第7話ーー通話ーー
「部長、今日は大切なお知らせがあります」
部室で顧問の先生が一礼します。
「この学園討伐部でありますが、来年の20XX年3月31日(X)15時をもちまして、サービスを終了させていただきます」
先生は伏せ目がちで続けます。
「本日でリリース10周年。そんな日にこんな報告をするのは、誠に心苦しいのですが、残りの時間もこの学園討伐部で楽しい生活を送ってください」
マニュアル通りの笑顔を見せる先生。
「さて、10周年記念のイベント内容をドドンとお知らせしますね!」
「何言ってんだ、この先生」
「先生はセリフを読んでるだけなんだから、先生に文句言うのは筋違いよ」
部室が使われているので、各々の更衣室でビデオ通話を現在使ってコミュニケーションをとっているメンバー達。
映像付きの為、明らかにイライラしているヒメノ先輩となだめるスズ先輩、それを見て怯えている一年生ペアがいた。
「イベント内容って言っても、前のイベントの反復と復刻コスチュームとかばっかで、新しいの何もないじゃん」
画面越しでブーイングをするヒメノ先輩。
「好きなコスチュームが一枚確実に手に入る~、とか」
私が恐る恐る、イベントのいわゆる目玉を一つ口に出してみる。
「うちらの部長、コスなんてコンプしてるでしょ」
そうでした、と私は何も言い返せなくうなだれる。
「好感度大幅アップアイテムも配布されるみたいだけど、私達は全員カンストしてるから、好感度で解放されるストーリーも全部見てるし……」
「なんだこんなもんか~って、部長ログアウトしなきゃいいですけど……」
一年生組も溜め息をついてうなだれた。
「サービスが終了したら、私達、どうなるんでしょう……」
のっぺらぼうのあやなが表情はわからないが、低いトーンで言う。
「電子の波にのまれて消える」
メガネをくいっと持ち上げ、スズ先輩は答える。
「私達の存在というデータが消える。もちろん学討自体も」
「そ、それって痛いんですか?」
ハナコちゃんが悲鳴に近い声をあげた。
「わからない……それは経験者にしかわからないよ……部長のいる世界で言う、あの世ってどんなとこ?、みたいなものよ、その問いは」
私は胸の前に手をおいて口を開く。
「私達、死ぬんですね……」
とても重い空気が流れたそんな時、通話の中に先生が現れた。
「ログアウトされたわ、部長」
「あたし、呼ばれなかった……」
しゅんとして、パートナーであるセナちゃんがこぼした。
「お知らせを読んで帰ってしまわれました」
「そうですか……」
重い空気のままである。
「明日から部長が来るかどうか、見物だわ~」
大きく伸びをして、怒っているのかヒメノ先輩の通話が途切れた。
「ログアウトしたなら通話は終了ね、それじゃあ」
ヒメノ先輩をなだめに行くのか、スズ先輩も離脱する。
「それじゃ、解散解散!」
「お疲れ様でした」
一年生組と先生も追って消える。
最後まで残ったのは、私達二年生組だった。
「ねぇ、ゆま。また屋上で話しない?」
あやなは二人通話から直接の会話を申し出る。
私は考えもせずに、その誘いを受けるのであった。
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