第187話 妹

魔力灯が青白い光を放つ広大な地下施設。

空気は冷たく、わずかに金属とオイルの匂いが漂っている。

ここは帝国の最重要機密が眠る場所——帝国魔法研究所の最深部である。

そして今、この場所で歴史を変える兵器が誕生しようとしていた。


中央に鎮座するのは機動ゴーレム・ガルガン。


高さ三メートルの漆黒の巨躯。

だが、これが普通のゴーレムとは根本的に違うことは誰が見ても明らかだ。

従来のゴーレムは基本的に土人形である。

その形は石造の様な複雑な形をしていたり、子供の粘土細工の様な形をしていたりしているが根本は一緒だ。

しかし、このガルガンは違う。

従来のゴーレムとは根本的に異なる設計思想が導入され、可動部が機械関節化されており、油圧ダンパーすらも装着されている。

そして、その機械的な関節は人間以上の柔軟な可動域を誇る。


そして、ボディ部分は今までゴーレムの素材として使えなかった金属を採用することに成功。

その金属も節々で貴重なミスリルを使用し、魔法伝導率を上げている。


黒く塗装されたその体は、通常のゴーレムとは一線を画す異様な威圧感を放っていた。

周囲には研究員たちが集い、忙しなく最終調整を進めている。


「術式制御、正常。」

「魔法火器システム、動作確認完了。」

「魔力刀身はどうか?」


技師たちの確認と報告が飛び交うたびに、ガルガンの眼が青く光を帯び、唸るように、わずかに駆動音が響く。


その様子を、帝国魔法研究所の局長であるカイルは満足げに見つめていた。


「ここまで、良くたどり着いたものだ・・」


カイルの目に宿るのは、静かなる決意と誇り。


ガルガンは、これまでのゴーレム兵器とは次元の異なる存在だ。

火器と魔法の融合、超高精度の関節機構、戦況を一変させる戦略兵器。

その力を証明する場として、カイルは聖王城での武闘大会を選んだ。


「まだ早すぎるかもしれんが・・・帝国の力を見せつけるには絶好の機会だ」


彼は静かに闘志を燃やしながら、格納庫を後にした。



帝国魔法研究所・局長室


深夜。カイルの部屋の灯りは消えない。

机の上には無数の魔導式の設計図が広げられ、彼は不眠不休で制御術式の最終調整を行っていた。


「・・・まだ微細な調整が必要か」


魔導ペンを走らせながら、彼は小さく呟く。


その時——

コン、コン。


扉を叩く音が響いた。


「・・・こんな時間に?まあよい、入れ。」


扉が開かれると、そこに立っていたのは一人の幼女。

帝国が誇る魔術師の一人にして、カイルの妹。

そして、その異名は——"帝国の闇魔女"。


「・・・アメリか」


アメリを見たカイルは、かすれた声で自分の妹の名を呼ぶ。


「兄さん、こんばんわ。こんな夜遅くまで、お疲れ様です。」


帝国の魔法研究所は最重要拠点に指定され、警備は相当に厚い。

そこに、まるで共に住む家で兄の部屋を訪れる様な妹。

だが、カイルは驚かない。

来たのが、帝国の闇魔女とまで呼ばれた妹ならば、勝手知ったる魔法研究所なら、容易く突破できることぐらい知っているからだ。


「今日は兄さんにお願いがあって来ました。」

「お願い?」


アメリは神妙な面持ちで一歩踏み出した。


「今回の武闘大会への出場は、おやめください。」


彼女の言葉に、カイルの眉がわずかに動いた。


「・・・何を言っている?」

「兄さんが研究していた兵器を出すのでしょう? 兄さんの研究の成果です。それは相当なものなのでしょう。 でも・・・無理です。」

「・・・無理?」


カイルの目が鋭くなる。


「兄さんの兵器が弱いわけではないのです。あの人たちが異常なのです。」


その言葉には、ただの忠告ではない、確かな恐怖が滲んでいた。


「アレは従来の物とはまったく違う!お前は知らないから不安なのだろうが、大丈夫だ。アレが量産の暁には、帝国にあだ名す輩達なぞあっという間に叩いてみせるわ!」

「兄さん・・・」


アメリは幼き姿で震える指先を絡めるようにして手を組み、胸の前でぎゅっと握りしめた。心の奥底からの願いが、形になって手の中に宿るように。


「お前こそ、どうしたと言うのだ?何があったんだ?」


カイルは小さな妹の姿を見て、体が震えるのを自覚する。


「・・・兄さん、私は大丈夫。ちょっと、いろいろ新しい経験をしただけです。」

「・・・なんだと?」


カイルは眉をひそめる。しかし、アメリはそれ以上何も言わず、ただ悲しげに微笑んだ。


「そうですか・・・兄さん、ここまで言ってもダメなのですね・・・」


そう言って、アメリは踵を返し、部屋を去っていく。

カイルはその背中を見送るしかなかった。


——本当に何があった?

——聖王城で、アメリは何を見た?


「おお・・・神よ・・・」


彼は思わず天を仰いだ。

そして、思い出してしまった。

アメリが去っていくその姿を。


モフモフの毛が生えたビキニを着て、柴犬の耳カチューシャをつけ、ほとんどお尻が見えている状態で、尻尾を振りながら歩いていく姿を・・・

カイルはガタガタと震えながら、ただひたすらに神に祈ることしかできなかった。


——神よ、どうかこの現実を否定してください・・・!


カイルの股間はどうしようもなく膨張して張り裂けそうになっていた。

そう、カイルはアメリの姿に非常に興奮してしまったのだ。

先日、50歳の誕生日を迎えた妹の幼女姿に・・・犬のコスプレをする妹に・・・どこかに挿入された尻尾に・・・


「ああ!私は!私は!・・・」


涙を流しながら、カイルはズボンのベルトに手をかけ、自分の赤黒く怒張するものを取り出し、握るのであった・・・

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