第4話 ザリッとした幸せ

ぼんやりとした意識の中、目が覚めた。夜だということはわかる。あと、どこかのベッドに寝かされているということも。


夢だったのかしら?まどろむ意識の中で思う。


おでこにぷにぷにとしたものが触った。


この感触には覚えがあった。肉球だ。


「ふふ、クロ。まだご飯じゃないよ」


小さい頃に飼っていた猫。それがなんで今わたしのおでこに触っているのか?そんなことを考えることもない。夢と現の境界を、ゆらゆらと行ったり来たりていた。


クロはわたしが引き取られていく時に、捨てられたと聞いた。


悲しかった。クロのことを思って、何度も泣いた。昔住んでいた家の前でだれもいないのに鳴き続ける姿を幻視した。


「だいじょうぶ」


頬に流れる涙をザリッとした感触がなめとった。


不快な感じはしなかった。大丈夫なんだって思った。ただ安心感に包まれて、また眠りに落ちた。

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