no47...カグラの信念
「先手必勝! 蜘蛛糸!」
魔剣カグラに蜘蛛糸を巻きつけると、処刑場の柱と結び逃げれないように固定した。
正直、もっとダンジョンの中で新しいスキルを獲得したり、スキルレベルを上げたかった。だって、単純なスキルの数だけで考えても、私とカグラがリナティスに勝てる要素は無い。
それにリナティスに《万物分断》を連発されたら、みんなを守れないかもしれない。だから油断してる初っ端から全力で挑む。
「カグラ! 全力で行くよ!」
『うむ!』
『「――神技 冥空絶炎斬」』
魔剣カグラに無数の斬撃が奔ると、魔剣カグラの刀身はボロボロになり、切先が折れた。
「すご! かなり効いてるじゃん!」
『いや、これで完全に破壊出来ないとなると……』
『そう、無駄だということだ……《超回復》」
キラキラと光ると、一瞬で魔剣カグラの刀身が新品同様に治ってしまった。さっきみんなが攻撃したのに一瞬で治ったのもこれか……。
『妾を破壊する事など不可能だ。諦めるが良い』
「これ勝てるの? 無理じゃない?」
『弱音を吐くな。やらねばならぬ時はある』
『さて、今度はこちらから行くぞ――。《武器硬化》+《武器振動》+《切れ味向上》+《全属性付与》+《会心率向上》+《攻撃力UP》+《体重増加》+《ダブルアタック》+《オーラブレード》+《摩擦0》+《高速飛行》」
「ええええ! ちょっとー! 付与しすぎじゃ無い?!」
デタラメな数のスキルを付与して、魔剣カグラが私に向かって高速で飛んできた。 ど、どうする?! カグラシールドくらいしかないけど?! カグラに穴が空きそう!
『ククク、散れ! ――魔技 煉獄狂破斬!』
ヤバー! さらに厨二病みたいな必殺技きたー! カグラの時代の人はみんなそうなんだ?! とか言ってる場合じゃない!
「助けてー! カグラマーン!」
『……丸投げか、しっかり持っていろ!』
斬りかかってきた魔剣カグラの攻撃を、自動防御で応戦。
ガガガガ!と金属同士のぶつかり合いとは思えない重い斬撃音が響いた。
あちらはスキル増し増しの必殺技で、こっちは絆によるよくわかんない能力向上があるとはいえ、ただの自動防御スキルだ。
斬り合ううちに、次第にカグラの自動防御が追いつかなくなり――剣の鍔を弾かれ、私の手からカグラが離れてしまった。
「あ……」
『くっ! 涼音!』
「やば! カグラッ! 蜘蛛糸!」
咄嗟にカグラへ蜘蛛糸を伸ばして結んだけど、魔剣カグラの次の一手が迫る。手元に戻すまでの時間はない。間に合わない。
『オーホホホ! やはり剣には使い手など不要! 死ね!』
魔剣カグラの狂刃が私に迫る。
あー詰んだ。これは死ぬ。
時間がゆっくり進んでるし。
思えば意味不明な第二の人生だったなー。
いきなり処刑されるし……。でもカグラと出会って、ベネッサと会って……。
楽しかったな。ダンジョンを三人で冒険して、王子と合流して。
それでみんなでマグルディンを倒して。あ、私は何もしてないけど
それから魔剣カグラ・リナティスに挑んで……。
そうだよね。誰も、諦めてないじゃん! みんな頑張って生きようとしたじゃん!
なのに、私が諦めて良い訳がない!
「――岩竜の鎧!」
巨大シェルロックリザードから奪ったスキル《岩竜の鎧》。カグラとの絆レベルが上がった記念のスキル。それを発動した瞬間、私の身体をゴツゴツとした岩が覆った。
足、腰、胸……。腕、肩、頭と各部位に鎧が生成されると、魔剣カグラの攻撃をギリギリのところで防いだ。それと同時にカグラを蜘蛛糸で引き寄せ、魔剣カグラを弾き飛ばす。
「あっぶな! 走馬灯見えた!」
『すまぬ。自動防御では限界だった』
「ううん! 見てよこれ! 結構可愛くない?!」
岩竜の鎧は、頭にはティアラ、肩はフリルのようなデザインで、胸はベネッサのぺったんこを誤魔化すような大きな胸当て、腰から足にかけてのドレスのような無骨の岩の装飾+スカートは最高にイカしてる。
『素肌が出ている箇所があるぞ。実用的ではない』
「可愛いは最強なんだよ」
『うむ。やはりわからん』
弾かれた魔剣カグラがふわっと戻ると、たったあれだけの反撃だったのに、刀身に少しヒビが入っている。
それにいくら岩竜の鎧と言ってもレベル1だ。あれだけスキルを重ねがけした攻撃を防げるモノなのだろうか? もしかして、魔剣カグラの攻撃力や耐久度が低くなってる?
『解せぬ……。涼音と言ったか。其方、剣が手元に無い状態で、何故スキルを使えた』
「当たり前でしょ! カグラが私にスキルをくれるんだから!」
『ふぅ、其方と話していると疲れる……。聞くより見た方が早いか……《完全鑑定》』
リナティスの鑑定が私の隅から隅まで調べ尽くす。
『なるほどな。自身ではなく使い手にスキルを渡す剣か……』
「そうだよ! いいでしょー!」
『マサラよ。妾は失望したぞ。我が国最高の神級鍛治師の最後の遺作が、そのようなガラクタとはな』
「ガラクタとはなんだー!」
『いや、ガラクタかもしれんな』
「ええぇ?! カグラまで?! そんなことないもん!」
『使い手がいなければ《神剣献上》は意味のないスキルだ。だが、使い手がいれば我は最強の剣となる。涼音との絆が我を最強の剣へと導く』
『ふ、戯言を……。最強の剣に使い手など不要。その絆とやら、今一度妾に見せてみよ!』
『――神技 冥空絶炎斬!』
『――魔技 煉獄狂破斬!』
激しい必殺技の打ち合いが火花を散らした。
全ての攻撃をカグラが自動防御してくれるけど、リナティスの攻撃が軽く感じた。手数はさっきと同じくらいの激しさだけど、一撃一撃が軽い。
『リナティス。お前は知っているか? 使い手が剣を握った時の温かみを!』
カグラは私のことを、使い手を大切に思ってくれてる。
だから私もカグラを信じる。
その絆が実力以上の力を産む。
『妾には使い手など不要!』
『感じた事はあるか?! 恐怖に震えた使い手の振動を!』
現在自分と同じ境遇にありながら、まったく違う信念を持つリナティスをカグラは許せなかったんだ。まるで力だけを求めた魔剣カグラを造った時の自分を見ているようで。
『妾は最強の剣だ! 使い手などは足手まとい以外の何者でもない! この世の全ては妾のモノ! 妾は女王リナティスなり!』
魔剣カグラと打ち合うごとに、カグラとの繋がりが……。絆が強くなった気がする。それと反比例して、ひとりぼっちのリナティス、魔剣カグラの存在は酷く脆弱に感じた。
『剣の使い手も国民も同じだ! 支えてくれるから、支持してくれるからこそ、国が繁栄するのだ! 独りよがりで国など作れるものか! 王と民も信頼という名の絆で成り立っているのだ!』
カグラの一撃で魔剣カグラがボロボロと崩れては、回復を繰り返している。やっぱりカグラの攻撃力が上がって、魔剣カグラの耐久が落ちてる。ゾア・スライムやみんなの攻撃は確実に魔剣カグラ・リナティスの寿命を、耐久値を削っている。
『ならば、その絆とやら妾が断ち切ってくれる! 受けてみよ! マサラ!――《万物分断》」
今までで一番強い紫の光を纏った魔剣カグラ・リナティスの斬撃に対し、私はカグラを両手でしっかりと握ると、全力で斬り返した。
――配信累計時間:11時間37分
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