界』に拐われ続けて、更に近年街がジンワリと乗っとられて……百年前にヤバイ状況になった時は伝説の勇者の活躍で平和になった。でも残った火種は再燃された。それが百年の災厄。で最近では被害も急増、やり方も露骨だよ」


 先輩転生者として丁寧に教えるレイ。

 亜人系妖精の少女も拐われる事から最大国が妖精族に打診、協力開発して近年生まれたジャミング装置。


 魔力には根源である『真魔』とそれにアクセスして力を借りる『拝領はいりょう系』があり、それを邪魔するのだと言う。ある意味魔法使いも根源から力を借りて術を為す拝領はいりょう系。故にジャミングで妨害されてしまう。


「そう言えばこないだの魔法って魔力の塊でなく火とかの実体で攻撃してましたね」

「多くの魔威弾は拝領の塊。ジャミング機で消されちゃうから面倒でも実体に変化させて攻撃が届く様にしてる。

 まあ人はそれのお陰で奴らに対抗する力を得て量産、姿勢も示した。で、敵も一気にやりにくくなってからは表立って攻撃して来る様になったんだ」


「人拐いと襲撃……召喚村の人からも撲滅して欲しいって。地下世界って一体何が有るんですか?」

「獣人、地底人、魔物や魔人、怪物等あらゆる魑魅魍魎の吹きだまりさ。だがその最深奥はよく分からない……いずれにしても奴らの目的は人拐い継続のようだ」


 そんなにも誘拐……セイカちゃんもそこに?

「許せない。助けに行きたい!」


 当然行ってるという。人の住む北方地区の更に北の果て、この世界の難攻不落と云われる魔の巣窟、三大ダンジョン。敵はそこから来る。人々は転生者や志願兵等で組んで救助に向かった。


「その内の2つ、五十階層のダンジョン・ダロル、そして九十階層のダンジョン・キメラを制覇した。俺等はそこを攻略した一員、連邦からも表彰されたけど……」


 スゴイですね、と立てるルナ。微かに微笑み返すも浮かない顔のレイ。



[ ▼挿絵 ]

https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093075290713331



「単なる前線基地さ。犠牲も相当……結局、魔の本丸、超巨大ダンジョン『ギガ』、そこに囚われている。僅かに救出に行く者もいるが戻れるのは一握り。俺達も行ったけど……」


 その美顔に陰を落として少し口ごもるレイ。

 そこでのトラウマがそうさせていた。


 だがルナはその話に強く反応していた。







< continue to next time >


――――――――――――――――――――

異世界での自分探しにもし応援頂けるなら ☆・♡・フォローのタップにて宜しくお願いします。

――――――――――――――――――――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る