第3話 お便りコーナー3

「さて、話も盛り上がってきたところで次のお便りと行きますか」


<コメント>

:話切り替えるの無理があるやろ

:キング達が意外と苦労人だと分かった

:ただのイケメンかと思ったら違った

:さっきから頭おかしいしかいってない

:ミコト様の時からこの人こうだぞ?

:見た目に騙されるな!


「えー、大阪府のお好み焼きはおかずさんから。好きです! 結婚してください、との事です。これにつきましてはごめんなさい。僕、奥さんいるのでそっち系のお便りは遠慮してます」


<コメント>

:じゃあなんで選んだし

:もう送ってくるなよという言質では?

:こんな人にガチ恋できる危篤な人がいるのか

:顔はいいから

:金も持ってるしな

:会話は一切通用しなさそう

:もしかして神籬ホトリさんですか?


「そうですね、彼女とは10年前から懇意にさせてもらってまして、僕の方から告白しました。ダメな僕を含めて好きっていってくれたので、その分を返していこうと思ってます。なのでビジュアルと財産目当てで来られる方はちょっと苦手ですね」


<コメント>

:惚気乙

:最近お休み多いのはそういう事でしたかー

:末長く爆発しろ


「爆発物のレシピをお望みかな? だったら最適なものがあるんだけど」


<コメント>

:やめろ!

:惚気への発言を真に受ける男

:そういうとこやぞ?

:こんなんでホトりん大丈夫かな?

:ホトりんかわいそう


「心外な。この爆弾は製作者の熟練度に見合った威力が出る。ダンジョンのモンスターにも有効で、なんだったらゴミ扱いされてるドロップ品から制作可能。お金がなくて自力で素材を取りに行く錬金術師にうってつけだよ」


<コメント>

:お、意外と神アイテム?

:素材は?


「ラットの牙2、ゴブリンの腰蓑1、ボロナイフ2を鍋で熱するだけだよ。化学変化で鉄の塊になるので、それを投げるんだ」


<コメント>

:素材は、まあゴミだな

:制作難易度幾つなんです?


「炸裂玉、難易度は3。ポーションの成功率を上げるお供にどうぞ」


<コメント>

:意外と良心的やな

:素材持ってたから早速使ってみた

:どうだった?

:モンスターが消滅した。ドロップなし

:草

:モンスタードロップは当てにできないのか


「それは熟練度が高すぎたね。敵のレベルに対して低い熟練度で程よく致命傷にできる。ちょうどいい熟練度だと消滅する。基本は敵を追い払うようだね。ダンジョン内で採掘中にきたのを追い払うんだよ」


<コメント>

:いや、草。ワイの熟練度5なんやが

:何と戦ったんだよ

:ゴーレム

:ゴーレムが消し飛ぶって何?

:武器がダメになるよりかはマシだろ


「どうせそいつゴミしか落とさないから平気でしょ」


<コメント>

:銅鉱石をゴミ扱いは草

:ごく稀に鉄鉱石落とすぞ


「だったら採掘のほうがいいよ。僕は採掘派」


<コメント>

:幸運の押し付けやめろ!

:きっと昔から幸運ゴリ押しやったんやろな

:改めてご結婚おめでとうございます!

:おめでとう!

:炸裂玉、作ったら送りますね!

:爆発物の配送はNG


「もしそうされてもいいようにカウンターのアイテムも考えてるよ。これの制作難易度は15だけど、壊れた武器や防具、ゴミみたいな素材から金属を取り戻す奴だね。ダメ元で金属回収したい時に知っておくといいよ。なんだったら配布する?」


<コメント>

:レシピ教えて!

:金属回収!? なんじゃそら

:錬成し直すと不純物混ざるしな


「溶解液、制作難易度15。雑草25、牛のフン30、清水100を鍋に入れてよーく混ぜる。酸っぱい匂いがしたら完成だよ。素材を入れるとぶくぶく泡立つから、泡が消えてから取り出してね。鉄すら溶かす液体だから取り出す時は……僕の方で掬うためのトングを用意しよう。ただこちらは溶解液とのセットだから単品での転売はやめてね。溶解液そのものは危険物だから取扱注意です」


<コメント>

:危険物の返礼品に危険物を送り返す男

:そりゃ殺害予告されたら対応とるでしょ

:その対応が無差別殺害予告なの草

:取扱注意なだけで使う人次第なんやで

:いや、武器屋的には嬉しいぞ

:そりゃ取扱注意を攻撃に使えばそうよ

:爆発物に重きを置きすぎてるけど、駆け出しにはお得な情報よ?

:受け取り方の違いなんよ

:悲しいなぁ


「ちなみに君たちの作った熟練度100以下の炸裂玉なんかで僕の命を取るのはちょっと難しいと思うよ? この炸裂玉を思いついた時にそれなりの対処法は考えてるからね。マイホームも炸裂玉を投げつけられてもびくともしない設計だ」


<コメント>

:なんでこの人宣戦布告してるの?

:凸する人はマジでするから気をつけて

:リアル凸待ちですか?

:草


「流石に凸は歓迎してないよ。新婚なので静かに見守っててほしいですね」


<コメント>

:その癖に喧嘩腰ですよね?


「やられたら法の許す限りでやり返すので覚悟だけはしておいてね。僕からホトリさんを奪う、傷つけるとなったら何するかわからないから」


<コメント>

:今の声、ゾクっとキタ

:マジトーンミコト様、怖っ

:冗談ですって、嫌だなー

:これ冗談通じない奴ですよ

:やるって言ったらマジでやる奴だ

:命が惜しかったら凸するのやめとけ


「と、まあ冗談はこれくらいにして。今日の放送はこれまで。新婚なので僕たちのことは温かく見守っててほしいね。ではまた次の配信で。槍込聖でした」


<コメント>

:お疲れ様でしたー

:今回も面白かったです

:ホトりんとお幸せにー

:冗談ですよ? 本気にしちゃいました!

:逆境で燃え上がる奴もいるからこの界隈怖い

:ミコト様一途だから凸はやめとけ

:エリキシル剤の実験材料にされるぞ

:されそう

:草


収録を終え、高まった興奮を抑えるべくポーションを一気に呷る。

その時の取り止めのないコメントに気分を悪くするなんて、まだまだだな。


「お疲れ様です、聖さん。先ほどのセリフ、胸に刻んでおきますね?」

「忘れてくれ……」

「無理です」

「全く。今日のご飯は?」

「トンカツですよ。聖さん好きでしたよね」

「おろしポン酢かけならありがたいね」

「もちろんご用意してますよ」

「やった」


会話を弾ませ、リビングに赴くとなんとも言えない顔の大塚くんが一足先に箸をつけてた。


「や、おかえり。息子さんはどう? 元気そう?」

「お前ら、俺がいても関係なくいちゃつくのな」

「大塚さんの気持ちが今ならわかります。好きになると周囲に見せつけたくなるものですね」

「そうなの? 僕そこんところ鈍いからよくわからないなぁ。詳しく教えてくれる?」

「けーー」


大塚君はこれでもかというほど顎をしゃくらせて、否定の言葉を口にした。

夜食は先ほどの告知通りトンカツだ。

おろしポン酢をたっぷりかけていただく。

塩やからしもいいけど、僕はこれがお気に入り。


脂っこいのは昔から好きだが、体重を落とす時にダイエットメニューに気をつけてからさっぱりめのメニューを気にかけた。

脂とってれば同じだって? こういうのは気分だから。


夜食を終えて、それぞれの時間の時。

大塚君から相談を受けた。


「なぁ槍込」

「あら明菜ちゃん。今の明菜ちゃんも槍込じゃないの。聖さんを呼ぶ時はお父さんかパパって呼びなさいって言ったでしょ」

「どっちも嫌だね! そもそも俺はこの体になるのに納得いってないんだ! だからお前のことはずっとライバルだと思ってるし、俺は俺だ」

「僕は別にどっちだっていいよ。君が日常生活で苦労しない方でいいさ。それで、相談て何?」

「今度さ、ここに友達連れてきていいか?」

「あら! お赤飯の出番かしら!」

「そういうんじゃねーよ! 息子だ、秋生がさ、錬金術を学びたいって。それで教えてやるにも専用機材もなんもねーだろ? ここでならあるし、ダメか?」

「別に全然大丈夫だけど……君が教えるの?」

「悪いかよ、俺だって腐っても錬金術師だぞ?」

「いいんじゃないかしら。この体になっても以前と同じように錬金術が扱えるか興味もありますし、ね?」


ヒカリから促されて了承する。

しっかし息子さんとすっかりそんな仲になってるとは。

てっきり遠目から見守ってるとばかり思ってたのに。

父親と同じ時みたいにグイグイ言って勘違いさせてなきゃいいけど。

まぁ、そこは保護者として見守ってあげましょうかね。


夜はコメントで茶化された分タップル愛情を注いだ。

翌日大塚君から寝不足であることを告げられたけど、僕らは素知らぬ顔をした。

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