第30話 世をはかなんで 創作する

 をはかなんで 創作そうさくする


 売れる、売れない、を気にして絵を作ると、自分の描きたい気持ちから、どんどん離れてゆく。売れないと食えないし、気持ちを裏切る絵を描くと、気持ちは苦しくなる。どうしてよいのかわからなくなるときがある。

 結局、「世をはかなんで、創作する」とは、世の中の流れに従って、自分の気持ちを殺して、注文通りに仕事をするのか、または、世の中と対決するように自分の気持ちに忠実に貧乏に耐えながら絵を描くのか、のどちらかになる。

 今の私の状態は、後者であり、しかし、世の中と対決と言うよりも、ほとんど惰性であり、また、それしか出来ないとう極めて消極的な理由であり、貧乏に耐えているわけではなく、自分の気持ちに忠実な絵画ができているとも思えなかった。

 では、これから私は如何いかにすべきか。実は、私には今でもわからないのである。今年で、よわい五十九になるが、永遠にわかりそうにない。

 十九歳のとき、ペンで描いた漫画原稿を大手出版社の漫画賞に投稿したことがあった。その頃は、今のようにストーリー漫画みたいにページ数の多い作品はできなかったので、4ページほどのギャグ漫画を投稿した。このときの心境も「世をはかなんで創作する」に近いものがあった。世の中に対して、どうせ、とう気持ちがあった。私はギャグ漫画が描きたいわけではなかった。しかし、金銭は必要だから、なにをするにも、まず妥協から入っていった。しかし、金銭を前提にしてやると、どうも、すべては私の気に入るようにはいかなかった。そして、だんだん絵画をつくることが苦痛になっていった。

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