第9話 良心の無効

 良心の無効


 【良心】とは、自己のおこないに対して善悪正邪の判断をくだし、悪をおさえる心の働き、とある。すると、私などは人生の大半が悪を抑える心の働きが悪く、良心とは、ほとんど無縁の生活を送っていることになる。しかし、いつの時代でも、人間は善悪を超越した存在にはなれない。

 これは、私が日常生活を送る上で常々意識を離れない一事で、なにをしても気に掛かる。また、私たちは社会生活をして、知らず知らずのうちに、大なり小なり悪事の一端を担っている。主体的に悪事に加担しなくとも間接的にやっている。たとえ被害者的に悪事に加担していても、悪事であることには変わりがない。

 たとえば、戦争映画の一場面で、ナチスがユダヤ人たちを荷物のように貨車に詰め、収容所に移送する場面が映っている。ナチスはユダヤ人を差別して、虐殺してゆく。虐殺理由はユダヤ人は良くない、と云う決めつけである。私は、この一事に「良心の無効」を感じずにはおれない。

 映画は終わって、テレビ画面は、ニュース映像を流す。レバノンのベイルートの街が空爆され、破壊されている映像が流れている。いくつものビルがロケット弾によって粉々に崩れている。空爆をしているのはイスラエル軍であった。イスラエルはユダヤ人の国家である。開戦の詳細は判らない。併し、戦争が善行であるとは思えない。

 世界地図のある歴史書を見ると、ヨーロッパは時代によって勢力分布に変化がみられ、近年、千年以上は争いが絶えないようであった。


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