二章 地球に迫る危機。
第41話 別視点――オキュリス221型
品種改良BOX―オキュリス221型、それがショーグンの正式名称である。
子供の知育目的で作られたオキュリス221型は、製作者の思いがたくさん詰まっていた。
子供に受け入れられやすいようなユニークなフォルム。共に考え、学んでいけるような思考プロセス。そして、疑似的に作られた感情。
また、それだけではない。子供の危機に対応すべく特別な機構もそなえた。
危機がおとずれると特別な回路がつながり、使用者を守るべく行動するのだ。
そのための分不相応の大きな電源、ありとあらゆる種族に精通する言語と知識、生存に関するさまざまな技術が搭載された。
しかし、そんな多くの機能も、ユーザーからよせられた意見は否定的なものだった。
値段が高い。そんな機能いらない。言うほど子供は食いつかない。そもそも子供を守るのは親の役目だ。
さんざんである。
それを受け、品種改良BOX制作会社は、簡略化、低価格化へと舵を切った。
オキュリス221型は廃盤となり、現存するのは一台のみとなってしまう。
そしてその一台も、高すぎる旧式として、ながらく倉庫に眠ることとなった。
そんなオキュリス221型だったが、さまざまな偶然が重なり、地球へ運ばれることとなった。
だが、そこで事故が起こった。運んでいた商船の墜落である。
墜落の衝撃は、オキュリス221型に大きな損傷を与えた。
回路の破損と膨大なデーターの消失だ。
知育機能のため、すぐさま正解へと到達せぬよう作られた回路はさらに迂回を要し、危機に備えるべく搭載されたデーターも、ほとんどが消し飛んでしまったのだ。
事故を起こしたのは、オクト・キュノッポ。まだ駆け出しの若手商人だった。
オクト・キュノッポは焦った。このままでは約束の時間に間に合わないと。
ちょうどそこへ、一人の地球人が現れる。草刈実だ。
よし、こいつを使ってやれ。
チャンスと見たオクト・キュノッポは、草刈実に商品の積み込みを命じる。
その甲斐あって、さほど時間をかけず散乱した商品の積み込みを終えた。
ひと安心するオクト・キュノッポ。
だが、問題がひとつあった。自身の正体を知られたことだ。
口封じするか?
一瞬迷うオクト・キュノッポだったが、どうせ地球人はみんな死ぬ、いま自分が殺す必要はないだろうと思いとどまった。
それだけじゃない。オクト・キュノッポから見て、地球人、草刈実は善良だった。同情心もあり、彼にひとつの積み荷を与えることにしたのだ。
こんなものでも、ないよりかはマシだろう。
そんな気持ちとともに、オキュリス221型は草刈実へと渡るのであった。
※長くなったので分割。次話はショーグン目線で。
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