no16...私の名前は
何体までテイム出来るかわからないし、サモンテイムっていう魔法はまだ覚えてないけど、いつか覚えたら使えるかもだし! 夢は広がる! って今は腹ごしらえしなきゃ。
「後で呼び出すから、君は水の中で待っててねー」
『ただ死を待つ身か……』
テイムしたエンドフィッシュをリリースすると、丁度もう一匹のエンドフィッシュが焼けた。
「あ、いい感じじゃーん! いただきまーす! はむっ」
〉うーまそ!
〉腹減ったな
〉俺たちいつまでここで見てればいいんだ?
〉いや勝手に動いたら罰せられるだろ
焼きエンドフィッシュを口に入れた瞬間、白身魚の様なふわっとした食感が口に優しく広がった。しかし見た目や食感に反して、マグロのようなしっかりとした味がある。
「おいじぃいいー!」
『そういえば』
「はむ? はむはむ! もぐもぐ!」
『食べてからでいいが そろそろ名前を教えてくれないか?』
「い〝っでばばっだ?」
『食べてからいいと言ったが?』
〉くー! 美味そー!
〉あ! あそこ焼き鳥を売ってるぞ!
〉俺にもくれ!
〉お! こっそり麦酒売ってる奴いるぞ! でかした!
〉うひょー! 助かったー!
〉なんだっけなー。エリクサーの泉? いや違うなー
〉まだ言ってんのかよ。お前
なんだか地上もご飯の時間みたい。カグラを待たせまいと急いで焼き魚を食べると、驚いたことにこの魚、骨が無かった。内臓は普通にあったのでチョイチョイって取り出したけど、骨はない。どうやって動いてたんだろう。
「この魚、骨が無かったんだけど」
『ふむ 魔力で筋肉を動かしているのかもしれぬ』
「ふーん、そういうのもあるんだって、そうじゃなくて、私の名前! 言ってなかった?!」
『ああ 一度も聞いてない』
「ごめんごめん。私は《ちょっと鑑定》で見えちゃうから忘れてたよ」
ガリっと何かを噛んだ音がすると、口の中にから黒い魔核が出てきた。他のモンスターよりだいぶ小さい。カグラでチョイっと割ると、ふわっと魔力が流れてきた感覚があった。これで水魔法は取れたね。
「よしよし」
私は鍾乳石の串をポイっと捨てると、地面に寝かせておいたカグラを掴んでグッと地面に突き刺した。それから軽くドレスについた泥やらを手で払い落とすと、カグラに向かって座り直し、ペコリと頭を下げた。
「カグラ。ここまで連れてきてくれて、ありがとう!」
『我は何もしていない 貴様の努力の結果だ』
「ううん、カグラがいたからだよ。ありがと」
『構わん 我も退屈していたからな』
ちょっと恥ずかしそうに喋るカグラは、なんだか新鮮だ。本当にカグラがいてくれてよかった。
「えへへ、それでね。私の名前は――
ズキン
「痛ッ」
頭の痛みと共に、誰かが私の中で喋り始めた。
――”私の名前は、ベネッサ・ユーリーン”――
違う……。
私の名前は宮森涼音――
――”私の名前は、ベネッサ・ユーリーン”――
「わた……しの、なま……。ううぅ!」
『どうした?』
〉あー! 思い出した!
〉なんだよ? お前も麦酒飲めよ
〉ちげーよ、泉の名前だよ!
〉なんて泉なんだ?
〉確か、魂を呼び戻す。反魂の泉
「頭が割れそう……! な、にこれ。何かが私の中に流れ込んで……!」
『おい! しっかりしろ!――
私の意識はここで途切れた。
私の身体に何が起こったのか。
それを知るのは、少し後のこと
その間、私は彼女の記憶を見た。
悲しい記憶。
そう、ベネッサ・ユーリーンの過去の記憶。
――配信累計時間:5時間4分
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