平凡な俺がポンコツすぎる美少女怪盗の相棒とか大丈夫ですか?

糸田 川

第1話 その名は怪盗シロ

「おい!早く追いかけろ!」


 慌ただしく走る警察官の群れから逃げる白い仮面を付けた少女が一人。


「捕まえれるものなら捕まえてみなさい!」


 パルクールの技術を使い入り組んだビルの間を抜け、壁伝いに屋上へ駆け上がる。


「はあ…はあ…ここまで来れば大丈夫かな?」


 息を切らしたまま、ポケットから携帯を取り出しどこかへ連絡をかける。


「こちらコードネーム:シロだ。応答を願う」


「普通に連絡してって言ったよね?」


 少しキレ気味な女性の声が電話越しに響く。


「うっ… 怒んないでよ」


「で、仕事は上手くいった?」


 その質問に声を詰まらせながら

「ま…まあ、上出来じゃないかな?」


「…」


 この無言が辛い····


「今度は何をやらかしたのかしら?」


「実は宝石が割れちゃって····」

 あははと申し訳そうに少女は笑う。


「いつもいつも何をやってるのかしら」



 始まったいつもの説教だ。前回の盗みでは現場に靴を忘れて足のサイズがバレたし、その前にはレーザートラップに引っかかって、警察官たちとの大逃走劇を始めてしまった。

 ダメだ思い出せば思い出すほどに、失敗が多すぎる気がする。


「何で正体バレないんだろ?」

 ボソッと声に出してしまう。


「私が尻拭いをしてるんだから当たり前でしょ?」


 感謝しなさいと話す彼女は、現役の警察官であり私の姉だ。この怪盗まがいの行為を始めたのも彼女の提案だったりする。


「そろそろ、あなたも手助けしてくれるような仲間を作ったらどうかしら?私も証拠の隠滅などがもう限界なんだけど。」


 本当に申し訳ないと思う。


「でも、そんな簡単に犯罪者になります! なんて言う人いないでしょ!」


「そうよね。」


 肌を刺すような風が吹き抜けていく。この時は考えてなかったが、数日後にあんな出会いがあるなんて····。

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