no24...出会いは突然に
「なにこれ! ひーふーみ……八匹?!」
私の周りにいる八匹のストリングタラテクトは、口の中で糸を作り今にも襲いかかってきそうだった。
『早く我を抜け!』
言われて地面に刺さったカグラに手を伸ばした時、高速で飛んできた糸がカグラへ巻きつくと、ストリングタラテクトに奪い取られてしまった。
『阿呆ーーーーー!』
「あーーー! 嘘でしょーー?!」
なんだか長い夢を見ていたせいか、身体が思うように動かず初動が遅れた。
〉お? おいみんな!あの女、起きたぞ!
〉なんだよ! もう少しで蜘蛛の餌食だったのに!
〉やっと終わりだと思ったのになぁ
〉あのつえー剣も取られたし、もう終わりだろう
糸で奪われたカグラは、そのままブンブン回されて天井付近まで飛ばされると、鍾乳石に巻き付けられてしまった。
まずい……! カグラなしでストリングタラテクト八匹とだなんて……。配信スライムは私を警戒して天井付近を飛んでしまっていて、配信魔法は使えない。
でも! 怯んでる場合じゃない! 私だってレベルは上がっているんだ! カグラなしだって戦える!
「食らえ!
唱えると、私の周りにフレアバレットよりも小さい火炎弾が無数に現れて、ストリングタラテクトの群れに向かって飛び散った。
〉うお! なんだあれ!
〉いつの間にレベルあがってやがった!
〉おい、蜘蛛達なにやってんだありゃ
フレアバレットより威力は低いけど速度が速いため、ストリングタラテクトでは回避が難しい、煉獄魔法Lv4の魔法だ。
いまの状況を打破するには最適かつ、私の放てる最大の魔法攻撃。これで一網打尽!のはずだった。
「えっ……」
八匹のストリングタラテクトは、お互いがお互いに糸で引っ張り合って、放った無数のスプレットバーストを全て回避した。
〉蜘蛛の奴ら連携えぐいな
〉あれを回避されるんじゃ終わりだろう
〉多勢に無勢だな
ほぼノーダメージで私の攻撃を回避した蜘蛛達は、反撃だとばかりに一斉に蜘蛛糸を飛ばしてきた。何匹か倒せるだろうと思っていた私は思考が遅れてしまった。
『蜘蛛糸で防御しろ!』
「くっ!《蜘蛛糸》!」
カグラに言われて、飛んできた蜘蛛糸を蜘蛛糸で撃ち落とす。しかし、次々と飛んでくる八匹分の蜘蛛糸を、二本の腕で防ぎ切るのは不可能だった。
〉蜘蛛相手に蜘蛛糸で勝負とか無理だろ
〉相手が二匹ならまだしもなぁ
〉あーあ、今度こそ終わりだ
〉ま、楽しめたな
右足が、左腕が……。次々に蜘蛛糸に絡め取られ、私は蜘蛛糸で磔状態にされてしまった。文字通り、手も足も出ない。
「ぐっ……痛たたたたた!」
四肢に絡まった蜘蛛糸が、ギリギリと締め付けられる。ストリングタラテクトの群れが近づいて来る。もうダメだ……。こんなところで死んじゃうなんて……。
諦めかけた その時だった。
(……私と変わりなさい!)
「え?……。だ、誰?」
思わず辺りを見回したけど誰もいない。
違う。声の主は私の頭の中……。
脳に直接聞こえたその声は、どこかで聞いたことのある声だった。
(早く私と交代〈スイッチ〉しなさい!)
頭の中に響くその声に、訳がわからないまま「交代〈スイッチ〉」と叫ぶと、ふっと身体が軽くなり、四肢を締め付けられていた痛みも消えた。
(なにこれ、どうなってるの?!)
驚いた事に、声を出そうとしても声が出ない。まるでテレビを見てるかのように、私の中から私を見ている。奇妙な感覚に陥った。
それと同時に思い出した。 さっきまで見ていた夢を……。
「……よくも私を傷付けましたね」
私の中に突如現れた別人格。
「その身で償いなさい」
四肢を蜘蛛糸で縛られても、なお衰えないその気迫。 この人こそ、この身体の持ち主……。ベネッサ・ユーリーン、その人だ。
「出よ! 《サモンテイム》メテオウルフ!」
私が覚えてない《サモンテイム》を唱えると、展開された魔法陣の中から、遠吠えと共に全身が炎に包まれた狼が現れた。
――配信累計時間:5時間45分
―――――――――――――――――――――
この作品を読んで頂きありがとうございます
執筆の励みとなりますので、フォローと★で応援お願いします。
「面白い!頑張れ!」と思ったら★3を
「まぁまぁかな」と思ったら★1をお願いします。ペコリ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます