鏡の世界と時の剣舞

エリナ

第1話 禁じられた倉庫

町の一角にある小さな家の中で、小学校を卒業したばかりの中学一年生、親友のカイとミナが、今日の冒険の計画を立てていた。


「ミナ、今日はどこに行こうか?」


「おじいちゃんの家に行って、あの大きな倉庫を探検しようよ!

 前に行ったときに見つけた古い地図があるでしょ?

 あれが示している宝を見つけに行こう!」


カイは眉をひそめながら考えた。

ミナの好奇心に引きずられて、何度か面倒なことになったことがある。

だけど、ミナの笑顔には、いつも抗うことができなかった。


「うーん、でもおじいさんからは、倉庫に入らないように言われているんだよな。」


ミナは笑顔で言った。


「大丈夫だよぉ。

 それに、ほら、冒険が待っているんだから!」


「わかった、でも何かあったたら、すぐに退散するよ。」


ミナは喜んでカイに頷き返した。


「もちろん!さあ、行こう!」


電車は静かに駅を出発し、窓の外には田舎の風景がゆっくりと過ぎていった。

向かい合わせに座るミナとカイ。

ミナは窓の外を見つめながら、心の中で妄想に耽っていた。

ミナはアニメのキャラクターと戦うシーンを、妄想する癖があるのだ。

一方、カイは本を開いて黙読していたが、ミナの視線が窓の外ではなく、どこか遠くを見つめていることに気づいた。


「ミナ、またアニメのキャラとイメトレしてるの?」


ミナは頷き、自分の世界から現実に戻ってきた。


「うん、そう。

 新しい技を考えてたんだ。

 剣道の全国大会の時みたいに、どきどきするけど面白いよ。」


カイは笑顔を浮かべながら言った。


「それ、すごいね。

 ミナが、剣道の全国大会で準優勝できたのもそのおかげかな?

 僕には全然想像できないよ。」


ミナはカイに向かってにっこりと微笑みながら言った。


「それなら、今度私の妄想の世界に一緒に来てみる?

 それなら新しい視点が見えるかもよ。」


カイは少し驚きながらも、興味津々に頷いた。


「それ、面白そうだね。

 今度ミナの妄想の世界に旅行しにいこう。」


それぞれの心は、これからの一日への期待で満たされていた。

そして、電車は二人をゆっくりとミナのおじいさんの家へと運んで行った。



この日は、二人にとって運命的な日となった。

ミナのおじいさんの家へ足を踏み入れる。


「おじいちゃ〜ん、こんにちわ〜。また遊びにきたよ〜。」


家は静寂に包まれていた。


「ミナ、見て!」


カイはミナの手を引き、開いた倉庫の扉を指さした。


「倉庫の扉、開いてるよ!」


ミナは一瞬、信じられないという顔をしたが、すぐに驚きから興奮へと表情が変わった。


「おじいちゃんが言っていた通り、倉庫には何か秘密があるのかもしれないね。」


二人はお互いを見つめ、迷いはすぐに消えた。このチャンスを逃す手はない。

二人は手を取り合い、胸を躍らせながら倉庫へと足を進めた。

倉庫の中はとても広い。

古い家具、不思議な装置、ほこりに覆われた本など、さまざまなものが置かれている。


だが、視線を奪ったのはそれではなかった。

中央奥にあった、大きな鏡だった。


「あれ?ミナ、この前きた時、あんな鏡あったっけ?」


それは、暗く薄暗い倉庫の中、自らを主張するかのような豪華な装飾のされている、等身大ほどの大きさのある鏡であった。


ミナがニヤリと笑顔で微笑みながら言った。

「カイ!今日のお宝物見つけたね!」


ミナとカイが鏡に近づくと、その雰囲気が一変した。

鏡の銀色の表面がゆっくりと輝き始め、二人の足元からほんのりと冷たい光が広がっていく。

ミナは驚きのあまり、一歩後ずさった。


「何これ、すごいよね、カイ!」

ミナが叫んだ。

ミナの目は大きく広がり、興奮で輝いていた。


一方、カイは驚きつつも冷静さを保っていた。

「ミナ、気をつけて。これはただの鏡じゃないようだよ。」


その時、鏡の表面は二人の姿ではなく、異なる風景を映し出した。




それは輝く緑の森、美しい草原、そして遠くにそびえ立つ壮大な城の光景だった。

その風景は二人の知っている世界とは全く異なり、何か神秘的で幻想的な雰囲気を放っていた。

二人は鏡の前に立ちすくみ、驚愕と好奇心に心を満たされていた。



「ミナ、これはどういうことだろう?」


カイは、声に震えが走るのを抑えるために無理に落ち着いた口調で話した。

目は鏡の映像に釘付けだった。


ミナは、カイが話す前から何かを考えていたようだった。

目は一瞬、倉庫の中を見渡し、続いてカイに移った。

カイはミナが何を考えているかを読み取れなかった。

ミナは一歩前に出て、自分の手を鏡に伸ばした。


「ミナ、待って!」


カイの声に反応してミナは立ち止まったが、目はまだ鏡に釘付けだった。


「何をするつもりなの?」


ミナはカイを見て胸を張った。


「何があるのか確かめるしかないじゃない?

 怖い?」


カイは少し困惑した。

カイは頭で物事を考えてから行動するタイプだ。

しかし、いくら考えてもこの状況は理解できなかった。


それに対してミナは、直感と行動力で物事を進めるタイプだ。


「うーん、怖いけど、ミナが行くなら僕も一緒に行くよ。」


カイは固く頷いた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る