学問のすすめ(現代語訳版)読書感想文

愛和 晴

第1話

「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず。」この有名な一言で始まる『学問のすすめ』という本は、偏に学問を、特に社会に役立つ実学を、国民が須らく修める努力をすることの必要性について説いている。

福澤先生曰く、人間の権理は平等であり、現実の状態に拘わらず、他人に侵害されることがなく、政府は人民を国法を持って治め、これを遵守することは人民の責任であるとしている。法の内容は、人民がどれだけ物の道理を知っているかにかかっており、漢学や洋学、実生活や実際の経済を通じて学べることなど、全てを指す「学問」へ取り組むことが肝だったのだ。

 この本が執筆された当時は、明治維新に伴って西洋の文化や技術が流入し、日本が急速に発展している最中であった中であった。福澤先生は西洋の文明の素晴らしさを讃えてはいたが、その全てを迎合していたわけでは決してなく、むしろそのように西洋を盲信する洋学者に対しては批判的であった。何かとつけて日本を貶めて西洋を持ち上げる風潮が流れていた当時に、視点や立場を変えて物事を捉え、疑うことで、その長短を精査すべきだとした。

 このように福澤先生は西洋の文化を受け入れることに関して慎重な態度を示していたが、同時に、技術を積極的に取り入れて、早急に西洋から独立することを目指していた。鎖国から解き放たれ、外国との交際が開けたことによって露わになった、日本の独立の薄弱さを憂いていたのである。そのために物質的な整備を進めることも肝心であったが、福澤先生が思案していたのは国民が内面的に成長し、独立の気概を持つことの重要性だった。それぞれが愛国心を持ち、人民と政府が一体となることが、日本の独立に必要だったのだ。それゆえ一貫して人間の権理の平等を主張し、人々に自力で生活するよう促し、学問を追究することの大切さを説き続けていたのだろう。

今の日本は経済的に豊かで、他国と対等に渡り合える。道徳的に優れていて、治安も世界の中で抜きん出て良い。結果として福澤先生が描いた理想の日本に成長したと言えると私は思う。この何百年先を見通す力は凄まじさは歴然としていて、現代を生きる我々も参考にできる教えがこの本には沢山ある。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

学問のすすめ(現代語訳版)読書感想文 愛和 晴 @aiwasei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る