突然ですが勇者死ね。

きゃどう

第1話 突然ですが勇者死ね。

突然ですが勇者死ね。


いきなりこんなこと言ってすいません、

俺は腕利きの冒険者。

自分で言うのもなんだが

この世界の為に、

モンスターをたくさん狩ったと思う。

でもなぜか世間から感謝されない。


今だってほら、勇者のやつに

手柄を横取りされた。


「いやいや、こんなドラゴン倒すのなんて

簡単ですよ!

困ったらいつでも僕が駆けつけますよ⭐︎」


「きゃ〜!さすがは勇者様♡」

「かっこいいわ♡ ステキ♡」

「結婚して〜♡」


女共の黄色い声が飛び交っている。

俺が浴びるはずだった黄色い声。


そもそも何故こんなことになったかというと、

話は数十分前にさかのぼる。


「くらえ!炎転斬り!」


「フッ、この俺に

 そんなチンケな攻撃効かぬわ!」


「フッ、それはどうかな

 俺の炎は全てを焼き尽くす!」


「クソォォォ!バカな!

 この鋼鉄の様な俺の体が燃えている!」


「よし、これで厄介な皮膚は柔らかくなった

 後は首を叩き切る!」


俺は皮膚が柔らかくなったドラゴンの体を

叩き切った。

するとドラゴンは

「ヌゥォォォダァ!ギョェェィディ!

 貴様覚えていろ!

 必ず俺の同志が貴様を殺しに行く!」

とありがちな死にゼリフを吐き生き絶えた。


「ふぅ、これで悪のドラゴンは倒したぞ。

 帰るか。

 あっ、ちょっと火出し過ぎて腹いてぇ。」


俺は火の力を扱えるが、その代償として

使いすぎると腹を下す。

この世界の能力者達は何かしら代償を払う。

それが俺は腹を下してしまう。


それから、用を足して10分くらいして戻ると

ドラゴンの前に勇者とそのファンの女達がいた。

こんなことは今回が初めてじゃない。

10回以上は勇者に手柄を取られている。

あいつは、

俺の手柄で勇者まで上り詰めたといっても過言ではない。

それくらい毎回の様に俺が倒した後に

あいつは現れる。

俺は手柄とかにはあんまり興味なかったが

ここまでやられるとさすがにムカつく。


だから俺は決めたんだ!

今日という今日は勇者に一言言ってやる。


「おい!勇者!

 また俺様の手柄を取りやがったな!

 今日という今日はゆるさねぇぞぉ!」

人に物申すことをあまりしないからからか、

つい悪役みたいなセリフになった。


するとファンの女が俺に向かって、

「なんなのあんた!

 このドラゴンを倒したのは勇者様よ!」


「う、うるせぇ!

 こいつを倒したのは俺だぜぇ?

 ふざけんじゃねぇ!」

また雑魚キャラみたいな口調で

言ってしまった。


「何をいうかと思ったら!

 手柄を横取りするのはよしなさい!

 倒したのは勇者様なの!」


どうにもこのファン達は聞き分けが悪い。

そう思っていると


「まぁまぁ君たち!

 このくらいのドラゴンなんて

 いつでも倒せるから!

 彼の手柄ってことに

 してあげようじゃないか!」

 と勇者が言ってきた。


「さすがは勇者様♡

 なんで心が広いのかしら♡」


「ハハハ、彼を救えるなら

 こんな手柄あげてちゃうよ⭐︎」

その勇者の言葉に女達はメロメロだ。

俺のことなんてもう見えてない。


「失礼、冒険者の君!

 僕たちはそろそろここを出るから

 そのドラゴンは好きにしておくれ!

 じゃあ行こう女の子達!」


「きゃー♡

 町に帰ったら勇者様のステキな行動を

 広めるわよ!」


なんなんだこれは。

苦労して倒しても、全ての手柄を奪われる。

絶望しかない俺は大きな声でこう叫んだ。


「突然ですが、勇者死ねぇぇぇ!」

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