廃神社の白蛇様

かいさんたらこ

不思議な出会い

燦々とした太陽が私の顔を焼いていた。とても熱く、全身から浮き出た汗が落ち、アスファルトに染み込んでいた。何もする事がなく、ただぶらぶら散歩をしていて、昼頃になりそろそろ帰ろうか、という時にそれは起きた。


そこには、木々に覆われた神社への階段があった。幼かった私はそこに好奇心で足を踏み入れた。神社に向かう途中は不思議と涼しく、それと同時に妙な恐怖に襲われた。それは階段を登って行くたびに強くなっていった。登り終える数段前に、妙な恐怖が消えた。当時の私は不思議に思ったが、特に気にせず進んでいった。そして、登り終え、前を向いた時の光景に目を奪われた。



そこには、ショートカットの白髪で背丈が150あるかないかぐらいの身長の少女が立っていた。立っていた、というより、佇んでいたという表現の方が正しいだろう。彼女に興味を持った私は声をかけてしまった。


「ねぇ、何してるの?」


すると少女はこちらに振り向き、赤い目でこちらを見て少し口角を上げ、こう言った。


「んーとね?落とし物を探しているの。」


「落とし物?」


「そう、落とし物。」


当時の私はそのことに何の疑問も抱かなかった。


「こんな所に、何を落としたの?」


心にあった疑問を少女に投げかけた。


「大事なものだよ。とっても・・・・ね。」


「ふぅ〜ん。」


すると、少女はこんな事を言ってきた。


「ねぇ、貴方も一緒に探してくれない?」


この時、何故か蛇に睨まれたような恐怖感があった。その時は気のせいだろうと思い気にしなかった。少女のお願いは特にやる事がなかったので、その手伝いを受諾した。


「いいよ。それで、その落とし物はどんな形をしているの?」


少女は少し困った顔をしながら、答えた。


「えぇとね、説明が難しいんだけど、勾玉みたいな形をして、緑と青色が混ざったような色をした、石を探してるの。」


石を探しているなんて珍しい、と思いつつ一緒に探し始めた。


そこから20分ぐらい経った時だろうか。少し、退屈になってしまい、少女に質問をした。


「ねぇ、君はどこから来たの?」


草っ原の中石を探しながら質問した。


「わたし?わたしはね、遠いところから来たの。」


その言葉に驚いた。私の村の周りには、田んぼしかなく、他に何もない、言うなれば田舎になる。その田舎に旅人が来るなど滅多いない事だからである。


「へぇー。こんなド田舎に来るなんて物好きだね君。」


少女は少し怒った顔をしながら言った。


「田舎だからこそだよ。のどかで静かで都会みたく空気も汚れてない。いい町じゃん。」


そう言われて、少し嬉しくなった。


「そうかな。」


「そうだよ。」


また少し、静寂な時間が来た。少し経った後、少女はいきなり立ち上がった。


「どうしたの?」


「ん?もうこの場所にはないから、移動するの。」


「まだ、半分ぐらいしか探していないのに何で無いって分かるの?」


少女はこう言った。


「君が来る前に半分は探していたの。」


「そうなんだ。ところで、次はどこ探すの?」


「ん?次はね、神社の中を探すの。」


いきなり、神社の中に入るというので驚きで反射的に言葉が出てしまった。


「えっ、神社の中って入っていいの。」


「うん。この神社は廃神社だしね。」


その時、背中に冷たい汗が伝っていくように感じた。


「・・・・それじゃ、行くよ。」


「あっ、待って。」


急いで少女の後を追いかけていった。


神社の本殿の中は、普通の神社よりは狭く少し古臭いが、まだ、生活感が残っている感じである。


「わたしは、右の方を探すから、君は左を探して。」


「うん。わかった。」


タッタッタっていう足音が本殿に響いていた。


左側を見て見たら、ふすまがある部屋と奥に木のドアで出来た部屋がもう一つあるだけだった。


最初に左側のすぐそばにある、居間に入った。ふすまを開けた時、机とタンスと天井に電球があるだけだった。


他には何にもない。寂しい場所だった。


まずは、机を見てみた。机の上には何もなく、ただ、ポツンとそこにあるだけだった。


次にタンスを見た。四段構造なっていて、取っ手がついており、引っ張って見ると問題なく動くようだった。


タンスを一段、一段見て見たが、特にこれといったものはなかった。


次の部屋に行こうとして立ち上がった瞬間、足が滑り転んだ。すぐに立ちあがろうとしたて、顔を左側に向けてたら、机の下に紙が貼ってあった。


なんだろう?と思い剥がして、読んでみた。


"神社の裏手の・・・・の中に・・・・が隠されている"


と書かれていた。・・・・の部分は消されていた。というか、塗りつぶされていた。


普通なら、こんな紙切れ・・・と思っていたけど、この時だけは、妙な雰囲気がこの紙から伝わってきた。


その時、ふすまが勢いよく開けられた。それにビックリして、声が出た。


「うわぁ!」


「ん?どうしたの?いきなり大きな声出して?」


ふすまから出てきたのは少女であった。


「いや、勢いよくふすまが開かれたからビックリしただけだよ。・・・それより、そっちの探索は終わったの?」


「うん。こっちには、洗面所と風呂だけだったから。」


「そうなんだ。」


「ところで、そっちはなんか見つかった?」


そう言われて、さっき見つけた、紙がある事を思い出した。


「こっちはこれだけだったよ。」


そういって、少女に紙を渡した。


「なるほど。」


少女は紙に書かれている文章を読終えた後、こちらを見た。


「もう一つ部屋があったよね?そこに行こうよ。」


「分かった。」


そう言われて、私は立ち上がった。そして、ふすまをあけ、廊下に出た。そうして、奥にあるもう一つの部屋に行ってみた。


部屋の前までくると異様な空気に襲われた。中から呻き声がかすかに聞こえてくるようだった。


部屋を開けよう木のドアを開けようとした瞬間に、横から腕を掴まれた。


「うわぁ!」


いきなりの出来事に、私は驚いた。手の方向を見ると少女が腕を掴んでいた。そしてこう言った。


「貴方は開けちゃダメ。」


そう一言だけ言うと、私の手をどかし、何かを唱えていた。


今思えば、お経とかだったんだと思う。


5分ぐらい経った後、呻き声は止んで、異様な空気はなくなった。


「さ、入るよ。」


少女はそう言うと、木のドアを開けた。


ギィィィ


木のドアを開けて、そこにあったものを見て驚いた。



そこには、御札が巻かれているスコップがあるだけだった。


「えっ、これだけ?」


「そうみたいね。」


すると少女は、スコップを手に取った。


「そのスコップ大丈夫なの?」


「何が?」


「呪われてるんじゃないの?」


「あぁ、その事。大丈夫、祓ったから。」


「そうなんだ。」


どうやって祓えたのかは聞かなかった。


「これで神社の中も探索し終えたよね?」


「うん。そうだね。」


「後、探すところなんてある?」


私がそういうと、少女は紙を見て、何か思いついたように言った。


「この神社の裏、探してないよね?」


「えっ、うん。」


「そっか。それじゃ、この神社の裏に行こうか。」


「分かった。」


タッタッタッ


神社を出ると、周りは夕暮れだった。そこまで長い時間ここにいたのか、という事に驚愕した。景色に見惚れていたら、彼女が、少し遠くに行ってしまった。


急いで彼女について行くと、神社の裏手についた。


彼女はこちらを向き、スコップをこっちに向けていった。


「貴方、ここら辺掘ってみてよ。」


「え、君が掘ればいいんじゃないの?」


「いやー、腕が疲れちゃって、お願いしてもいい?」


少女は申し訳なさそうに頼んできた。


「そういう事ならいいよ。」


「ありがと。」


私は、スコップを借り、歩いていた。丁度居間の後ろ側に着いた時に、体が無意識にその真下を掘りはじめた。


ある程度掘っていくと、掘った土の中から、青と緑の色をした勾玉のような石が出てきた。しかし、



割れていた。


真っ二つに割られていた。


その石を拾い上げ彼女に持っていった。


「それは!」


彼女が驚いた顔をしてその石を見ていた。


「うん。見つかったよ。割れていたけど。」


「ううん。割れていていいの。」


「そうなの?」


「うん。そういう物だから。」


少女は嬉しそうな顔をしながらこちらに言った。


その時、遠くから音が聞こえて来た。


ゴォーン ゴォーン


「あ!もう6時だ!ごめん、もう帰らなきゃ。」


「そうなの。ありがとね、わたしの大切な物を見つけてくれて。」


「大丈夫。こっちもいい体験ができたから、ありがとね。」


そう言うと、少女は笑顔を浮かべていた。


「それじゃ、バイバイ。」


「うん。バイバイ。」


別れの言葉を告げて、私は階段を降りていった。その時は、あの登っていった時の恐怖感は消え、涼しい風と蝉の鳴き声が聞こえて来ただけだった。


家に帰ったら、凄く怒られてしまったが、この1日は忘れたくないと思った。


その日の夜、母親に今日会った少女のことをぼかしながら伝えた。


すると母親は、


「それ、白蛇の神様じゃないの?」


と言った。


その訳を聞くと、


「昔、この辺りには豊穣の神様がいるとされていたの。その神様は白蛇の姿をしていたはずだから。」


「なんで知ってるの?」


そう聞くと


「私も昔、似たような事があったから。」


「へぇー。」


その言葉に驚いたが、深くは聞かずその日はそれで終わった。


翌日、神社があるところまで行ってみたら、神社はなく、そこに道祖神があるだけだった。あれはなんだったのか、分からないが、一つ分かることがあるとすれば、彼女は旅行者ではなかった、と言うことだけだ。母親が言ってる事が本当なら、きっと、白蛇の神様か、妖怪かどっちかだろう。



それから20年の月日が経った。あの周辺は都市開発の影響により、昔の面影は無くなってしまった。悲しいと思ったが、これも時代か・・・・と感じてしまった。次、実家に帰る予定があったら廃神社のところにあった道祖神にお参りでもするか。もしも、また会えたら、また一緒に探し物でもしたいな。


そう思った。











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廃神社の白蛇様 かいさんたらこ @FUOGTK

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