第12話 愛、敵地に乗り込んで!(2)
「それで、
半分は義理で、でも半分はほんとうに心配で、
「いや」
とても平気な愛の返事。
「プリンパーティーやってね。あ。
何それ?
「土鍋で作ったでっかいプリンをみんなで分けて食べながら、それでこないだのマルシェの話とかして、それで帰って来た」
マルシェというのは、その「
それって。
「いじめ委員会」の趣旨と違うじゃん?
「わたしもプリン作って行って、みんなで食べたんだけど」
それって。
瑞城生に捧げ物を捧げよ、そしたら許してやる、と言われて、みじめな気もちで泣きながら寮の台所でプリンを作る愛!
萌える……。
いや。
事実なら萌えていてはいけないのだけど。
事実でも事実でなくても萌える愛が言う。
「あと、科学部の実験企画がこないだの歌合に変更になったときも連絡に行って来たよ、隣の瑞城の寮。マーチングバンド部の子が出て来て、実験の後より歌合の後のほうが演奏やりやすいから歓迎って言われた」
たしか、歌合のすぐ後が、その瑞城のマーチングバンド部の演奏だったはずだ。
そのマーチングバンド部はこの地域では知られた吹奏楽の名門部活らしい。
だから朝穂も聴こうと思っていたけど、部長の
道村先輩が泣いたのは、自分の短歌が古典文芸部のおふざけ短歌に負けたから、なのだが。
もう一人の三年生の
「だからさ」
と、愛はあいまいな笑みを浮かべた。
「最近のうちの学校って、わりと地域貢献とか言うじゃない?」
まあ、問題の
それで、経営者の人たちが、もっと明珠女が目立ってるところを見せろ、と言い、明珠女は大学から小学校とかまで経営としては一体だから、その目立ってるところを見せろという方針が高校まで回って来た、というところ。
なんか。
そういう話って腹が立つ。
そんなので、大学の先生が高校生相手に「心に翼を持て」とか説教に来てる余裕があるのか?!
「ところがさ」
と愛が続ける。
「そういう地域貢献とか言ったら、瑞城のほうが前からやってるんだよね。だから、そのたびに話し合いが必要でさ」
でも、
由己がアップルティーを飲んで、何か言おうとした。
その瑞城の内幕か何か?
でも、その前にドアをノックする音がした。
愛が立ち上がって行って、ドアを開ける。
ドアの外にいたのは……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます