no12...蜘蛛はやっぱり嫌い
油断というよりは、ボケっとしてたと言った方が正しい。戦闘をカグラに任せて、早く終わらないかなーとか思っていたバチが当たったのでしょう。
「あら?」
キュッと締め付けられる感覚が無ければ、気付かなかったと思う。視線を落とすと、私の左足に巻き付いた糸がストリングタラテクトと結ばれていた。
「カグラこっち!」
『もう一匹いたか』
「もー! このッ!」
左足に巻き付いた糸を引きちぎろうと左足を引っ張ると、逆に身体が思いっきりストリングタラテクトに引っ張られて、身体が宙に浮いた。
「わ!」
『そのまま我を構えろ!』
宙を舞って引き寄せられた私は、空中でなんとかストリングタラテクトにカグラを向けると、例の厨二病技が炸裂。
『――神技 冥空絶炎斬』
カグラの必殺技でバラバラになった蜘蛛の上に着地すると、レベルアップを告げる音声を無視して、私はもう一匹のストリングタラテクトにカグラを向けた。
案の定、飛んできた糸をカグラが切り刻む。
「危なっ」
『そういえば此奴ら 複数戦闘が得意だったな』
「ならまだ潜んでるかもね。痛っ」
ん? 気のせいかな? 糸をぐるぐる巻きにされた左足に痛みが走った。糸を吐き出した蜘蛛は倒したのに。
「……痛ッ! たたたたたたた! 痛い!痛い!」
気のせいじゃ無い! 左足に残った糸がメキメキと左足を締め付けてくる。折れる折れる! どうなってるの?!
『奴らは糸を自由に操る 離れた糸も例外ではない』
「えー! どうしよう! これ全然取れないけど?! いたたた!」
カグラを天井のストリングタラテクトに向けたまま、左手で糸を掻きむしるが全く取れない。痛みはどんどん増すばかりだ。
〉あー、糸にやられたな。ざまぁ!
〉そうそう、あの糸がやっかいだよな
〉タラテクト系がいるダンジョンは火魔法使える奴いないと話にならんしな
〉糸を溶かす時の火があちーのなんの
〉あ、あいつさっき火魔法使ってたじゃん?
〉そうだな。なんで溶かさねーんだ?
火?! いま火魔法が使えないと話にならないって言ってた?! 糸を溶かす時の火って言った! コメントバンザイ! コメント最高!
私は糸の巻き付いた左足に左手をかざすと、深呼吸をして覚悟を決めて魔法を唱えた。
「フ、フレアバレット!」
左手に赤とオレンジの混ざったような色のオーラが集まり、ボッと火炎弾を放つと私の左足に炸裂した。
「ぎゃあああぁぁあーーー!」
『なにをしている?!』
「痛っぅ……うう痛いよぉ。何って、糸を焼こうと……」
弱く撃ったはずだけど、この魔法強すぎる……。私の左足は皮膚がただれて血が流れている。薄汚れていたドレスも、一部が焦げてしまった。
〉馬鹿すぎ
〉焚き火か松明で軽く炙るだけでいいのにな
〉アハハ! ウケる!
〉これだから箱入りお嬢様はなー
〉戦えるから驚いたが、冒険者とお稽古は別物だったな
〉バカだから自分で攻撃してやんの
はい、バカですぅ。痛いですぅ……。
『焚き木や松明で炙れば 糸は溶けるぞ』
「うん、うん、知ってる……」
『知ってるなら なぜ自らを攻撃した』
「バ、バカだから……」
『やはりか』
涙が溢れてきた。バカすぎる。
「もーーーう、怒ったからね!」
『逆ギレか』
「これなら効くんでしょ! フレアバレット!」
怒りに任せて天井のストリングタラテクトに火炎弾をお見舞いすると、横に斜めに機敏な動きで避けられた。
たぶんスキルにあった《空間機動》とか《高速移動》を駆使した高速回避だと思う。火炎弾を避けた蜘蛛はすかさず糸を飛ばしてくる。
「ちょ! どうすれば?!」
『我は届かず 魔法も当たらずか』
「おまけで私の足も大怪我」
『それは貴様がやったのだろう』
「うう……」
でも、冗談抜きに結構ピンチ。足は痛いし攻撃は届かないし、魔法も当たらない。あの蜘蛛の動きを遅くできれば……遅く? そうだ! あれだ!
私はすぐに頭上でふよふよ浮いている配信スライムを、むずっと掴むとストリングタラテクトに向けて全力で投げつけた。
「《配信魔法》ゆっくり配信!」
〉うお!なんだ?! 蜘蛛が近づいてくる?!
〉いや配信スライムを投げた?!
〉うぇ、気持ち悪!
「《煉獄魔法》フレアバレット!」
ゆっくり配信で動きの遅くなったストリングタラテクトに、すかさず火炎弾を撃ち込むとバン!という爆音と共に、ストリングタラテクトと配信スライムは爆炎に包まれた。
「やったー! 見た?! 見た?!」
『ああ スライムが爆死する様をな』
「えー? スライムって火に強いイメージあるから大丈夫じゃない?」
『虐待テイマー誕生か』
【レベルアップしました】
――配信累計時間:3時間34分
―――――――――――――――――――――
ゆっくり配信で自分が遅くなっては意味がない
涼音の強引な方法でストリングタラテクトは無事に撃破!
―――――――――――――――――――――
この作品を読んで頂きありがとうございます
執筆の励みとなりますので、フォローと★で応援お願いします。
「面白い!頑張れ!」と思ったら★3を
「まぁまぁかな」と思ったら★1をお願いします。ペコリ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます