第155話黒の大陸 ツール領を目指して

黒の大陸に到着した京太達は、小舟を隠せる場所を探す。




「あそこは?」




クオンのが見つけた場所は、周りを岩で囲まれていたが、

ポツンと砂浜になった場所だった。




「うん、そこにしよう」




海から小舟を上げ、岩場に隠した京太達は

海岸線から離れる。



そして、次の行動に移る。


「休憩できる場所を作ろうと思う。


 その間に、ラゴとフーカは、空から周辺を見て来て欲しい」




「うむ」




「はーい」




2人が飛び立った後、

全員で隠れ家になりそうな場所を探し始めたのだが

出掛けた筈のラゴとフーカが、戻って来た。




「主様、この森の奥に、家を見つけたぞ」




「集落じゃなくて?」




「うむ、これからもう一度、確かめて来る。


 少し待っているのだぞ」




ラゴは、フーカと共に飛び立つ。




暫く待っていると、2人が戻って来た。




「主様、廃屋で間違いない」



「家の中にも入ったけど、埃だらけで、人の住んでいる様子も無かったよ」



2人の説明を聞き、京太達は、廃屋に向けて歩き出す。


案内をする2人に場所を聞くと、周りを大きな岩や山に囲まれているとの事。




途中から、ラゴの空からの案内を頼りに進み、

廃屋のある場所に到着したのだが、

入り口らしき場所が見つからない。




「この岩の先にあるんでしょ」




「そうなんだけど・・・・・」




壁のように岩が立ち並んでいる周囲を、探して歩き続けていると、

シダのような植物が密集して生えている場所を発見する。




――なんか怪しいな・・・・・




京太は、その植物を掻き分けながら進む。


すると、隠された入り口を発見した。




「あった!」




その声が聞こえた仲間達は、急いで京太の元へと向かう。


京太は、入り口と思える洞窟の先に、光りが見えていた事から、

間違いの無い事を確信し、

仲間達と合流すると、そのまま足を進めた。




洞窟はそれほど長くはなく、あっさりと外に出る事が出来た。


そして、視線の先には、ラゴとフーカが見つけた廃屋がある。




空からラゴが降りて来た。




「良い場所だと思わぬか?」




「そうだね、此処で休む事にしよう」




京太達が廃屋に入ると、床には埃が溜まり、

ラゴとフーカの物だと思われる足跡が残っている。




「掃除が先だね・・・・・」




「そうですね・・・・・」




メイドをしていたサリーも、溜息を吐いた。




部屋の中に残っていた物を、一旦、アイテムボックスに収納すると、

廃屋から外に出て、水魔法が使える者達で、廃屋をまるごと洗い始める。




「この方が、早くていいね、服が埃まみれにならなくて済むし」




埃を水で流し終えた後、風と火の魔法を使い、温風を作り出し、

部屋の中を乾燥させた。


そして、作業を終えると、皆は、中へと入った。




「なんとか、住む事は、出来そうね」




「そうね、ここなら場所的にも問題無さそうだしね」




ソニアとセリカが会話をしていると、

奥に進んでいたイライザが戻ってくる。




「京太様、地下がありましたわ」




イライザの案内に従い、ついて行った地下室は、

思ったよりも広く、何も無いように思えたが

よく見ると、奥に扉がある。





「何か、あるのか・・・・・」




そう思いながらも、近づき、扉を開けると

椅子に腰を掛けたまま亡くなったのだろうか、

そのままの姿勢の骸骨を発見した。




「この家の人だったんだろうな・・・・・」




――きちんと、葬ってあげよう・・・・・




京太は、アイテムボックスに骸骨を収納しようとしたが、

その時に、指につけていた青い宝石の付いた指輪が目に入った。




「これは?・・・・・」




一度アイテムボックスに収納して、鑑定を試みる。




『始祖の魂』




『ヴァンパイアの王の証。


 始祖であるヴァンパイアの王が、自身の魔力を封じた指輪。


 この指輪をはめると、魔力量が増える。


 また、威力も上がる』




――これって、魔法の指輪・・・・・・

  でも、『ヴァンパイアの王の証』という言葉が、引っ掛かる・・・・・・




京太は、地下で発見した骸骨に、墓を建てて葬り

その後に、屋敷の壊れていた屋根や壁の修理を始めた。




ある程度、屋敷が住める状態にまでの修復を終えると

食事の準備を始める。



水は魔法で用意し、食材は、アイテムボックスから取り出す。



その後、食事を終えると、明日の予定を話し合い、早めに眠る事になった。




翌日、京太達は予定通り、ダクネス国のツール領を目指して出発する。


大森林を抜けると、草原が広がり、隠れるような場所など無い。




「ここで襲われたら、隠れる場所もないね」




「その時は、戦うしかないでしょ」




クオンは、気軽に答えた。




「確かに、そうだね」




京太達が、草原の中を進んで行くと、段々と緑が消え、

乾いた大地へと、変わり始めた。




「急に気温が高くなった気がするわ・・・・・」




「ええ、間違いないと思う」




ソニアとセリカは、装備を軽くし、服を1枚脱いだ。




「これなら、まだマシね」




セリカも頷き、先を急ぐ。


その後も歩いていると、乾いた大地へと変わり、

草1つ生えていない。




――ここからが、砂漠か・・・・・




「行こう」




覚悟を決めて、砂漠に足を踏み入れた途端、

先程以上の気温の上昇を感じる。




――気のせい・・・・・違うな・・・・・




京太が砂漠に足を踏み入れた時、

何か壁の様なもので、一瞬、阻まれたように感じた。




――あれって結界・・・・・だよな・・・・・




誰の仕業かは、分からない。


京太は、警戒を強める。




――絶対に、見逃さない!・・・・・・




感知魔法を使い、周囲を警戒しながら、砂漠を進むと

京太の感知に、何かが引っ掛かった。




「来る!」




京太の声に、仲間達が戦闘態勢をとる。


だが、周囲を警戒しているが、敵の姿が何処にも見えない。



「まさか、透明なんてこと・・・ないわよね・・・」



ソニアが、そう告げた時、地面が揺れた。



「下だ!」



その声に反応して、全員が回避行動をとった。


すると、先程までいた場所の砂が盛り上がり、魔獣が姿を見せる。




「ビッグワーム!」




ミーシャが大声で叫ぶと、足元から、別のビッグワームが姿を現し、

ミーシャを丸呑みにしようと、小さな歯が螺旋のように付いている口を広げた。




「ミーシャ!」




飛び上がっている為に、体勢を変える事の出来ないミーシャは焦るが

諦めているわけではない。



京太から受けた恩恵により、魔力の底上げをされていたが

それとは別に、今まで使うことの出来なかった属性魔力にも目覚めていた。


それを知ったミーシャは、その属性の魔法を、隠れて練習をしていたのだ。


ミーシャは、その属性魔法の詠唱に入る。




「我は、願う。


 この地の空なる存在よ。


 我に纏い、新たなる羽衣を授けよ」




――絶対に成功させる・・・・・・



その思いを込めて、言葉にする。



「フライ!」



魔法は、成功した。


ミーシャは、ビックワームの一撃から逃れると

再び魔法を繰り出す。



「今度は、私の番です、アイスランス」




ビッグワームの口を目掛けて放ったアイスランスは、

見事に口の中へと入った。


そして、体の内側から、皮膚を貫き、砂漠に突き刺さる。



痛みに、砂の上で暴れるビックワームだが、

体をアイスランスで、固定されている。



もう、逃げることは出来ない。




「止めです、ウィンドカッター」




ウインドカッターは、ビッグワーム切り刻む。


切り裂かれていく度に、傷が増え、

最後には、身体が2つに裂かれて、絶命した。




「・・・・・勝ちました」




ミーシャは、もう一体のビッグワームを倒す為に、仲間のもとに向かったが、

既に京太が倒しており、アイテムボックスに収納した後だった。




「・・・・・・まだ、修行が足りないようです」




ミーシャは、京太を眺めながら呟いた。




京太は、ミーシャが倒したビッグワームもアイテムボックスに収納した後、

周囲の探索をし、敵がいない事を確認する。




「もう、いないみたいだね」




その言葉に安堵し、仲間達は、再び、砂漠を進み始めた。


砂漠の中を進んでいると、遠くに壁が見える。




「主様、わらわが確認してくる。


 少し、待っているのだ」




ラゴは、空に上がり、偵察に向かう。




その間、日陰を作り、待機する京太達。



暫くして、戻ってきたラゴは告げる。




「人の街だぞ、どうするのだ?・・・・・」




京太は、決断を迫られる事になった・・・・・・。




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