スカートを履いたおじさんが通ります。

おじさん系女子高校生

　「おお、見事な斬りっぷりだなあ」

　１７歳の女子高校生、桜井桃花（さくらいももか）は、自室の小さなテレビで時代劇を観ながら、枝豆をほおばっていた。

　桃花には、いわゆる「女子力」というものがない。服装や髪型はテキトーだし、メイクなんてしたこともないし、食の好みはといえば枝豆とかたこわさびとかいったおつまみ系だし、愛読書は「人生を変える僧侶の言葉１００選」みたいなやつだし、恋愛への関心もゼロである。「男性らしさ」「女性らしさ」の概念がぶっ壊されつつある今日この頃の世の中ではあるが、それにしても、桃花のおじさん度合いはレベチである。その辺の本物のおじさんよりもこんなにおじさんみ溢れる女子高校生はたぶんなかなかいないであろう。

　しかし驚いたことに、桃花はめちゃくちゃモテるのだ。女子力には欠けすぎているが、裏表のないフレンドリーな性格に惹かれ、おじさん系女子高校生にギャップ萌えする人間は少なくない。しかし、当の本人は、「おじさんっぽさ」が逆に自分の魅力になっていることに全く気付いていない。むしろ、自分のことを「スカートを履いたおじさん」と揶揄し、自虐ネタ化している。そういうところもまた、知らず知らずのうちに多くの人々を魅了しているのである。