大好きだった(男性ひとり読み)
Danzig
第1話
俺は今、結婚式場の披露宴会場にいる。
今日は、俺の従妹(いとこ)、結衣(ゆい)さんこと、ゆい姉(ねぇ)の結婚式
白いウェディングドレス姿で、メイン席に座るゆい姉
隣には、白のスーツを着たゆい姉の旦那さんになる人・・・
5つ年上のゆい姉は、一人っ子の俺にとって、
姉のような存在であり、憧れだった。
特に美人じゃないし、これと言ってスタイルがいい訳でもない。
でも、凄く優しくて、いつも俺を構ってくれてた。
ゆい姉の聞かせてくれる話は、俺にとっては、いつも大人の世界の事で、
ゆい姉の好きな歌も、本も、俺の大切な大人のアイテムだった。
そんなゆい姉が、結婚しちゃうんだなぁ・・・
結婚式は滞りなく進んで行くけど、
目の前で何が起きているのか、俺はまだ受け止められずにいるのだろう。
俺だけが一人取り残された空間で、周りの映像だけが動いている
そんな感覚だった
披露宴が終わりに近づき、食事の最後にコーヒーが出された時。
コーヒーの香りが、俺をようやく現実世界へと引き戻してくれた。
コーヒーかぁ・・・
コーヒーの香りを嗅ぐと浮かび上がってくる、ゆい姉への想いの記憶
ゆい姉は、いつもブラックコーヒーを飲んでいた
俺もゆい姉の真似をして、美味しくもないブラックコーヒーを無理して飲んでたなぁ
この大人の味を美味しいと思えるようになった時、ゆい姉に追いつけるような気がしていた。
母さんのお兄さんの子どもが、ゆい姉。
子供の頃、ゆい姉を女性として意識した時、
俺とゆい姉は親族だから結婚できないんだと悲しんでたけど、
ある日、従妹同士は結婚出来ると知って、すごくドキドキしてたのを覚えている。
早くゆい姉に追いつきたくて、いつも背伸びしてた。
だから、いつも同級生の女の子達が、みんな子供に見えていた。
いつしか、ブラックコーヒーの味を美味しいと思えるようになったけど、
ゆい姉との距離は、少ししか縮まらなかった気がする。
俺もようやく18歳になったのに、
今年、高校を卒業して、大学生になれるのに、
そうしたら、もう少しゆい姉に近づけると思っていたのに、
ゆい姉は、また俺を置いて先に行っちゃうんだね
ゆい姉を引っ張って行ける男になろうと、誓っていたのにな・・・
俺は最後のコーヒーを口にした
ブラックの苦みが、この恋の終わりを俺に告げている
でも
ゆい姉には幸せになって欲しいな
真っ白なスーツを着た奥さんになる人は、とてもイケメンで優しそう。
ゆい姉が選んだ人だから、きっといい人なんだろうね。
よかったね。
結婚おめでとう、とっても綺麗だよ。
ゆい姉、幸せにね。
大好きだったよ
大好きだった(男性ひとり読み) Danzig @Danzig999
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます