第17話 YOUは何しにダンジョンへ?(四/四)



 思わず、俺は出雲杏奈の顔をまじまじと見てしまった。


「……本当か?」

「あれでしょ、シュババッて印を結んでドカーンバリバリ! みたいな。アタシ、実はアニメとかマンガとか結構読むんだよねー。アタシ、『NITAMAGO』好きでさ! 忍者マンガのキンジトーってやつだよ、あれは」

「いや、そういうやつではなくて、本物の忍者というか……。アニメはよくわからんし、忍者の漫画もよく知らん」

「えー!? 忍者なのに!? じゃ、次、一緒にダイブするときに『NITAMAGO』貸したげるよ。ウチに全巻あるから。あ、でもかなり量あるんだよね。どうしよっか」


 言ってから、出雲杏奈は「あ」と気まずい顔になった。


「ダイブ、今回だけの約束だったわ。すまん」


 握り飯を一口かじって、「かまわん」と手を振る。


「……俺も聞いていいか。なぜダンジョンに潜る?」

「え? あー……。その、最初はさ、"ダイバーってなんかキラキラしてる!"くらいの気持ちだったんだケド」


 出雲杏奈は苦笑した。

 ダンジョンスキルによってダンジョン攻略は進化し、少人数でも、一般人でも安定して攻略できるようになった。

 しかし、配信という形式によって、手を出しやすくなったとも言えるのだ。出雲杏奈自身がそうであったように、安易に手を出して……、痛い目を見るものは、たくさんいる。


「でもね、段蔵くんに助けられて、思ったんだー。言ったでしょ? せっかく助かったんだから、続けないともったいないって」


 照れ臭そうに微笑む。


「あのときの段蔵くんは、ヒーローみたいだった。アタシも段蔵くんみたいになりたいなって思った。そんで、ダンジョンで困っている人を助けて回るの。そういうことをするなら、ギルドを作ってみんなでやったほうが、いいでしょ?」

「なら、俺をギルドに誘ったのは……」

「段蔵くんが、アタシがダイバーを続ける理由だもん。そりゃ、最初に誘うよ。断られたけどね」


 俺は……、迷っている。迷っている自分に、少し驚く。迷うってことは、心のどこかで惹かれているってことだ。

 断る理由を探すためにか、俺は「金にならんぞ」と呟く。


「ダンジョン攻略は、資源回収のための民間事業だ。ギルドが人助けをして謝礼を受け取るのは、違法になる可能性もある」

「段蔵くんは、アタシを助けたとき、お金のこと考えてた? 謝礼をもらうために助けてくれたの?」

「……いや、そういうわけではないが」

「うん。だから、そゆコトだよね。資源回収は、もちろんやる。でも、それはそれとして、困っている人がいたら助けてあげたい。見つけてあげたいの。自警団じゃないけど、そういうことができるギルドを作りたいんだ」

「巡回や警邏に近いか。見回りのような。つまり――迷宮見廻組か」

「いいじゃん、その名前。使わせてもらおうかな☆」

「ひとりでも、やる気か」

「もっちろん☆ アタシ、こうと決めたら止まんないから」


 それはとても羨ましいと思う。素直に。

 俺はいつも、姫虎に引っ張られてばかりだった。それでいいと思っていた。挑戦しないともったいない、とか。せっかくだからやってみる、とか。そういう考え方は、俺にはなかった。だが……。

 俺は立ち上がって、体を伸ばす。


「話し込んでしまったな。そろそろ帰るか。今日は楽しかった」

「ん。それじゃ、これで――」

「楽しかったから、次もあると嬉しいが。せっかくだ、どこかのギルドに所属したいな。いっそ、自分で起業に挑戦するくらいじゃないと、もったいない気もするくらいだ」

「――え?」


 口を丸くする出雲杏奈に、俺は右手を差し出す。


「そういうわけだ。これからよろしく頼むぞ、社長ギルドマスター

「……にひ☆ 杏奈でいいよ。アタシらは今日からバディなんだからさ」


 杏奈は俺の手を勢いよく掴み、握りしめた。



※※※あとがき※※※

多くの方に読んでいただけているようで、ありがたい限りです。

更新がんばるから応援してくれよな!

あと煮卵って黒ギャルのケツみたいでエロいよな。

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