狼さんと狩人さん
空き缶文学
静かな出会い
果ては何もなく、先は国境を超えるゲートのみ。
暖かい気候でそよ風が心地よく吹く。
リンゴの木がいくつか、建物は跡形もなく、無人を極めている。
足元が白く胴体にいくにつれて灰色が混じる毛並みをもつ狼は、何もない土地に辿り着いた。
瞳は海のように澄み切った青色。
軍用のサイドバッグを胴体に装着して、お座りの姿勢で辺りを見回す。
一晩焚火を燃え切らした跡と、畳まれていないウグイス色のテントがあった。
狼は瞳孔を忙しく動かしながら近づく。
テントの傍には木箱が5箱、両手で抱えられるサイズの鉄コンテナが3個。
折り畳み用の軽量イスと銀色のミニテーブル。
ミニテーブルの上に置かれたリンゴが目に入った。
青い瞳を輝かせて足を速める、が、途中でピタッと止める。
テントから飛び出した軍用ブーツを履いた足が時折微弱に動く。
テントの周りを歩いた。
尖ったふさふさの耳をぴくり、と動かす。
「ぐごぐぉおぉお」
狼は姿勢を低くして、尻尾を下へ。
大きないびきがテントの中から聞こえてくる。
「ぐごっ……スー」
狼はまたミニテーブルに近づいた。
リンゴを大きな口で銜える。
太く鋭い牙でリンゴの皮をゆっくり貫通させたあと、ムシャムシャと容赦なく喰らう。
果汁も逃さず、しっかりとリンゴを平らげた狼はテントを覗く。
軍人が眠っていた。
背は平均的な成人男性で、黒縁フレームのメガネを額にかけている。
やや痩せ気味で、目にうっすら隈ができていた。
指先に触れる距離に置かれたシングルアクションの軍用自動拳銃。
アンバランスに積んだ厚さが異なる本。
なんとも散らかった小さな世界に、狼は鼻息を漏らす。
楕円形の金属板でできた認識票が手首に巻き付けてあり、狼は鼻先を近づけた。
コニー・アーベル
狩人番号1056
マッケナ軍
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