no35...草

「はぁはぁ。もう無理走れない」


 ベネッサがアイアンゴーレムでシェルロックリザードの群れを倒した後、私は全速力で地上に向かって走った。


『ここまで来れば平気だろう』


 走って走って辿り着いたのは、草木が生えた森の中だった。ダンジョンの中に森?とは思ったけど、カグラの説明によると最下層と地上の丁度中程にある森らしい。


「なんでこんなところに森が……」


『地上から流れて来た種が繁殖したのだろう』


「はぁ……疲れた。もうシェルロックリザード出ないかな?」


『たぶんな』


 あの場からダッシュで逃げた理由は二つある。


 一つはベネッサが同じモンスターを出すには色々と制約があるらしく、連続でアイアンゴーレムは出せないとの事。もう一つは、カグラではシェルロックリザードに勝てない事。カグラいわく、切れ味がマサラさんといた時より落ちているらしい。


「ちなみに、昔はシェルロックリザードも斬れたの?」


『ああ 仮にも神剣だからな』


「なんでだろうねぇ」


『何かが以前とは違うようだ』


 昔は出来たなら、私とマサラさんの違い? 名前からしてマサラさんは男の人だと思うけど、性別はきっと関係ないよね。剣の技術は――カグラが勝手に闘ってるから関係ないし、なんだろ?


「はぁ、お腹空いちゃったー」


『シェルロックリザードは ベネッサが全て消し炭にしたからな』


(申し訳ありません……)


「あ、大丈夫だよ! ……大丈夫じゃないけど」


『エンドフィッシュは食べないのか?』


「あー、うーん。一匹しかテイムしてないから、本気で餓死する最後まで取っておく」


『そうか』


 ベネッサに食べれそうなモンスターを召喚してって言える雰囲気ではない。さっき私の尻拭いで闘ってもらったばかりだし。ちょっと気まずい。


 ぐぅー


「お腹空いたなぁ」


(ここは森ですし。食べられる木の実や果物、植物があるかもしれませんよ)


 パッと見た感じ、辺りはジメジメとしていてシダ植物のような蔓っぽい植物しかない。とてもじゃないけど、木の実や果物なんて気の利いたモノが成ってるようには見えない。


『鑑定で食べられる葉っぱかどうか わからぬか?』


「さすがカグラ! いいね! 鑑定のスキルレベルもあがるし!」


 鑑定と言えば、慌ててたからシェルロックリザードを鑑定し忘れたのは痛い。貴重な経験値が……。まぁ過ぎたことは仕方ない。気持ちを切り替えよう!


「うーん、どれが良いかな。あ、これなんてどう?」


 近くに生えていたサンチュみたいな葉っぱを一枚手に取って、《良さげな鑑定》を使ってみた。


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デブ草:すごくおいしいが、半端なく太る

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「え……。食べると、半端なく太る……草?」


『ふむ 食べれそうだな』


「そ、そうだね。少しくらいなら平気かな?」


(太るくらいなら死にます)


「ご、ごめんなさい」


 ベネッサの圧に負けてデブ草を捨てると、今度は人参の葉のような、ギザギザの葉っぱを拾った。


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くさ草:すごくおいしいが、半端なく臭い体臭になる

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「あの……」


(捨ててください!)


「はい……」


 ダメだ。ベネッサの美意識は高い。もっとまともな草は生えてないの?! 【おいし草】なんてのがあれば最高なんだけどなぁ。私はいくつかの草を集めてまとめて鑑定してみた。


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豚ごえ草:すごくおいしいが、豚声になる

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どんくさ草:すごくおいしいが、どじっ子になる

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はしり草:すごくおいしいが、いきなり走りたくなる

=======================


「うーん。どんくさ草ならいける?」


『まぁ 貴様は普段と変わらんな』


「あー、どういうことよ」


(全部却下です……)


「はい……」


 私はベネッサに判断してもらいながら、天井から垂れる植物のツルをカグラで斬り進んでいると、まるで豚のような鳴き声が聞こえてきた。


「ブヒィイイイイ!」


「え? いまのって?」


『豚のような鳴き声だったな』


「豚なら焼いて食べれるじゃん! やったー!」


 これは期待大! 焼くだけでもおいしいはず! でも……。


「なんか臭くない?」


(身体の中いると、匂いはわかりませんね)


 くんくんと嗅ぐと、ツンとする刺激臭がどんどん強くなっている気がする。さらにはドスン!ドスン!と地響きまで聞こえてきた。


『何か来るぞ!』


「ブッヒィイイイ!」


「豚の鳴き声に、巨大で……刺激臭? まさかここの草を食べたの?!」


 天井から垂れ下がるツタを破壊しながら私たちの前に走ってきたのは、巨大化して全身から異臭を放つ、豚声のシェルロックリザードだった。


――配信累計時間:8時間18分


―――――――――――――――

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