第25話 白ギャルデートニンジャ(一/四)
「よし、これでギルド認定は取れたな」
「だね☆ いよーっし、『迷宮見廻組』の旗揚げだー☆」
「え? 不合格に決まっているじゃないですか」
ダンジョンクリア後、ダンジョン内部にいる人間は入り口に排出される。
なので、東京支局の地下室に排出された俺達は、その場で配信をつけたまま喜んでいたのだが……、荻谷さんが「なにを言っているんですか」と真顔である。
え? なぜだ?
「安定したダンジョン攻略で、速度も申し分なかったはずだ」
「そうだよ! アタシら、かなり頑張ったんだよ!?」
あんまるも頬を膨らませているし、リスナーたちも不満そうだ。
『こんなに強いのになんで?』
『不合格なんて信じられない!』
『公権力の横暴を許すな!』
「なぜって、危険行為です。私は『逃げろ』と指示しましたが、加藤さんは従いませんでした。それ以外は満点でしたが、指示違反は一発不合格となりますので。……実力は足りていると思いますが、規則ですから」
『妥当。運転免許試験なら一発でアウト』
『そりゃそう』
『指示に従わない冒険者を許すな!』
「ちょっとリスナーくんたちさぁ、手のひらクルックルしすぎじゃない?」
あんまるが呆れ顔になる。荻谷さんは苦笑した。
「ただ、予定外のトラブルに関しては、渋谷ダンジョン側の問題です。出るはずのないミノタウロスが出て、しかもボスの座を奪ったわけですから。なので、試験中断の扱いにして、受験費用は全額返金にさせていただきたいです」
「……俺の旅費は? 補填してもらえませんか。伊賀からなんですが」
「伊賀……、ちょっと遠いですね。そちらは上司と相談してみないと」
『試験中止にしたんなら、交通費くらい出せよ』
『段蔵くん、伊賀なんだ。どの辺だろう』
『そりゃ加藤段蔵なんだから伊賀だろ』
『甲賀だと思ってた』
『リアルを漁るなリアルを』
参ったな。試験も不合格で、交通費が出ないとなると、本当にただ損しに東京まで来ただけになってしまう。
どうしたものか――と内心で焦っていると、地下室の扉が勢いよく開いた。
「荻谷君。それはちょっと、お役所仕事が過ぎるかもしれないなぁ」
そう言いながら入ってきたのは、スーツの男だ。
若々しい中年か、くたびれた大学生かのような、年齢の読めない風貌で、いかにも胡散臭い。片手に持ったスマホには、配信画面が映っている。……あれ、俺達の配信じゃないか?
「
支局長? 東京支局のトップか。左慈と呼ばれた男は人懐こそうに微笑んだ。
「や、荻谷君。お疲れ様です。そちらの『迷宮見廻組』のお二人も、お疲れ様。配信見てね、急いで来たんだ。いやー、強いねえ、十八代目。そっちの刀の子も。荻谷君、ギルド認定試験、合格にしちゃって」
「支局長、しかし規則では……いえ、わかりました。事務処理のため、先に受付に戻っています。またのちほどお会いしましょう」
荻谷さんが一礼して、去っていった。ふむ。
「……左慈支局長。俺達は合格でいいんですか?」
「ボスを倒してダンジョンを攻略完了したわけだからねぇ。いやー、せっかく遠くから出てきてくれたのに、ミノタウロス出現なんて不具合に巻き込んじゃって、申し訳ない。おじさん、その件についても話をしたいなぁ」
そして、ちらりと『目玉くん』を見る。
「……わかりました。あんまる、配信はここまでにしようか。諸君、見てくれて感謝する。また会おう」
「わ、わかった! じゃあ、今日はこれで! 明るく楽しい、あんまるのダンジョン配信でしたー!」
『おつ』
『なんかある流れだなコレ』
『配信に乗せられない話があるやつだ』
『おつー』
『またねー』
急ぎ足で配信を切って、更衣室で体を拭いて着替える。シャワーはないらしい。話が終わったら、近場で銭湯とか探してみようか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます