no37...大好きカグラ

「やったーー! やったねカグラ! 私たち勝ったんだよ!」


『お おい 倒れ――


 元の長さに戻ったカグラを抱きしめると、私はラブが溢れてクルクルと踊って、草の上にダイブした。頭の中ではレベルアップのアナウンスが流れている。


 アナウンスの声が止まったので、《良さげな鑑定》で見てみると、新たに《岩竜の鎧》を獲得していた。レベルも結構あがって、耐久値が【ひ弱】から【あんまり】にあがってる。


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名 前:ベネッサ・ユーリーン

種 族:人間(テイマー★)  レベル:237

固 有:王家の血筋

スキル:良さげな鑑定Lv3 モブテイムLv1 光魔法Lv5 配信魔法Lv3 超級神剣術 神剣献上 雷神魔法Lv1 煉獄魔法Lv5 蜘蛛糸Lv10 操糸Lv8 悪食Lv6 水魔法Lv1 空間機動Lv1 岩竜の鎧Lv1

攻撃値:ふつう 耐久値:ふつう 機動値:なかなか 賢さ:あんまり 魔力:いい感じ

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 超跳躍じゃなかったのは残念だけど、カグラと私で倒した証だ。マサラさんも倒したことのない巨大シェルロックリザードを倒したんだ。


「うふふ。カグラと私で倒したんだよ!」


『そうだな しかし 切れ味の原因がまさか信頼関係だとは……』


(涼音さんカグラさん。二人の愛の力ですね)


『愛?!』


「えへへ。結婚式しないとね」


『誰のだ?!』


「もちろん 私とカグラのだよ」


『なんの話をしている?!』


 私は身体を起こして地面にカグラを刺すと、座り直してカグラを見つめた。


「好きって言ったじゃん」


『言ってないが?!』


(清々しいほどの告白でしたね)


「だよねぇ? ベネッサも聞いてたでしょ?」


(はい、『我も 一緒にいたい』って言ってました)


『それは言ったが……』


「言ったが、なによ! まさかもう私を捨てるの?!」


『……女とは なんともめんどくさいモノだな』


「いまなんかボソッと言ったでしょ?!」


『さぁな』


 えへへ、カグラ大好き。剣だけど、そんなこと関係ない。心が通い合ってれば、形はなんだっていい。


――ズキ


「痛ッ……」


『どうした?』


「それが――。ううん、なんでもない」


『怪我をしているなら蜘蛛糸を巻くか 【よく治り草】を探すと良い』


「うん、ありがと」


 カグラには言えない。きっとこの痛みは良くないモノだ。カグラを悲しませることは言いたくない……。


(ちなみに、カグラさん。マサラさんってどんな方なんですか?)


 私が聞きたくて聞けなかった事をベネッサが聞いてくれた。カグラにとってはトラウマ的な話なのかと思って、ずっと触れずにいた話題だ。なんか元恋人の話を聞くって辛いじゃない?!


 でも、カグラを知るには必要なことだと思う。


(まだカグラさんには、解放されてないスキルがありましたので、もっと信頼度を上げるために良い機会ですから、話してみてはどうでしょうか?)


『それが 我もあまり覚えていないのだ』


「どこまで覚えてるの?」


『共に冒険していたことは覚えているが……』


 何百年も刺さったままなら、忘れても仕方ないよね。 忘れる? 忘れたなら――


『最後の記憶は マサラが我に何かを頼んでいたような』


「《記憶配信》で見てみる?」


(あ、そうですね! それがありましたね!)


 天井を見上げると配信スライムがパタパタと飛んでいる。相変わらず私を警戒しているのか降りてこないけど……。まぁ近くにいなくても使えるからいいか。


「ベネッサの記憶を見てる時にSP的なのが切れたのか、途中で終わっちゃったけど、もう使えるようになってるでしょ」


(そうですね。私の記憶の続きより、カグラさんの記憶を見てみたいです)


『やってみるが良い』


 私はまた襲われても良いように、地面からカグラを抜くとしっかりと握った。


「よーし、いくよ《記憶配信》」


 目の前に小さな四角が現れると、カグラの記憶が再生され始めた。ベネッサの時とは違い、私の意識が切れる事はない。これなら敵に襲われても安心だ。


「へぇ、これがマサラさんか。意外とイケメン」


(イケメンってなんですか?)


「かっこいい男性って意味だよ」


(なるほど)


 映像の中では、黒髪の青年が剣を振ってモンスターと戦ってるシーンから始まった。黒髪の青年は、戦闘を好むようには見えない優しそうな青い瞳と、傷だらけの顔に汗を垂らしながら、よく見ると両刃の剣を振っていた。あれ? カグラって片方しか刃がない日本刀みたいな刀なのに、両刃? でもこれはカグラの記憶だよね?


「ねぇ、カグラって、元々両刃の剣だったの?」


 握ってるカグラに話しかけても反応がない。


(もしかして、記憶配信をしていると、対象者は意識が無くなるのでしょうか?)


「あー、そうかもね。私たちがそうだったし」


 意識が無くなって追体験するのと違って、映画を見てる感覚だ。ポップコーンとコーラが欲しい。


「何かないかな」


 適当に《良さげな鑑定》で草を鑑定していくと、ついに見つけた!


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おいし草:すごくおいしい。

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「あー! あったー! しかも、たくさん!」


(本当に大丈夫ですか? 涼音さんの鑑定スキルを疑ってるわけではないのですが……)


「大丈夫だよーもう! ほら、おいしいおいしい!」


(じー)


 ベネッサがめちゃくちゃ疑ってるけど、大きいし食べ応えもある! これ食べながらカグラ・ザ・ムービーを見よっと。


「蜘蛛糸でソファーを作ってと……るんたらん」


(じー)


 映画館にあるようなソファーを作って、座る部分は操糸スキルで素材を柔らかくする。ちゃんとドリンクホルダーも完備! 


 コーラは無いので、蜘蛛糸でコップを作り水魔法で水を注ぐ。おいし草を片手に、リラックスモードだ。


「あー! いいね! 座り心地バッチリ!」


(じー)


「ちょ、ベネッサ! ほら、身体に変化ないでしょ?! 大丈夫だよ! ほら見ようよ!」


(わかりました。後で【顔が大きくなり草】が混じってたとか、やめてくださいよ?)


「だ、大丈夫!」


 ……たぶん。


 ちょうど良い位置に記憶配信を動かすと、黒髪の青年は次々と魔法を駆使してモンスターを倒しているシーンだった。いや、青年が倒しているというより、両刃のカグラが倒しているような?


「なんだろう。カグラから魔法が出てる?」


(そうですね……。カグラさんから火炎弾やら電撃魔法が出ていますね)


 カグラにそんなスキルは無い。どういうことだろ――。


『よし! これで全てのスキルがレベルが最大になったぞ! 魔剣カグラの完成だ!』


 黒髪の青年は自信満々の顔で、両刃のカグラを天に高く突き上げた。


 魔剣カグラ? 神剣カグラではなく? やっぱり形が違うし、違う剣なのかな。いや、これはカグラの記憶だ。あれはカグラで間違いない。カグラの過去に何があったんだろう。


――配信累計時間:8時間5分


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