今夜こそ素直に

Danzig

第1話

今夜こそ素直に



男が女に電話を掛ける


男:もしもし


女:あぁ、〇〇さん

女:今、仕事おわり?

女:相変わらず遅いわね


男:いや、仕事は少し前に終わったんだけど

男:バーでちょっと飲んで、さっき帰ってきたところ


女:そう

女:酔ってるの?


男:いや、そんなんでもないよ

男:今日は、△△さんが来てなかったから、飲む気が失せちゃってさ


女:あら、

女:それなら、呼んでくれればよかったのに

女:少しなら付き合ってあげたわよ


男:へぇ、珍しく可愛い事を言ってくれるんだな

男:でも、最近、仕事が忙しいって言ってなかったか?


女:そういえば、そう言ってたわね


男:今も忙しいのかい?


女:仕事の方は、少し落ち着いたわ

女:今日は、そろそろ寝ようと思って、少し飲んでいたところ


男:そうか


女:それにしても

女:どうしたの、今日は


男:うーん

男:「少し声が聞きたかった」って言ったら、喜んでくれるかな?


女:あら、私の声が聞きたかったの?


男:バカ言えw


女:ホントに?


男:あぁ、ホントに


女:じゃぁ、どうして、そんな事を言ったの?


男:そう言ったら、少しは△△さんが喜ぶかなぁと思ったんだよ


女:そうね、喜んだかもしれないわね

女:お互い、もう少し若かったら


男:ふ


女:ふふふ


男:遅くに悪かったな

男:特に用事はなかったんだ

男:もう切るよ


女:いいわよ、そんなの

女:もう少し話さない?


男:そうか


女:そっちはどうなの?

女:忙しそうだけど


男:まぁ、忙しいのはいつもの事さ

男:仕事なんて、そんなもんだと持ってる


女:そう?

女:私でよければ、仕事の愚痴くらい聞いてあげるわよ


男:いいよ、仕事の愚痴なんて格好悪しな


女:貯め込むと、身体壊しちゃうわよ


男:大丈夫さ、もう長い事、そうやってきたから


女:そう、

女:でも、あんまり無茶しないほうがいいんじゃない

女:そんなに若くないんだし


男:はは、そうだな


女:・・・・


男:・・・・



男:そういえばさ


女:ん?


男:俺達って、どれくらいになるかな


女:どれくらいって、出会ってから?


男:出会ってというか

男:あのバーで話すようになってから


女:そうね・・

女:二人ともあの店が行きつけだったから

女:お互いの事は知っていたものね・・・

女:うーん

女:「会話してから」だと、半年?・・・いや、7カ月くらいかな


男:それくらいだよな

男:△△さんって、確か俺より5つくらい下だったよな?


女:ええ、たしかそれくらいね

女:それがどうかしたの?


男:うーん・・・

男:俺達ってさ、電話したり

男:たまに食事したり、酒のんだり

男:その程度の仲だろ?


女:そうね


男:いいのかなぁって思ってさ


女:何が?


男:君をこのままにしておくのがさ


女:それって、口説き文句?


男:いや、そうやって言われると

男:そういう訳でもないんだけどさ


女:なーんだ、残念 ふふ


男:・・・・


女:大丈夫よ


男:何が?


女:いろいろw

女:ありがとう


男:・・・・


女:心配しないで

女:焦るような年でもないし

女:それに


男:それに?


女:口説くなら、もっといい雰囲気にしてくれなきゃ

女:女は落とせないわよ


男:そうだな

男:ゴメン


女:素直でよろしい ふふふ


男:ふふふ

男:これじゃ、どっちが年上なんだか・・


男:ふぁー

男:なんか、少し眠たくなってきた


女:疲れてるんでしょ?

女:もう寝たら?


男:いや、もうちょっと

男:このまま話をしていたい・・・

男:ダメか?


女:私は別にいいわよ

女:じゃぁ、どんな話がしたい?


男:そうだな・・・

男:・・・

男:恋愛哲学?


女:何よそれw

女:文学少女でも口説こうっていうの?


男:△△さんは文学少女だったんだろ?


女:まぁ、昔はね


男:聞かせてよ


女:そうね・・・


女:じゃぁ、こんなのは?

女:『男はしばしば一人になりたいと思う。

女:女も一人になりたいと思う。

女:そして、その二人が愛し合っているときは、

女:そういう思いを互いに嫉妬するものだ。』


男:「ヘミングウェイ」だっけ?


女:そう!

女:良く知ってたわね


男:へへ、たまたまね

男:他には?


女:他にはね・・・


女:『男が本当に好きなものは二つ。

女:危険と遊びである。

女:男が女を愛するのは、

女:それがもっとも危険な遊びであるからだ。』


男:格好いいね、誰?


女:ニーチェよ


男:へー

男:他には?


女:そんなに覚えてないわよ


男:何かないの?


女:そうね・・・


女:じゃぁ、こんなのは?

女:『女には本当に損な時がある。

女:男に良くしてやって、愛していることを見せれば見せるほど、

女:それだけ早く、男は飽きてしまうのだから。』


男:・・・


女:これ誰か分かる?


男:・・・・・(寝息)


女:〇〇さん?・・・


男:・・・・・(寝息)


女:寝ちゃったか・・


女:〇〇さん

女:愚痴も言わないなんて、格好つけちゃって・・

女:でも、愚痴ぐらい言ってくれた方が、女は落ちやすいのよ


男:・・・・


女:『男は飽きてしまうもの』か・・・

女:私も、いつしか飽きられちゃうのが、怖くなっちゃったのかな


女:今の関係が気楽でいいのよね・・



女:でも、あなたになら、落とされてもいいかもね

女:〇〇さん

女:ふふ

女:おやすみ

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