ぼくと比翼と量子力学

吉野諦一

プロローグ

調査報告書_20XX1130.docx




    ************



 ■■■■■■■に関する調査報告書(一)


 標記の件について、下記の通り報告するものである。


 調査概要


 私立■■■■学校に在籍する生徒■■名を対象とした通称『■■■■事件』に際し、最も関わりが深かったとされる■名の身辺を調査した。

 なお現地における調査は諜報員■■■■(以下、甲)と■■■(以下、乙)の二名により実施。


 調査詳細


 以下は調査対象である五名に加え、諜報員が要注意人物と見做した一名についての調査結果である。


対象者氏名 ■■■■

生年月日 二〇XX年■月■■日(満■■歳)

【中略】

調査所見

 ■■県教育委員会の調書によれば、対象は『■■■■事件』の主犯格とされている。聴取内容を見る限りでは自然な成り行きであり、当人にも釈明の意思はないものと見られている。しかしながら、甲が他の生徒から詳しい事情を聞いたところによれば、対象の行動は普段の素行とも一線を画すものであり、学校職員及び教育委員会の結論とは若干の齟齬があると言わざるを得ない。本人にも事情を聞くべく甲が接触を図ったところ、対象は頑なに話そうとせず全面的に拒絶される結果となった。


【略】


【略】


対象者氏名 ■■■■■

生年月日 二〇XX年■月■■日(満■■歳)

【中略】

調査所見

 『■■■■事件』の被害者とされている人物。実際に彼女が■■■■で■■■を受けていたという目撃情報は多数存在しており、事件においてその立場は疑うまでもない。また、事件後は二か月の不登校を経て学校に復帰しており、現在は所謂保健室登校ではあるものの、登校自体は問題なく継続している。甲による接触にも好意的な反応を示したが、『■■■■事件』に関する話題に触れた途端、取り乱して対話が中断された。甲はこれを意図的な反発と捉え、乙による客観的な状況分析も併せて、何らかの事実をひた隠しにしていると結論付けた。


対象者氏名 ■■■■

生年月日 一九XX年■月■■日(満■■歳)

【後略】


対象者氏名 ■■■■

生年月日 二〇XX年■■月■■日(満■■歳)

【中略】

調査所見

 甲が『■■■■事件』に関する諜報活動を継続する中で名前が挙がった人物。初期段階の調査対象には含まれないものの、『■■■■事件』において決して少なくない関与が疑われたため、ここに追記する。

 対象は前述の四のクラスメイトであり、事件発覚前から親交が深かった人物として知られている。同様に親交のあったクラスメイトは他にも数名存在しており、対象が特別親しかったという意見は得られていない。しかしながら、一の取り巻きであった二と三に対象の名前を挙げて尋ねたところ、事件前後に何度か姿を目にする機会があったと述べている。直接的な関与はなかったものの、一が対象を警戒、あるいは恐怖しているような言動を取っていたことが彼らへの調査で明らかになった。

 以上のことから、対象が一に何らかの働きかけを行い、四に対する■■■を促したのではないかと推測する。あくまで可能性を示唆するものではあるが、この仮説を反証できるだけの情報は得られなかったため、追って調査を必要とするものとしてここに記す。


 本調査書の記載事項により、六への詳しい身辺調査、あるいは直接の聴取が事実究明のために必要不可欠であるとクライアントによって判断された場合、現場に駐在中の諜報員は引き続き調査を続行し、『■■■■事件』の重要参考人として六へ協力を要請するものとする。



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