冷房 : 風量 キョウ

「なぁ、なんでクーラーつけへんの?」

彼氏が扇風機の風にあたりながら、ダルそうにつぶやく。


「言うたやん。私クーラー苦手やねん」

付き合い始めて半年、彼がこの部屋に来るのは3度目だ。


「言うても今日真夏日やで?死んでまうわ…」


そんな事言われても、「一緒にホラー映画が見たい」と言って、押しかけて来たのはそっちなのだ。

私は全く興味ないのに。


「壊れてんの?俺、詳しいから見たろか?」

「そういう訳ちゃうけど…」

「じゃあ電気代気にしてんの?」

引かない彼に少々イラっとする。


「熱中症になって、病院行った方が高くつくで」

彼は説教顔のどや顔だ。

私はため息をついた。

「…そんなに言うならつければ?」


待ってましたとばかりに、彼がリモコンを手に取る。

そして「キョウ」のボタンを押した。


エアコンの送風口が微かな稼働音を立てて動く。

そして吹き出す――――――




きゃあああああああああああああああ

ゆるしてえええええええええええええ

もういやあああああああああああああ

やめてええええええええええええええ




彼が取り落としたリモコンを拾い、スイッチを切る。



「………ね?涼しくなった?」


彼は無言で頷いた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る