ヒイラギ君

 「はぁ、やっと完成した…今回はなかなか長く時間がかかったなぁ。」

森の木々がまた黄色や赤に色づいている。もうそんな季節だなんて。いやぁ、相変わらず時間が過ぎるのは早いなぁ。とはいえ去年の夏から色々ドタバタしてたから仕方ないのだけれど。それもとりあえず落ち着いたから一安心だ。

 「よっと…うん、これでいいか」

 物で溢れた小屋の中で、比較的綺麗でよく見える場所に、扉ほどの大きさの「作品」を飾った。

 「んー素晴らしい。過去一番の出来だなぁ。見ていて惚れ惚れしちゃうよ。」

 思わずムフフと笑みが溢れる。それもこれも「彼」のおかげだ。「彼」の体はとても素直で、切り開くのも加工するのも何一つ手間取らなかった。そして何より「作品」として美しかった。私が求めるものに今の「彼」は一番近いかもしれない。

 「でもびっくりしたなぁ。まさか『俺で作ってください』だなんてさ」

 てっきり適当な人間を捕まえてくると思ったのに、自ら材料を名乗り出るとは思わなかった。

 「… もう少し話したりできると思ってたんだけど…でもまぁ、あんな目でそう言われたら、私も断れないよねぇ。本当、参ったよ。昔っから私の作品が大好きなんだもんなぁ、ヒイラギ君は」

 頭を掻きつつ少し苦笑して「作品」に近づき「彼」の顔を見る。

 「作品」の中の「ヒイラギ君」の金色の眼はキラキラと太陽のように輝いている。今もまだ生きているみたいだ。思わず手を伸ばして黒い髪や頬を撫でてみる。

 ちゃんと生きていた頃とは違って、熱はないし声も返ってこないけれど…それでも「ヒイラギ君」はとても幸せそうな顔をしていた。

 「…うん、やっぱり1番綺麗だ」

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生のカンバス 月餠 @marimogorilla1998

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