第44話 ミノル、腹をくくる

 隕石が衝突したときの対処法を考えることにした。

 が、そもそも対処法なんてあんのかって話ではある。

 ショーグンが頑張ってシェルターを作ってくれているが、シェルターごときでどうにかなるものなのか?


 もう少しちゃんと知らなければならない。

 隕石が衝突するとどのような状況になるか、そして、今回衝突すると思われる隕石の規模だ。


 ちょうど野菜のインターネット販売のために買ったノートPCがある。

 それにタカタカタカっと文字を打って検索してみた。


 なになに。

 隕石の衝突。直径10メートルの隕石が衝突したときのエネルギーは、日本に投下された原爆の数十倍。


 マジかよ。

 たった10メートルポッチの隕石で、原爆の数十倍かよ。

 想像以上に威力が高くてビックリだ。


 じゃあ、落ちてくる隕石の大きさは?

 たしかジャコビニ彗星って言ってたよな。

 続いて検索する。

 

 ジャコビニ・ツィナー彗星、直径約2キロ。


 2キロ!!

 ちょっと待って。

 10メートルで原爆数十倍だよな。

 2キロってことは、それの200倍だよな!?

 つまり原爆2000発分てことだ。

 ……これムリくない?


 いちおう

 2キロが二つに割れたわけだから、その半分か。

 それでも原爆換算で1000倍だ。

 しかも、1000倍なのはあくまで直径で計算した場合。体積で考えると、どえらい数字になりそうだ。


 実は淡い期待もあった。

 各国が一斉に核ミサイルを発射しすれば隕石を破壊できるんじゃね? 的な考えだ。

 どうやら、そんなレベルじゃなさそうだ。

 人類にどうこうできるシロモノじゃないよコレ。


 じゃあ、過去に大きな隕石が衝突したときはどうなったんだろう?

 恐竜が絶滅した要因とされる隕石だ。

 検索する。


 6600万年前、直径6マイル(約10キロ)の隕石が現在のメキシコに落ち、地球上の生物の75%が死滅した。

 隕石の衝突は、高さ数百メートルの津波と大規模な山火事を発生させる。

 また、数十億トンの硫黄が巻き上げられ、それがガスとなって太陽光を遮断し、地球は少なくとも20年間氷河期を迎えることとなる。


 隕石の衝突エネルギーは、原子爆弾100億個分にも相当した。

 周囲の大地を蒸発させ、その熱波は1500キロ先まで焼きつくしたと思われる。


 ……なるほど。

 こいつは絶望的だな!!




――――――




「ショーグン、おまえはこれまで通り秘密基地の整備を頼めるか?」

「はい、わかりました」


 やるべきことが見えてきた。

 恐竜が絶滅したときより被害は少なそうだけど、それでもマシレベルでしかない。

 いや、逆にマシレベルだからこそ、備えた者のみ生き残る。そんな未来が待っていそうだ。


 ぶっちゃけ、日本の近くに隕石が落ちた場合はオダブツだ。

 どうやっても助からない。

 だから、これは考えてもしょうがない。


 もし、幸運にも日本から離れた場所に隕石が落ちたとしたら。

 数年にわたって続くであろう氷河期を、どう乗り越えるかを考えるべきだろう。


 シェルターの整備はショーグンをまかせ、俺は食料と燃料の確保にまわろうと思う。

 エネルギー、食糧は絶対に尽きる。確保は早めにしておかないと。

 まだ、みんな知らないんだ。今なら皆に先駆けて備蓄していける。


 正直、みなに知らせずに自分だけ動くことに罪悪感がないわけではない。

 だが、知らせたところで誰も信じない。本気で言おうものなら、頭のおかしいヤツだと思われるに違いない。

 それに、そもそも秘密にしているのは権力者だ。日本政府もたぶん知ってる。

 それでも公表しないのは、都合が悪いからだ。

 いま、俺が喚き散らせば、口封じされる可能性だってあるのだ。


 自分と身の回りの人たちを守る。それが俺にできる限界だ。

 ……そうか。秘密基地に門。敵に備えてショーグンが作ると言っていた。

 あのときはゾンビ映画でも見たのかってバカにしてたけど、今なら理解できる。

 生き残った人々の中で略奪がおこる。そんな悲惨な未来がくる可能性だってあるのだ。

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