第三章 カグラ編
no32...カグラの秘密?
(涼音さん。交代〈スイッチ〉しますか?)
「大丈夫! 私に考えがあるから!」
反魂の泉を出発してから、私達は十分ほど歩いたところで、ストリングタラテクトの群に囲まれた。
『ベネッサにメテオウルフを呼んでもらった方が良いと思うが』
「ダメっ。それだと私のスキルが育たないんだもん」
(でも……)
私だって、複数のモンスターに囲まれた時の対処法はずっと考えていた。私は一人パーティだ。ならそれを逆手に取って、一人パーティでしか出来ない戦い方をすれば良い。
「行くよカグラ! 蜘蛛糸!」
私は作り出した太い蜘蛛糸をカグラに巻き付けると、反対側を自分の手首に巻きつけた。
『おい まさか……』
「そぉぉれぇーーーーー! うおおおお!」
私は、蜘蛛糸で繋がったカグラを鎖鎌の要領で、思いっきりブンブン振り回した。
『あああああああああああ!』
「ほら! カグラ! 神技! 使って! 神技!」
『扱いが酷すぎる! ぐぅ! ――神技 冥空絶炎斬!』
ヒュンヒュンとダンジョンで振り回されるカグラは、広範囲で冥空絶炎斬を繰り出し、次々とストリングタラテクトを切り刻む。私が適当に振り回すから、周囲の壁や天井もゴリゴリ削れる。むちゃくちゃに振り回すうちに、ストリングタラテクトの群れは全滅した。
「よし!」
『よし! じゃないだろ!』
「カグラ、ナイスゥ!」
『貴様…… 我を雑に扱うなと言っただろうが』
「え、ダメだった?」
『お前の中の基準はどうなっているんだ 振り回されて嬉しい奴がいるか?』
「楽しいと思ったんだけどなぁ」
『いつかお前にもやってやる』
(ふふ、二人はとても仲が良いのですね)
鎖鎌スタイルは、カグラには不評だった。でもこの戦い方は周りに仲間がいたら危なくて絶対出来ない。私、一人だからこそ出来る戦い方だったんだけどなぁ。
「今ので何か良いスキル手に入ったかな? 《ちょっと鑑定》っと。……あ!」
『何か取れていたか?』
「うん! 空間機動が手に入ったよ!」
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空間機動 〈アクティブスキル〉
空中で一度だけ任意の方向に滑空。レベルにより距離と速度がアップ
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それから何度か練習したところ、このスキルは二段ジャンプみたいな事が出来た。そしてこれがまた蜘蛛糸との相性が良すぎた。
まず空間に蜘蛛糸を張り巡らせておく。少しでも足が蜘蛛糸に触れれば着地判定になり、さらに二段ジャンプが可能で連続滑空が可能だった。
『涼音! 上から二匹!』
「ありがと! ジュワッチ!」
私は天井から襲ってきたストリングタラテクトに向かってジャンプすると、すぐに《空間軌道》を発動させカグラを振りながら突進する。一匹目のストリングタラテクトの魔核をサクッと砕くと蜘蛛糸で空中に足場を作り、さらにもう一匹に向かって空間機動で滑空して楽々仕留めた。
(お見事です)
『いまのは良い動きだったぞ』
「ふふん! 私だってやる時はやるのよー! よし、そろそろステータス見てみようかな《ちょっと鑑定》」
その時、脳内にいつものアナウンスが流れた。
【《ちょっと鑑定》がLv3へ上がりました】
【《ちょっと鑑定》は《良さげな鑑定》へ進化しました】
「あ! やったあー! 《良さげな鑑定》?に進化したよ!」
(よかったですね)
『新たに見れる項目が増えているかもしれないな』
苦節七時間。やっとスキルの名前が変わるまでスキルレベルが上がってくれた! あっちこっち鑑定しておいてよかったー。さっそくやってみよっと……えへへ。
「えい! 《良さげな鑑定》!」
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名 前:ベネッサ・ユーリーン
種 族:人間(テイマー★) レベル:179
固 有:王家の血筋
スキル:良さげな鑑定Lv3 モブテイムLv1 光魔法Lv5 配信魔法Lv3 超級神剣術 神剣献上、雷神魔法Lv1 煉獄魔法Lv5 蜘蛛糸Lv10 操糸Lv8 悪食Lv6 水魔法Lv1 空間機動Lv1
攻撃値:ふつう 耐久値:ひ弱 敏捷値:なかなか 賢さ:あんまり 魔力:いい感じ
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わぉー。ゲームっぽい。なんかそれらしいステータスが表示されたけど、項目の値、雑すぎじゃ? あ、光魔法いつのまにかレベル上がってる。ベネッサの過去を見てる時に上がったのかな。
「っていうか。賢さ:あんまりって、どういうこと?」
『ふ なかなか精度の高いスキルでは無いか』
「あー!もう何よ! カグラだって鑑定してあげるよ!」
『や やめろ!』
「観念しろー! 《良さげな鑑定》!」
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名 称:神剣カグラ・マサラ
種 族:鉱物/人間
固 有:神剣献上付与
スキル:錆無効 自動修復Lv10 超級神剣術 冥空絶炎斬 ※※※※ ※※※※ ※※※※
攻撃値:すごい 耐久値:すごい 敏捷値:ー 賢さ:それなり 魔力:すごい
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そういえば、カグラに鑑定を使うのは初めてだったかも。なんだろこれ、一部のスキルが読めなくなってる。
「カグラの賢さ:それなり? 嘘だー。私と変わらないよね?」
『貴様と一緒にするな』
(それにしても、値が「すごい」とか「それなり」とか抽象的ですね)
「あれ? ベネッサ、これが見えるの?」
(はい、私にも見えています)
「この読めないスキルって何かな?」
(恐らく鑑定のスキル不足でしょうか? またはカグラさん自身が封印、それか忘れているスキルかと思います)
「ふーん。ありがと」
まぁ、鑑定のレベルが上がったら見えるようになるかな? それよりも種族が【鉱物/人間】ってどういうこと? 喋れる部分が人間判定なのかな? 不思議。
『不明のスキルがあるだと?』
「うん。思い出せる?」
『いや わからんな』
「もしかしてカグラって、自分のこと全然知らないんじゃない?」
『ふむ 思い出せないスキルがあろうが 自分の過去を知らなくとも 我は我だ』
そうだよね。カグラが誰であろうと、私の相棒である事には変わりない。うん。そうだよ。これからもずっと一緒にいようね、カグラ。私は、カグラを握る手に力を込めた。
――配信累計時間:7時間5分
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