されど空の青さを知る
第1話 お便りコーナー1
ここまで長いようで、過ぎ去ってみれば一瞬だった。
今日、この時を迎えるのは。
いったいどのような心境の変化があったか。
述べ始めればキリがない。
これは僕のスタートであり、僕たち家族の収入源。
そうなればいいな、と始めた企画がこれ。
「こんばんは、錬金先輩のバズレシピ。司会の槍込聖です。今夜も錬金術についての探究を深めていこうか」
錬金先輩のバズレシピ。
そんな名前で始めたこの企画は、バズそっちのけでみんなはどこからこの道に進もうと思ったか? そんなあれそれを雑談を絡めて聞き出す番組だ。
一応レシピも語るが、取るに足らないものに止める。
だと言うのに一回目のレシピはすごいバズった。
僕としては増血剤の投与し過ぎでむくんだボディをスッキリさせるのに作ったのに、世の女性は飛びついた。
月に一度の女性の日。それらの副次効果体が浮腫むんだそうだ。
ヒカリのお墨付きを貰っていたが、ちょっと飛びつき方が恐ろしくて萎縮しているのが本音か。
大塚くんもゆくゆくはあれのお世話になるんだろうか?
その前に癇癪を治めるのが先か。
<コメント>
:きちゃ!
:うぽつ!
:前回の配信は神回でした
前回も何もまだ一回しかしてないんだけど、評価が良さそうで何よりだ。
「ありがとうございます。今回は僕の事より皆さんのお話が聞きたいな。と言う事でたくさん頂いているお便りの消化をしちゃいますね」
自分の話は特別にせずとも、ここに見にきてくれる人はあらかた情報を集めてからきてくれている。
ただの錬金術師の新人配信者程度の認識なら、ここまで期待はしないだろう。
当初は見にきてくれるか不安でいっぱいだった。
でもヒカリ曰く、テレビに出た話題の月ない錬金術師、日本上位すら唸らせた錬金術師、禁断の賢者の石の制作者という話題が嫌でも付き纏ってるのもあって、こっちで宣伝する必要がないくらいだそうだ。
「えー、東京の渡部詩織様……しおりんさんですね、あの人普通に電話してくればいいのに。律儀な方ですね」
<コメント>
:しおりん、もっと日本代表の意識持って
:その気やすさがしおりんのいいところ!
:気やすさっていうかまんま推しを目の前にした俺らだしな
:女の俺ら
:《しおりん》君たちひどくない?
:本人居るやん!
:草
:ここで相談しろ!
:《しおりん》ここでのコメントは拾い上げられないから手紙書いたんだーい
:それはそう
:ここはコメントの流れ早いし
「まぁ、全てを拾いきれないのは事実。そこまで考えてくれたのなら嬉しいですね。では本題。以前しおりんさんが提唱なさった意識拡張ポーションに、手を加えるならどうするか? ですか……あまり人のレシピに手を入れたくはないんですが……だってそれをすると僕が嫌なやつになっちゃうでしょ?」
<コメント>
:そりゃあね
:頼まれないのにやったらそうよ
:それ、気になってた
:《しおりん》どんなことでもいいので!
「ふむ、本人たっての希望であるならば。そうですね、まずは意識の拡張をしようという試み、僕も思い至ったことがあります。やっぱり錬金術をやってると、脳みそが一個じゃ足りないことって結構あるんですよね」
<コメント>
:そうなん?
:熟練度100超えてやっとか?
:俺まだ40だし一個で平気です
「そのくらいだったら基礎の繰り返しがいいよね。でも熟練度が何をやっても上がらなくなる壁が必ずやってくる。それが99〜100の壁。僕はもう一回、199〜200に上げるときに経験してるね。ここまで来ると意識拡張どころか高速演算も必要になってね……話が随分と脱線してしまった。どこまで語ったっけ?」
<コメント>
:思考拡張も意味不明だけど高速演算?
:理解が追いつかなくて何言ってるかさっぱりだわ
:《しおりん》まだまだ拙者は未熟でござったか
:しおりん、どんまい
:この会話にかろうじてついていける業のものだぞ?
:ワイヒーラー、意識拡張で戦闘が楽に
:後衛はだいぶ楽になったよな
:ちな、ミコト様が作るとどんなのが出来るの?
「僕の意識拡張ポーション? 言っては何だけど副作用すごいよ? 僕が飲む前提だから前後不覚になるし、腕だけ動かせればいいやつだし」
<コメント>
:草
:一般向けですらないんか
:《しおりん》拙者も副作用たくさん出したでござるなぁ
:薄めて薄めてようやく服用可能に?
:あり得る
「取り敢えずレシピ出すね?」
直接パソコンの打ち込んで、これでよし、と。
<制作難易度105:意識拡張ポーション>
★素材①
玉こんにゃく一個
水600ml
練乳500ml【融合】5%(賢者の石あったら追加)
★素材②
里芋(すりおろし)一本
紫蘇の葉3枚
ナス1本【融合】5%(賢者の石あったら追加)
★素材③
モルタルスライムの触腕1本
ミノタウロスの角2本
素材①
素材②【融合】5%(賢者の石あったら追加)
<コメント>
:ん?
:一瞬献立かと思ったわ
:ナス? 玉こんにゃく?
:何だこれ
:《しおりん》何でござるか、これは……
:しおりんも頭抱えてて草
:俺たちには見えない何かが見えてるんやろうな
:練乳とか、かき氷でしか使わないだろ!
:素材①と素材②、それをまず教えてください
:当然のように催促される賢者の石
:制作難易度150だろ?
:熟練度150の人の血だから150以上定期
「素材①はホワイトスライムコア、素材②はマンドラゴラの代用素材です」
<コメント>
:は?
:は?
:は?
:は?
:《しおりん》は?
:は?
:は? ダンジョン素材って食材から錬成できんのか!?
:これって新発見では?
「錬金術って面白いよねー、僕はこうやって素材をいじくり回すのが好きでさ。要素を分解していって、あれ? これ代用できんじゃねって突き詰めた結果がこれ」
<コメント>
:ダンジョン素材錬成すんな
:こいつ何?
:《しおりん》訳がわからないでござる
:ランクBダンジョンのモンスターなんだよなぁ
:マンドラゴラの流通がしてないのに大手が万能薬作れた理由がこれか
:草
:これはマンドラゴラ生えますわ
「取り敢えず、見本品を10倍希釈したのをプレゼントしますのでご検証ください。先着で10名様」
<コメント>
:《しおりん》拙者は!?
「一応お便り主なので特別に希釈なしの送りますねー」
<コメント>
:《しおりん》ヒュー! 言ったもん勝ちぃ!
:その先は地獄だぞ
:まじか、希釈なしで地獄を選ぶか
:言うて、同じ錬金術師やし
:現場で戦闘してる人が飲むのに適してないやろなぁ
:10倍希釈引いた人、情報くれくれ
:まだ配る前なんだよなぁ
:もう終わる雰囲気だけど、これお便り一通目ってマジ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます