第89話 蘆花村組(四)
……状況把握だ。
まず、あんまるとビシュハーマンが対決中。増量し続ける髪の毛を斬り飛ばしながら制圧を試みているが……。
「ヤヨ・ビシュハーマン! 大人しく捕まりなさーい!」
「ひひひはははははは! 杏奈ちゃんたら乱暴ねぇ! そんなんじゃ立派な美容師さんになれないぞ~? かわいそうだからヤヨの血液ジュースサーバーに永久就職させてあげちゃう★」
「ごめんけどアタシ、夢はヒーローとお嫁さんだから断るね!」
状況は膠着している。
次に、ヴィクトリカと石田龍一。
「ンなァんですのッ!? この殿方! イケメンな上に強い! ご結婚されてますの? 収入は? ご職業は? ヤクザ? ヤクザですの? あらァそれってレディコミみたいで素敵ですわね!」
「黙れ」
こちらも、石田龍一を足止めするため、正面切って剣と拳で弾きあっている。【黒い羊】を出していないのは、制御不能で足止めには役立たないからだろう。だが、そのせいで決定打も打てない。膠着状態だ。
俺はフリーだが、背後に要保護対象。気絶した大人が二人。気絶していない子供が一人。無事に逃がさなければならない。
敵対勢力は、強すぎるヤクザが一人、髪を操る呪術師が一人、拳銃を持った老人が一人。あと見えないところで悪事を行っていると思われる、瞬間移動が可能な呪術師が一人。
「……どうする……?」
逡巡する。俺としては珍しいことに。
保護は出来た。意識不明の者もいる。全員担いで撤退するのが正解だ。幸い、まだミノタウロスの体表にはまだ異界障壁のゲートが開いている。そして、向こうのダンジョンには
撤退すれば、ヤクザ達が追って来ようが追って来まいが、三人の安全は保証されたも同然。
そして、あの次元障壁のゲートは、おそらく坂上銀五郎が安定させているはず。あれがなくなれば、撤退すら困難となる。
だが……ヤヨ・ビシュハーマンの存在が、決断を迷わせる。蘆花村組についても事情が気になるところではあるが、あの女は『呪詛溶液』の専門家だ。聞かなければならないことが山ほどある。
姫虎を救うために、確保したい。俺があんまるに加勢すればいいわけだが、しかし、そうなると三人を放置することにもなる。
俺のダイバースーツの裾をギュッと掴んで離さない、蘆花村清次郎をも、だ。
五秒にも満たない逡巡。視界の端に、するりと目玉くんが滑り込んできた。
『ひめこ:撤退しなさい、段蔵』
その下部、ホログラフィックディスプレイに、そんなコメントが流れている。わざわざ目立ちやすいように、マジチャまで付けて。
『ひめこ:撤退です。ヒーローとして、為すべきことをしてください』
奥歯を噛んで、清次郎を脇に抱えて、俺は叫んだ。
「撤退する! 各自、次元障壁に飛び込め!」
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