水底より仰ぐ

山奥ノ紅葉

2006年、確か7月

「ねえ、ちゃんと他の女(ヒト)も見てね。」


この人は何を言っているんだろう。

いつだったか言ったじゃないか、もしこんなことになっても10年でも20年でも待つって。

でも、どうにも手詰まりらしい。

答えが変わらないならせめて少しでも考えて欲しくて、想って欲しくて。

情けなくもひとつ、嘘をついた。


「じゃあさ、指輪返してよ。そしたら諦める、送ってくれたらいいから。」


大嘘をついた。

暑くてぼうっとする頭で、覚悟を決めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る