no2...配信と落下

 私は抵抗する間もなく奈落の底、絶死のダンジョンへ落とされた。ヒューンと風切り音だけが耳に届くが、私にはどうすることも出来ない。穴の中は日の光も届かず真っ暗で、ひんやりとした冷たい風と嫌な予感が肌を叩きつける。


「ううう、どこまで落ちるんだろう、このまま死んじゃうのかな」


 暗くて何も見えないから、穴の深さがどれほどなのかわからない。このまま落ちれば地面に激突して死ぬ事は安易に想像出来る。きっと一瞬で死ぬから痛くないよね?


 一瞬だけ我慢、我慢……。


 いや! 無理!


 訳のわからない第二の人生だけど、せっかく転生したんだから死にたくない!


 私は壁面に捕まろうと必死で手を伸ばすと、暗闇の中で何か柔らかいものに触れた。


 ぷにっ


「ぷにっ?」


 掴んだ柔らかい物体を手元に持ってくると、暗くてもその正体が分かった。


「スライム?」


 私の様子を配信していた配信スライムと呼ばれていたモンスターだ。今頃、群衆は配信スライムを通して落下している私を見て喜んでいるのだろう。そう思うと悲壮感は消え、沸々と怒りが湧いてきてスライムを睨みつけて怒鳴った。


「これ見てる奴! 一生恨むからね! わかってんの?!」


 手の中の配信スライムに向かって怒鳴っていると、その頭の上に何やら文字が出ていることに気が付いた。


 〈テイム可能〉


「テ、テイム?!」


 確かに私はおじいちゃん神様に言った「スライムなんかテイムして~」と。そうだ、テイマーとしての力が私にはあるんだ!


「よ、よし! 魔なるモノよ! 我に従え! テイム!」


 ……ああああああ、何も起きない! 恥ずかしい無理死ぬ。セリフ付けたらかっこいいかなと思ったんだけど、何も起きない。配信見てる奴らが爆笑しているかと思うと、さらに恥ずかしさは込み上げる。


 「あああ、もう! どうやるのよ! テイマー! テイミング! 違うの!?」


 テイムする方法がわからないじゃないの! 今頃、視聴者は「ざまぁ」とか思ってるんでしょうね!


 どこまで落ちるかわからないけど本当にまずい気がする。


 とりあえずテイムは忘れよう。せめて自分のステータスを確認出来ればいいんだけど……。ステータスや、オープンなどの呪文も唱えてみたけど反応は無い。


「あ! そうだ。神様に鑑定もって言った気がする……」


 これに賭けるしかない! 私を鑑定して所持スキルや魔法を見れば……。


「……鑑定!」


 期待していたステータスウィンドウなどは現れない。


 どーなってんのよ! あのジジイ! やっぱりボケてんじゃないの?!


 はぁ――落ち着け私……。私はあの時なんて言った?


「《ちょっと鑑定》とかしたり。って言ったかな?」


 その瞬間、私の目の前に青白いスクリーンが表示された。


=======================

名 前:ベネッサ・ユーリーン

スキル:ちょっと鑑定Lv1 モブテイムLv1 光魔法Lv1

=======================


「出た! けど、情報少な! なんなのよ! 《ちょっと鑑定》って!」


 でも落下死の回避が最優先だ。この際、あの爺さんに文句言っても仕方ない!


「《モブテイム》!」


 叫んだ瞬間、手の中の配信スライムが眩い光に包まれて辺りを照らすと、頭の中にメッセージが流れた。


【配信スライムをテイムしました】


――配信累計時間:16分



―――――――――――――――――――――

なんとか知恵を絞り、鑑定方法を見つけた涼音だったが

ピンチであることには変わらない。

さぁ急いで!地面は近いよ!

―――――――――――――――――――――


この作品を読んで頂きありがとうございます


執筆の励みとなりますので、フォローと★で応援お願いします。

「面白い!頑張れ!」と思ったら★3を

「まぁまぁかな」と思ったら★1をお願いします。ペコリ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る