no7...戦う悪役令嬢
子供の頃、夜中目が覚めると部屋の隅にオバケがいるかもしれないと無駄に怖がったが、それと似たような感覚がこの空間にはある。何かいる。その直感が私を襲った。
ガキン!
「ひえっ!」
右手に持っていた神剣カグラが自動的に動いて、私に向かって振り下ろされた槍を弾いた。槍だとわかったのは、三又の割れた矛先が眼前まで迫ってきたからだ。
「なになに?!」
目を凝らすと部屋の中に誰かいる。私はその姿にギョッとした。そいつは私と同じくらいの身長で、全身が焦茶で悪魔のような羽を生やし、顔はカマキリのような顔で頭に巨大な二本のツノをつけていた。
〉なにこのモンスター、悪魔系か?
〉見たことないな
〉よく今の攻撃受け止めたな、まぐれか?
〉やっとモンスターかよ。早く死なねぇかな
『こんな階層に エンシェントデビルだと?』
「何そのヤバそうな名前……」
『貴様 鑑定スキルを持っていたな 奴に使ってみろ』
言われるがままエンシェントデビルに《ちょっと鑑定》を使った瞬間、脳内に声が流れた。
【《ちょっと鑑定》のレベルが上がりました】
やった! ひたすら通路でカースアイに《ちょっと鑑定》を使ってレベル上げを狙っておいてよかった! Lvが上がれば表示される情報も増えるはず。
=======================
名 前:エンシェントデビル
種 族:悪魔 レベル:180
固 有:闇耐性(大)
スキル:雷神魔法Lv8 悪魔の眼Lv6 飛行Lv4 魔素吸収Lv7 フレキシブルランスLv8
=======================
わぁ! やったー! 《ちょっと鑑定》のレベルが上がって少し詳細が見れるようになった。って、ヤバイ、ヤバイ! めちゃ強そう! スキルもヤバそう! もう語彙力崩壊だよ! ヤバイしか出ない!
「エンシェントデビル、レベル180もあるよ!」
『ふむ エンシェントデビルで間違いないか おかしいな』
ガン! ガガンッ!
「きゃあっ!」
私が鑑定でエンシェントデビルのステータスを見てる間も、目にも止まらぬ早業で次々と槍が襲ってくる。
〉げええええ! まじかよ!
〉全部防いでるぞ?!
〉まぐれじゃねぇのかよ!
〉何かのスキルか?
〉そんなスキルをあの悪女が持ってるわけないだろ
コメント欄も荒れている。
私だって信じられない。《超級神剣術》が無ければ、最初の一撃で死んでいる。
スキルを見る限りエンシェントデビルは魔法も持っているけど、どうやら接近戦の方が好みらしい。私から距離を取る事なくガンガン攻めてきた。
シュ! キンッ!
「ね、ねぇ! いつまで遊んでるの?!」
『倒したいのだが 貴様の足が動かせん』
「どういうこと?!」
言われて気付いた。エンシェントデビルの攻撃はカグラが自動で防いでいるが、私の下半身はへっぴり腰になって引けている。
『本来は 貴様の下半身も 我の制御下になるはずなのだが』
「え、もしかしてあんたって欠陥品?!」
『我にせいにするな 貴様が我をテイムなどしたからだろう 腕しか動かせん』
キンッ! ガキンッ!
「ひぇ! わ、私はどうすればいいの?」
『もっと前に出ろ 剣と槍だぞ 間合いが違いすぎる』
それもそうか、槍の方がリーチが長い。カグラは腕しか操れてないから踏み込めないのか。
私は勇気を出して一歩前に踏み出した。が、エンシェントデビルはそれを見て、バックステップで私との距離を開けた。
『まずい 走れ!』
「え? え? え、え、え」
私が戸惑っていると、なにやらエンシェントデビルの右腕が、紫色にバチバチと放電しながら輝き出す。
〉お? 雷系魔法だな。
〉紫色の雷なんてあるか?
〉雷魔法の上位、雷神魔法じゃないか?
〉これは死んだだろ
「ちょっと! あれヤバイんじゃないの?!」
『いいから奴に向かって走れ! 我を信じろ!』
「もうどうにでもなれー! わーーー!」
私は、紫色にバチバチと放電するエンシェントデビルに向かって走った。どうせ私にはどうすることもできない。
〉自ら向かっていくぞ。自殺か?
〉確かあれ直線上に雷撃が走る魔法じゃなかったかな
〉いくら剣術がすごくても魔法は無理だろ
〉賭けは俺の勝ちだ! 今夜は豪遊だ!
『もっと早く走れ!』
「わーーーーーー!」
無我夢中で走っていると、私を迎撃するためにエンシェントデビルがバチバチと放電する右腕を突き出し、ド派手な雷魔法を放った。
『しゃがめ!』
「しゃがむ?!」
カグラに言われるままに走りながらしゃがむ。と、同時にカグラが地面を押し出し、私は無理やりジャンプさせられた。
「わ! わ!」
くるくると空中で回転する私の足元を、紫色の電撃魔法が雷鳴を響かせながら一直線に迸る。
〉ジャンプで雷魔法を回避しただと?!
〉タイミングやべーな! 神技かよ!
〉いやいや無理だろ! 人間じゃ無理!
飛んだままエンシェントデビルの頭上へ到達すると、右手の神剣カグラが輝き出した。
『――神技 冥空絶炎斬』
次の瞬間、エンシェントデビルに縦横に無数の線が入ると、その身体は細切れになり……。その全てが一瞬で燃え尽きた。
〉なんだよ今の!
〉やっべ! かっけええー!
〉あんな剣技あったか? 見たことねぇよ!
コメント欄が慌ただしくなると同時に、私の心臓もドキドキと脈打ち、頭の中にメッセージが流れ込んできた。
【レベルが上がりました】
――配信累計時間:1時間54分
―――――――――――――――――――――
初めての戦闘でした。むちゃくちゃですね!
戦闘と呼んでよいのかすらわかりません!
でも勝ったからいいんです!
―――――――――――――――――――――
この作品を読んで頂きありがとうございます
執筆の励みとなりますので、フォローと★で応援お願いします。
「面白い!頑張れ!」と思ったら★3を
「まぁまぁかな」と思ったら★1をお願いします。ペコリ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます