リトル・モンスターズ!
桜咲 枕
第1話 「はじめまして」と「驚き」と
港から運ばれてきた潮風に、朝早くから起きて気を引き締めて結ったポニーテールがいたずらに揺られる。校門横の椿は凛々しく花を咲かせていた。
チューリップが植えられた花壇の上で二匹のモンシロチョウがヒラヒラと踊っている。恐らく手作りの花壇には拙い文字で「化粧島小学校」と刻まれていた。
パリッと鳴りそうな新調のスーツに、どこからか飛んできた赤い花びらが幼い子どものようにくっついた。
玄関まで続くアスファルトの坂道は所々ヒビが割れ、ヒビからは本島でもよく見るような雑草が顔を出していた。肝心の校舎も、黒いシミや穴ぼこが目立つ。
…この辺り、手入れはあまりされていないようだ。
無意識に握っていた手に力が入る。私が、新人の私がこの小学校で先生になるんだ。私の教師人生は、ここから、この島から始まるんだっ!
「おーい。こっちですー!笹原せんせー」
玄関で優しそうなおじいちゃん、正しくは化粧島(けしょうじま)小学校の校長、三浦校長が大きく手を振っていた。
その後ろには男女五人くらいの生徒が立っている。いっしょに手を振ったり、校長の後ろに隠れたりしている。身長から見て、年もバラバラだろう。
なんだか楽しい日々が始まりそうだ。
「おはよう、君が新任の笹原さんね」
「はいっ、一年目ですが、馬車馬のように働かさせていただきますっ」
「はっはっ、元気でよろしいですね」
「ありがとうございます!そういえば、他の生徒さんたちはどこに……」
「ここにいる子たちで、全員です」
「ええっ、五人っ!?」
思わず手のひらを校長に見せつけてしまった。潮風によって青葉が大きくざわめきだす。その様子がなんとなく、私の心境を表しているように思えた。
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